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All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

絞首刑の日

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真夜中が近付き、満月が高くそびえる時計塔を照らす。群衆の視線が集まる中、公開処刑が行われようとしていた

処刑人たちは鎖で縛り上げた死刑囚たちを押しやり、絞首台の前へと連れていく

尻尾を引っ張るな!地獄で呪ってやるからな!

フン、カラスみたいな不吉な口ともおさらばだな

ワシはそもそもワタリガラスだ!

モリガンという名のワタリガラスは悪態をつきながら、滑稽な体勢で主人の体に逆さ吊りにされていた。その主人はというと、処刑人に向かって余裕の笑みを浮かべている

まさかワタリガラスまで葬るなんて、本当に「未練を残さない」人たちね

もう少し長く生きられたなら、立派な葬儀をしてあげられたのに

チッ、どいつもこいつも強がりやがって……おい、そこの!何をする気だ!?

ハッ……先に死ぬのはどちらかな?

言い終わるより早く、もうひとりの「死刑囚」が鎖を解こうとしていることに気付き、処刑人は警戒心を剥き出しにして銃を向けた

「血飢の妖鳥」は怒りに任せて手を振り上げ、襲いかかろうとした。だがその手が届くより先に、手首を縛る鎖が魔力を宿しているかのように締まり、深い血痕を刻んだ

ッ……能のないやつほど、このような手に頼る

できるものなら、この鎖なしで私を殺してみろ!

「死刑囚」に逃げ出す余地がないと確認すると、処刑人はようやく安堵したように銃を下ろし、地面に唾を吐き捨てた

それは、お前ら「バケモノ」どものために作られた魔枷だ。今更「異能」でどうにかできるとでも思ったか?

おとなしくしろ!死んで当然のゴミクズどもめ!

【規制音】……こいつらが死んで、あの忌々しい霧ももう出なくなればいいが……

自分がイカれちまうかもって不安を抱えながら生きるなんてごめんだ

処刑人は不満げにぼやきながら、「死刑囚」たちの首に絞縄をかけた

なぁ、ちょっとキツすぎるって。気分悪ぃんだけど

地獄行きっつってもさぁ、もうちょっといい待遇で送ってくんない?

例えば、あと100年くらい人生を楽しんでから、ふかふかのベッドの上でポックリ逝くとかさ

そうだそうだ!ラストミールもまだだぞ!ミルク粥も食いたかったし、それと……

黙りなさい、モリガン

あなたの頭、こういう時だけはよく回るのね

地獄に行くってのに、今しゃべらなくていつしゃべる?どうせ皆「異種」なんだから、少しくらい優しくしてくれたって……

全員黙れ!処刑の時間はまだか!?もう相手してられん!

冷たい月光が地上の全てを覆い、時計塔の針は徐々に死神が訪れる時刻へと近付いていく

下で見物している民衆は、まるで壮絶な劇の幕開けを待ち望むかのように、耳をつんざく歓声を上げていた

怒れる民衆A

吊るし上げろ!「異種」を絞め殺せ!

怒れる民衆B

やつらは人間じゃない!「異種」どもの死体を腐らせろ!

怒れる民衆C

この忌々しい「異種」どもは霧を恐れない!あの霧を呼び寄せたのはこいつらだ!

怒号は洪水のように押し寄せ、死へと向かう「異種」たちを襲う

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ひとりは「深紅の女爵」。夜に生き、闇の中に恐怖を撒く者

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ひとりは「血飢の妖鳥」。日々、血がもたらす生命の力を渇望する者

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ひとりは「猟魔の狩人」。霧の中の影のみならず、あらゆる獲物を狩る者

??

ひとりは「沈黙の送葬」。歩んできた無数の道に、「死」のみを残す者

この四眷属は皆、「グレイレイヴン」と呼ばれる統領に頭を垂れ、忠誠を誓っている

恐怖と絶望が十分に熟したその時、彼らは邪神を召喚し、人間界へ降臨させる

処刑人は先頭に立つ[player name]の前へ歩み寄り、そのその首の縄を更にきつく締め上げた

バケモノの親玉がいつまでも生きてるから、俺が直接始末する羽目になる

ったく、なんで役人どもは他のバケモノもまとめて連れてこなかったんだ

ひとり残してどうする気だ?【規制音】が……口だけ動かしてりゃいい連中の考えてることは、さっぱりわかんねぇな

処刑人は目の前の「異種」を睨みつけ、再び地面へ唾を吐いた

何見てやがる?できるもんなら魔枷を解いて、「異種」の仲間を救ってみろ!ハハハ!

軽蔑をぶつけた処刑人だったが、人間の冷たい視線に思わず身を震わせた

しかし[player name]は仲間のように感情を露わにせず、の死よりも気にかかる何かがあるように、その目その目は遠くを見つめている

「グレイレイヴン」「グレイレイヴン」の思考は、「異種」に死刑が宣告された日へと遡っていた

法廷の中央には魔枷で拘束された数名の「異種」が立ち、法壇に座す者たちは冷たい嫌悪の目を向けていた

静粛に!これより判決を言い渡す!

「グレイレイヴン」らは街に霧を呼び寄せた元凶であり、「異種」として霧を利用し、数多くの精神異常事件を引き起こした。街の全ての罪であり、恐怖の根源である

よって、全員を絞首刑に処す

今、自ら認めただろう。霧の中で狂わない、つまりお前たちこそが霧を呼び寄せた元凶であるということになる。これが証拠だ

裁判長は「異種」の訴えに耳を貸さず、待機していた処刑人に手を振って合図を送るだけだった

証拠は十分だ。今夜、午前0時――これら「異種」を全て、時計塔にて絞首刑に処す!

はっ、承知しました!

処刑人が「異種」を法廷の外へ連れ出そうとした時、陪審員席から別の声が上がり、その動きを制した

裁判長殿。僭越ながら学会を代表して、「異種」のうち1名を我々の研究対象として留め置く許可を願いたい

「異種」を残すだと?それが何を意味するかわかって――

どうかそのような目で見ないでいただきたい。学会はただ「霧」の研究に貢献したいだけのこと。あの「異種の統領」の発言で、少し閃きましてね

そうですね、彼女……「エリーナ」とかいう少女にしましょう。資料によれば、あの異種の統領の「助手」だったとか。研究における重要な切り口になるはずです

これは学会が「霧」の真相へ迫れるかどうかにも関わります。どうでしょう、裁判長殿?

学者の要求に裁判長の表情は何度も変わったが、最終的には態度を柔らげた

この高慢な学者の背後には、市長と切っても切れない利権と血縁関係があることを知っていたからだ

……承認しよう。君と学会が余計な騒ぎを起こさないことを願う

エリーナという名の少女は、すぐに[player name]一行から乱暴に引き離された

だが彼女の顔には死を免れた安堵など一切なく、むしろ納得のいかない様子で、そのまま裁判長の前へと歩み出た

あなたのどこが「裁判長」なんです?全然公平じゃないですよね!

わけのわからない「学者」には従うくせに、何もしてない私たちは最初から罪人扱いですか!?

たとえ少女の両手が「魔枷」で拘束され、誰かを傷つけることなどできなくても、裁判長の目には「異種」への恐怖がはっきりと浮かんでいた

彼は本能的に席を立ち、後ずさる。その大きな体が椅子に足を取られて倒れそうになる

やがて自分の反応が過剰だったと気付くと、人前での失態を隠すように背筋を伸ばし、怒りに任せてガベルを叩きつけた

何をぼさっとしている!?法廷の秩序を乱すこの小娘をさっさと連れていけ!

バケモノども、あの世に行く時間だ!

処刑人は先頭の[player name]を押し立て、法廷から連れ出そうとした。一方で学者の部下たちも、残された少女を拘束しようとする

しかしその束の間の混乱に乗じて、少女は人間の方へ駆け寄った

両手はいまだ「魔枷」で拘束されており、目の前の人間を抱きしめることができない。それでも彼女は最後の別れを告げるかのように、[player name]へ身を寄せた

[player name]……絶対に、待っててくださいね

何をしている!?離れろ!

予期せぬ事態に、処刑人の顔色が一変した

別れを拒むかのように、エリーナの指先は人間のコートへと伸び、そのその飾りを強く握りしめていた

命を助けてやったのにまだ騒ぎを起こす気か!死にたいのか!?

処刑人は更に苛立ち、少女を乱暴に突き飛ばした

ついに彼女の手は離れてしまうが、その手にはコートから引きちぎった小さな飾りがしっかりと握られていた。まるで、それを最後の記念にするかのように

処刑人に押し出され、法廷を連れ出される瞬間――人間は静かに振り返り、最後に少女を一瞥した

だがエリーナは、いつもと変わらない笑顔を浮かべていた。まるで、すぐにまた会える短い別れにすぎないかのように

約束ですよ。絶対に待っててください、[player name]

やがて処刑人の怒鳴り声が響き、人間は過去の記憶から引き戻された

……チッ、強がりやがって。最後まで懺悔のひと言もないとは

カーン――カーン――カーン――鐘の音が鳴り響く。時計塔の下で長く待ち続けていた民衆は、ついに「異種」へ下される盛大な処刑の時を迎えた

執行だ!まずはお前だ、[player name]!この狂人め!

怒りを抑えきれない処刑人は先頭の人間に歩み寄り、手にした斧を振り上げ、そのその足下の落とし戸を叩き割ろうとした

死ぬ前に無駄口を叩くな

処刑人は嘲笑しながら、斧を握る手に力を込めた

その時、不気味な金属音が鳴り響いた。それは「異種」たちを拘束していた魔枷であり、何か未知の力を感知したかのように共鳴音を発している

海に流れた血に引き寄せられるサメのように、暗闇の中から何かが「異種」たちへと静かに近付いてきた。人々の背筋に、刺すような寒気が這い上がる

やがて、霧が立ち込め始めた。死神よりも先に訪れたのは、濃密な霧――それは時計塔の周囲を包み込み、見えない帳のように人々の視界を遮っていく

カア!霧の中に何かがいるぞ!デカいのが来る!

早くワシらを降ろせ!さもないと――

処刑人

やはり生かしておくんじゃなかった!死ね!!!

処刑人は全身の力を込め、斧を人間の足下へ振り下ろそうとした。しかし、振り上げたその動きが、凍りついたかのようにぴたりと止まる

見えない力に操られているかのように、処刑人はぎこちなく振り向いた。その目には空虚しか残っていない

処刑人

神が……来た……

処刑人は意味不明なうわ言を吐き出し、そのまま力なく膝をついた

同時に、時計塔の下から狂乱した叫び声が響き渡る

恐怖に震える民衆A

霧だ!霧が来たぞ!

恐怖に震える民衆B

霧の中に何かいる!!!

流れ込む濃霧は静かに広がり、死神のローブのように時計塔をゆっくりと覆っていく

人々の悲鳴の中、霧の中からひとつの影が姿を現した。その姿形は「人間」のものだが、亡霊のように宙に浮かんでいる

目に見えない威圧が人々の頭上にのしかかり、言葉では言い表せない恐怖が、一瞬で全員の心臓を鷲掴みにした

その影は口を開かない。だが、冷たい声が全員の脳裏に響いていた。まるで、刃で理性を少しずつ削り取るかのように

それは、この世のものではない声だった

我は神の使い

今日この日、汝らは神の再臨を迎え入れ、その民となる

捧げ……ます……神へ……捧げ……ます……

処刑人は機械のように奇妙な言葉を呟き、「邪神」による裁きを求めているかのようだった

邪神の眷属が手を振ると、霧の中から不気味な影が近付いてきた。それは音もなく、血に飢えたサメのように意識を失った処刑人の側へと迫った

怪影の体から、うねる触手が伸びる。それは彼の首に絡みつき、喉奥へと深く突き刺さった。人の体に宿る理性と魂を貪り喰っていく

ぐあああっ……!う、あっ……

やがて処刑人のうわ言は弱まり、死に瀕した、窒息したような呻きへと変わっていく

ほどなくして、その声は完全に沈黙した。残ったのは、触手が体に絡みつく微かな摩擦音だけ

怪影は触手をほどき、死体を放り出す。飢えたまま霧の中を彷徨い、次の獲物を見定めていた

邪神の眷属の威圧によって静まり返っていた人々は、ついに絶望の叫びを上げた

うわあああ!邪神だ!!!

来るな!!死にたくない、死にたくないいいい!!!

霧の中に逃げ場はない。目に見えぬ恐怖はいつしか形ある毒の蔓のように人々の脳内へと入り込み、魂の奥底に眠る最も原始的な恐怖をかき乱していく

助けを求める声は、次第に奇妙な呟きへと変わっていった

私は……見た……神の遺物は……ここに……遺物を呑み込み……民となる……

人間としての最後の理性は、彼らの脳から完全に剥ぎ取られていく。やがて霧の中から、不気味な咀嚼音と嚥下音が響き始めた

脳……眼球……うっ……

ああ……この味……これが……神の導き……

それは、群衆の中で唐突に始まった「宴」だった。霧の中で怪影に狩られた人々は、次第に狂気に駆られ、同じ人間へと牙を向けていく

0時に執行されるはずだった絞首刑など、もはや誰も気にしていない。かつて人々が抱いていた「異種」への憎悪は、今や同族間で広がる狂気へと変貌していた

蒼白な霧の中に、人間の血がどろりと流れ出していく

悲鳴が重なり合い、恐怖と絶望の網を編み上げる。その中には、狂気から生まれた喜びや欲望が混じっていた

まるで宴の主であるかのように、邪神の眷属は高みからその光景を見下ろしていた

汝らの恐怖、煩悩、貪欲、歓喜――全てを神に捧げよ

さすれば、神が霧へと導くだろう

その声に応えるかのように霧の中から次々と怪影が現れ、混乱する人々を囲い込む。それぞれの触手は、人間の理性と魂を求めるように蠢いている

すでに処刑人の恐怖を味わった怪影は、近くにいた民衆へと触手を絡みつかせた

うわああああ!離せ!!食べないでくれ!!!

ギィ……

だがその時、深海に突如として滴る血のように静かな声が響く。それは一瞬で、血に飢えたサメを引き寄せた

その声が響いた瞬間、無数の触手が僅かに動きを止めた

邪神の眷属の非人間的な冷たい視線が、ついにその人物へ向けられる

その人物その人物は、霧の中に静かに立っていた。この場に渦巻く恐怖など、まるで無関係であるかのように

首にはの命を奪おうとする絞縄が絡みついているというのに、その人物その人物は恐れることなく声を上げている

眷属が指先を僅かに動かすと、それに応じるようにその人を拘束していた魔枷が奇跡のように消え去った

興味深い「サンプル」だ……汝も神の一部となるがいい

汝らが神躯から奪い取った力は、全て神へと還されるべきもの

汝の全ては、霧へ帰すのだ

霧の中の怪影が一斉に迫る。しかし、邪神の眷属に見下ろされていたその人間は、行動で答えた

絞縄の拘束から解かれた人間は身を翻し、先ほど息絶えた処刑人の銃を素早く手に取った

銃弾が放たれ、まっすぐに邪神の眷属の眉間を撃ち抜く――赤い血の花が咲いた

だがその一撃は、彼の淡々とした表情を僅かに揺らしただけだった。撃ち抜かれた眉間から溢れ出る血が蠢き、瞬く間に元通りに再生する

……愚かな

人間の抵抗など意にも介さず、その表情は微塵も変わらなかった

迫りくる無数の触手は銃弾によって断ち切られ、人間のすぐ側を掠めていく

……ふっ

[player name]の常軌を逸した行動に興味を引かれたのか、邪神の眷属の顔に「人間」めいた笑みが浮かんだ

人間の背後では、先ほど断ち切られたはずの触手が急速に再生し、再び襲いかかる

グチュッ――粘つく音とともに、複数の触手が同時に人間の体を貫き、血飛沫が弾けた

しかしその人は痛みに叫ぶこともなく、ただ己の体を貫く触手を強く握りしめた

神へ捧げるべきは、その死に限りなく近い苦痛だ

触手は更に深く食い込み、ゆっくりと内部をかき混ぜる。人間の心の奥に潜む、より深い恐怖を引きずり出そうとするかのように

それでも人間は応じなかった。その姿勢のまま目を閉じ、触手を介したこの「繋がり」の中で、何かを「読み取ろう」としていた

そして人間人間は、はっと目を見開いた。その表情は確信に満ちている

まるで今起きている全てが、最初から自分自分が用意していたシナリオであったかのように

ただそれと同時に、人間の体を貫く触手を通じて、邪神の眷属は異変を感じ取っていた――人間の力から生まれた、逆流する脈動を

……人間ごときが、神の意思を覗こうとは

邪神の眷属はそれ以上言葉を返さず、虚空から1本の触手を伸ばし、ゆっくりと人間の眉間へと迫らせる

その時、霧の中に微かな光が現れた。それは、人間の手の平から溢れ出る光だった

まるで神殿から火を盗み出した英雄のように、自らの血肉を代価に邪神の眷属の力を奪い取り、その身の内で長く眠っていた「何か」を呼び覚ました

人間の内から生まれた光は霧の中で、幾重にも絡み合う糸となって形を成す。それは未知なる力を解き放つ鍵のようだった

その人は再び引き金を引いた。しかし狙いは、目の前にいる邪神の眷属ではない――絞首台にいる「死刑囚」たちを拘束する魔枷だった

魔枷が砕けた瞬間、人間の手に宿っていた微かな光が見えない糸となって、彼らへと迫る

霧の中で、かの人はもはやひとりではなかった

その声は暗夜に響く角笛のように戦意を駆り立て、瞬く間にそのその手から伸びた糸が、4人の体へと繋がっていく

彼らが応じた瞬間、その者はかつてないほどの力を感じた

ふぅ~~~窒息するかと思った!「自由を満喫」する前に、まずはバケモノ狩りといくか!

1匹たりとも逃がさねーぞ!死に損なったこの怒り、たっぷり味わえ!

解き放たれた「猟魔の狩人」は大剣を振るい、霧の中にいる邪神の眷属へと斬りかかった

ネイティア、後ろだ!忠告はしたからな!

モリガンは翼を広げて主人の背後へと飛び込み、鋭い爪が襲いかかる触手を引き裂く。それと同時に「沈黙の送葬」も巨大な鎌を握り、大量の怪影へと振るった

まだ送ってあげるべき人がいるみたいね

葬送の鐘は、あなたたちのために鳴るのよ

「猟魔の狩人」と「沈黙の送葬」の激しい攻勢に、霧の中の怪影は一瞬動きを鈍らせた。その戦意を警戒しているかのようだった

しばらくすると、全ての怪影が標的を[player name]へと変えた。一見すればただの人間にすぎないその存在へと、群がるように迫っていく

その時、太刀を手にしたひとつの影が時計塔から飛び降りた。多くの怪影が冷たい一閃の下で崩れ去り、砕けた触手が雨のように降り注いだ

その人その人に触らないで!

「深紅の女爵」は群がる怪影を突き抜け、かの者のもとへと迫る。閃いた刃が、人間の四肢を貫いていた触手を一瞬で断ち切った

邪神の眷属の支配から解かれた人間は、そのまま落下していく

「血飢の妖鳥」!

その声に応じて「血飢の妖鳥」は背の翼を大きく広げ、落下する人間のもとへ向かった

[player name]!掴まれ!

翼で風を切り、相手を受け止める。そのまま濃霧の中へと飛び込むと、ふたりは瞬く間に姿を消した

まるで舞台の展開を楽しむ観客のように、邪神の眷属は斬り落とされた「触手」には目もくれず、相手が消えた方向を見つめ、興味深げな表情を浮かべた

感情に基づく動機か……面白い

だが神に捧げられるべき生贄は、いずれ必ず神の下へ帰すことになる

邪神の眷属の力により、濃霧の中から次々と怪影が生まれ出る。それらが絡み合い、瞬く間に巨大な網となって人間の消えた方向へと伸びていく

その瞬間――背後から、見覚えのある光が邪神の眷属の胸を貫いた

それは濃霧を隠れ蓑にして空から飛び降りてきた人間だった

その人の手の平で見えない糸が形を成し、邪神の眷属の体内へと流れ込んでいく

……

光は更に強さを増し、絶え間なく注ぎ込まれていく。それに伴い、無数の触手の動きが次第に鈍っていった

その人は体内の力を極限まで引き出し、手の平へと集中させる。口からは血の泡が溢れ続けていたが、そのその顔に退く気配は微塵もなかった

人間は全ての意志を束ね、自らを刃とし、手の平から光を放つ

この瞬間、そのその傍らにいた仲間たちも、息を合わせるように一斉に武器を向けた

神から奪った力で、神に抗おうとは……

その人が決定打を放った瞬間、対峙する存在から凄まじい反動が爆発した

人間の意志はついに運命の加護を得られず、勝利の天秤は邪なる側へと傾く

次の瞬間、濃密な霧が時計塔を起点に溢れ出し、荒れ狂う波のように街全体へと押し広がっていった

遠くに広がる濃霧の中で、無数の悲鳴が轟く

まるで、霧の中で全てが消えてしまったかのようだった。記憶の断片が、少しずつ人間の脳裏へと流れ込んでくる

まだ霧が訪れておらず、絞首台にいる一同が「異種」と呼ばれていなかった頃――その人は、見慣れた街の通りを歩いていた

誰もが通りを歩くその人に向かって、友好的な笑みを浮かべている

「グレイレイヴン」か、いい名前じゃないか

なあ「グレイレイヴン」!今度1杯やろうぜ!

霧の中をゆっくりと歩いていく。やがてその目その目は、少し先にある絞首台を捉えた

そこへ送られようとしている者たちは、「忌々しい異種」と呼ばれていた

吊るし上げろ!「異種」を絞め殺せ!

この忌々しい「異種」どもは霧を恐れない!あの霧を呼び寄せたのはこいつらだ!

孤独な少女は、暗い実験室にいた。全身は傷だらけだったが、それでも負けまいとする強気な笑みを浮かべている

彼女は残された力を振り絞って体を起こすと、歩み寄ってくるその人へ手を伸ばした

ずっと待ってたんですよ、[player name]

ここ、本当に暗くて寒くて……もうダメかもって何度も思いました

でも、その度に考えたんです。もう1度会いたいって

やっと会えましたね……[player name]

霧が更に濃くなり、少女の輪郭はゆっくりとその中に溶けていく

残されたのは、ひとつの伝説。それだけが人々の脳裏に響き続けていた

<size=50><i>ある日、邪神が霧を撒き散らし、その霧は人間界へと降り立った</i></size>

<size=50><i>霧に足を踏み入れた者は、邪神の囁きを耳にする</i></size>

<size=50><i>その囁きを聞いた者は――狂気に堕ちるのだ</i></size>