砂漠のオブリビオンの拠点にて、砂煙舞う中、戦場の掃討が行われている
これで……今月は3回目だ
拠点の中心部、黒い針状の大きな物体が地面に突き刺さっている
付近に散らばるのは撃破された侵蝕体。完全武装した掃討人員が、それらを吊り上げて運ぼうとしている
警戒しておいてよかったです。パニシングの侵蝕プローブが落ちてくる前に、避難を終えられましたから
パニシング侵蝕地帯からの攻撃は増える一方だ。今回のように事前に警戒を行えればなんとかなるが……
世界各地の勢力も拠点を失い始めているみたいですね……
侵蝕地帯から次から次へと発射されてくる、この「侵蝕プローブ」が原因です
着弾後に高濃度のパニシングを放出し、瞬く間に周囲の機械体を制御下に置いてしまう……
地上から発射される分にはまだいい。距離もあるし、まだどうにか対策を取る余裕がある
だが……
ワタナベは空を見上げた
地球低軌道から発射される侵蝕プローブは、初速が速く、ほぼ垂直に飛んでくる。そのうえ、宇宙のデブリベルトで見えにくい……
それは、あの侵蝕された国際宇宙ステーションのことですか……?
そうだ
空中庭園の連中も、アレには頭を悩ませてるでしょうね
ああ、我々が光学観測できただけでも、尋常でない回数の交戦に及んでいる
しかも、空中庭園は地上部隊を縮小し、ほとんどの精鋭部隊を引き揚げたようだ――
あのグレイレイヴンも……宇宙部隊の増援として呼び戻されている
つまり……
そうだ。空中庭園は被侵蝕宇宙ステーションの殲滅作戦を決行するということだ
あんなのを相手に……やれるんでしょうか?
さあな。これまでは消耗戦が関の山だったからな
空中庭園には、宙空両用機「フェンリル」を実戦レベルで扱えるパイロットもそんなにいないでしょうし
確か「グレート·エスケープ」以降、空中庭園の優秀なパイロットは皆、ワタナベさんの下に……
…………
戦略的な観点でいえば、勝算もないまま空中庭園が仕掛けることなどまずありえん
きっと我々が知らない切り札を隠しているに違いない
ワタナベさん、つまり……
あの宇宙ステーションは長きに渡って地上にとっての脅威であり、ある種のバランサーでもあった。それが弱体化してしまったら――
世界の局面は大きく変化するだろう
今回の作戦には、世界の行く末がかかっているということだ
では、我々も当然……
ああ、オブリビオンも手をこまねいているわけにはいかない
そのための準備は、とっくにできている――
オブリビオン集合!
はい!
緊急対応プラン実行——拠点のステルス解除!空中庭園との通信チャンネルを確立しろ!
全防御システムを起動、格納庫の3分の2を開放!3時間以内に飛行前点検を終わらせろ!
地上の指揮権は、地上コントロールセンターの予備指揮官に移管する
まさか、ワタナベさん直々に……?
まがりなりにもオブリビオンのリーダーだぞ。今は血気に逸る時ではない
今回の交渉は決して妥協ではない。ましてや手を組むわけでもないんだ。もらうべき物をいただきにいくだけさ
……
ワタナベさん!我々はあなたについていきます!
我々はオブリビオン——
決して忘れるものか……