Story Reader / 本編シナリオ / 13 終焉の福音 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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声なき私1

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いつしかスカベンジャーの間に秘密の噂が流れ始めた

あ、あ、あそこの無人廃墟の中に、た、たくさんの物資があるらしいよ

ど、どっかの組織が廃墟を再建するために運んだって

で、でも、しゅう、襲撃に遭って、け、計画がキャンセルされ、ぶ、物資もそのまま残された

スカベンジャーに「どこから聞いた話?」と聞いても、曖昧な答えしか返ってこなかった

し、知らないよ、顔、見知りだから教えたんだよ、行かないなら俺がいくよ

もっと酷い回答もある

機械の翼がついている天使に教えてもらったの!

…………

ベラ姫、この情報を信じた方がいい?

何度も言わせないで、ベラとだけ呼んでってば!漫画のキャラに私に重ねないで!しかも本の中でもそんな呼び方はしてないでしょう!?

それは君が全然読んでないからだよ、ベラっち

おぇ……勘弁してよ

その噂が本当かどうかはさておき、この近くにはもう資源はないわ。私たちの食料も十分あるし、行ってみてもいいんじゃない?

じゃあ準備してくる。途中で危険な目に遭っても、僕がカード騎士のように君を守るから、ベラちゅん

ふん!スライム、今度そんな呼び方をしたら、鞄の中の本を全部破るからね!

そんなこと言いながら、君も君が一番嫌ってることをしてるじゃん

僕の名前はシュレック!そして君の手にある陳腐な癒しの本こそ破るべきだ!

これは信仰なの!今が苦しければ苦しいほど、人々はますます希望を求めるのよ

強い心がある限り、越えられない困難はないわ!

ベラ子、それは単なるプラセボ効果みたいなもんだよ

ベラはその呼び名を聞くやいなや鋭く叫んで、シュレックと殴り合いになった

周りのスカベンジャーはその様子を羨ましそうに見ている

いいな……お腹がいっぱいだから、あんな元気があるんだよな

実際、確かにそうだった。ベラとシュレックのふたりは強く、何度も悪党を襲撃して彼らの物資を奪い、転売していた

彼らが本に執着していなければ、ふたりの物資は更に多かったはずで、噂の廃墟へ行ってまで冒険する必要はなかったはずだ

ああ!!僕の本が!!!

シュレックの悲鳴とともに、彼の秘蔵の本が1ページ破られた

くそ……こんなことなら物資と端末とを交換すればよかった!紙がこんなに不便なものだとは!

端末?あなた使えるの?本のせいで、これだけしか食料がないのよ!

……とにかく、早く廃墟に行きましょう。もたもたしてるうちに夕食の時間よ

シュレックは悲しそうに破られた本を抱え、よろよろとベラの後について、廃墟に向かった

長い道を歩き、ふたりはようやく噂の廃墟にたどり着いた。しかし彼らを待っていたのは奇妙な光景だった

……なにこれ?

弱りきったスカベンジャーが通りに這いつくばっており、地下から吹き出してきた赤色の液体に飲み込まれていく

この惑星は血の涙を流しているんだ

ベラはシュレックのセンチメンタルな言葉を無視して、通りすぎようとしたスカベンジャーを引っ掴み、彼の前でひと包みのビスケットを振ってみせた

あの赤色のものは一体なに?

皆はあれを天国と言っている

天国?

よくは知らない。あの中に飛び込んだら永遠の命が得られるって。しかも何者かが中から出て来てしゃべるって

……三途の川か?

その中に私の友達はいなかったけど、他のやつの友達が中から出て来たのを見たよ

ふたりは黙ってお互いを見た。目の前のスカベンジャーは弱ってはいるが、嘘をついているようには見えない

最近ここに来た人は全員飛び込んだ。私は……臆病だからまだ迷ってるんだ

でも皆が言うんだ。食べ物も見つからず、こんな病気で苦しむより、未知の天国に身を任せた方がいいって

しかも、飛び込んだ人は中から出て来て、とても快適って言うし

スカベンジャーはベラが渡したビスケットに手を伸ばし、ふたりにぺこりとお辞儀をした

ありがとう。この近くには悪いやつらがいるから、気をつけたほうがいいよ

………………

天に替わって懲らしめてやろうか。ついでに物資も奪えるし?

いい考えね、でも先に彼らの実力を探らないと

私たちの居場所にはもうほとんど資源がないし、ここで少し補充をすればもっと遠くにいける

君の言う通りにするよ、ベラッシー

ベラの額に青筋が立ったが彼女は怒りを抑え、手元の雑誌を開いて『怒らぬ暮らし』を読み始めた。シュレックはその様子を見てけだるそうにうずくまった

よし、行きましょう