ルシア!?
リーフ……私はもう平気です……
そんなわけありません!痛覚信号を切断しているせいで、気づかないだけです!
とにかく、動かないでください!損傷部位を応急処置しますから……!
……
すみませんでした、ルシア
先ほどの戦い、あなたの援護さえもできずに……
大丈夫です。本当であれば私だって……一撃も耐え切れなかったと思いますから
いくらか持ちこたえられたのは、たまたま相手の動きの予測が当たっただけで……
なるほど。確かに、彼女の太刀筋はあなたの動きと似ている部分が多くありました……
似ていた……?でしたら、余計に悔しいですね。視覚信号さえ妨害されていなければ……
わからない、なぜ私だけが……
……こんなケースは、今までに聞いたことも見たこともありませんね
構造体の意識海システムは、機械体やバイオニックのようなロジックサーキットに頼ったものではありません
簡単には割り込めませんし、特定の単体だけを的確に妨害するというのは不可能に近い
意識海の技術に関して、空中庭園の科学理事会を優に超えているというなら話は別ですが……そうでなければ何が起こったというのか……
現状で答えを出すのは難しいと思います……戦闘データは保存できたので、分析は本部に任せましょう
それよりも、早く合流ポイントに向かわないと
まだ駄目です!
負傷者ルシア、ナノ補強材が安定するまで作戦続行は不可!あと30秒は我慢してくださいね!
あ、わ、わかりました……
……
合流ポイントの座標に到着しました
でも……本当にここが?構造体の残骸だけしか……
……残念ですが、ここはもう合流ポイントとしての機能を失っているようです
あちらの放送設備を見てください
放送設備の上に侵蝕体が1体倒れている。ボロボロながらも設備に腕を突っ込んでいて、体内のパニシングを設備に侵蝕させることには成功したようだ
戦闘の痕跡から最後まで死力を尽くしたことは伺えますが……ここにいた構造体たちは、拠点を守り切れなかったみたいですね
前へと一歩踏み出したルシアは、ためらいなく侵蝕体にトドメを刺す。次に放送設備を切り刻んで破壊した
集合の信号は、侵蝕体による囮ということですか……
原始的ではありますが、補給を急いでいた僕たちには効果的な罠でしたね。すぐにここから離れるべきだと思いますが……指揮官、いかがでしょう?
罠の中にいる時間が長いほどリスクは大きくなりますが……僕はあなたの決定を支持します
捜索能力は僕よりリーフの方が優れています。彼女に任せましょう
はい、私にお任せください!
指揮官!あの……ちょっと待ってください!
……反応あり!非常に微弱ですが、友軍の救援信号です!
私たちの存在に気づいて、発信しているんだと思います!
戦闘が起きてからかなりの時間が経過しているはずですが、まだ意識を伝送していないんでしょうか?
部隊の指揮官が学んでおくべき基礎項目なんですがね……
構造体の意識は人間のそれと同じく個体ごとに唯一のモノですが、機体が破壊される前に別の場所へ伝送することができるんです
意識海の思考モデルに大幅な偏差が生じるデメリットはありますが、消えてしまうよりはマシでしょう
伝送せずに意識海システムが破壊されると、意識は完全消滅してしまいますから
一個小隊を壊滅させるような敵と遭遇したうえで、彼らは判断しているはずです。何かしらあってもおかしくはありませんね
あっ、侵蝕体も救援信号に気づいたようです!多数の侵蝕体が信号のポイントへと移動しています!
指揮官、急ぎましょう!
了解!