報告。空中庭園一行は警戒範囲外に出ました
そう、結構です
ですが、それ以上は後退するつもりもないようです。モニター状況によれば、おそらく城壁外に駐屯するのではないかと……
曲様、追撃しましょうか?
必要ありません。彼らは九龍を昇格者から守りたいだけでしょう
では、我々は空中庭園と協同作戦を?
いえ、仲間と見なすことはありません。何かの折に、一緒に片づけてしまいなさい
了解です。空中庭園も敵であると下達してよろしいですか?
ええ。それから工芸品と展示資源の運搬を急がせてください。データベースも光壁内側のコア施設に移管すること
手配しております
世界の動向を左右する勢力がここに集結するとなると……私たちも計画実現の方法を見直さないといけませんね
ひどく……汚いところだわ
昇格者はすでに九龍内部に侵入していた。遥か昔、九龍が放棄したエリアにいる
古い文化にこだわる組織だもの。土着の物だけではなく、他の文化圏からも片っ端から集めて保管してるみたいだね
う……そんなのをとっておいて、一体何の意味があるのか……
コレクションの意味は、収集した者にしかわからないのです。他者の評価など必要ない
ガブリエル、それは本に書かれていたこと?
仰る通りです、ルナ様
いつか私にも読ませてね
————
侵入口を通って侵蝕体が集まってきた。昇格者の後ろに集まった侵蝕体は、願い、祈り、何かを待っている
侵蝕体には、これから何をすべきかわからない。ただただ、命令を待っているのだ
数が少ないけど、問題はなさそうね
————
αは順番にロラン、ガブリエル、そしてラミアを見た。3人はその視線の意味をすぐに理解した
じゃあ僕はガブリエルさんと一緒に行こうかな。ラミアはひとりでも大丈夫だよね?
えっ……う、嘘でしょ?どうして私がひとりなの?ルナ様……!
大丈夫よね?
う……
単独行動に慌てたラミアの縋るような目線に、ルナは笑顔を返しただけだった
だ、大丈夫です……
じゃあ、決まりね。各自侵蝕体を連れて出発しましょう
遠くを眺めているだけのルナに代わり、αが指示を出す
ふふ、壁の中では一体何が起こるんだろうね
ルナ様、吉報をお待ちください
うう……昇格者同士って、どうやって戦えばいいの……
3人が侵蝕体を連れて離れると、辺りは沈黙に包まれた。ルナはほんの少しだけ、αに身体を預ける
姉さん……ちょっとだけ、このまま……
……好きなだけどうぞ