Story Reader / Affection / ルシア·逆冠·その4 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

ルシア·逆冠·その1

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最初に感じたのは、骨の髄まで染み入るような冷気だった

山あいの夜。吐く息は白くほどけ、目の前で静かに散っていく

次に訪れたのは、ぼやけた視界だ

淡く白い霧が四方に立ちこめている。枯れ枝と岩影は離れては重なり、月光の下で幾重にも揺れる亡霊のように映る

鮮明な意識を取り戻した時には、αはこの場所に立っていた

α

……?

言葉を発しようとしたが、喉から漏れた声はひどく掠れている

微かな液体の滴る音とともに、手に伝う異様な感触に気付いた。これは、見知らぬ感覚ではない

手を上げると、視界に飛び込んできたのは鮮烈な紅。血だ

血に濡れた左手に赤い稲妻が走る。痛みが影のように付き纏い、パニシングの残響が意識海を侵していく

彼女は自分の両手を見つめ、体に起きている変化を悟った

……旧機体?

背後から足音が響き、αは振り返った

そこに立っていたのは、見知らぬようでいて、あまりにも見覚えのある姿

[player name]……

疲労困憊し、1歩踏み出す度に莫大な力を振り絞っているようだった。だがその足取りは力強く、どんな障壁をも撥ねのける意志を宿していた

そしてその人間は霧を通り抜けた。αはその人その人の今の姿をはっきり見ることができた

氷のように冷たい憎悪を宿した瞳と、高度に義体化された人の身体

人間の右手は光紋刀、左手には複合兵装の超小型自動小銃が握られ、背にはライフルケースを背負い、両肩にはふたつのフロート銃が浮かんでいた

……!

低く、感情を削ぎ落とした声が人間の口から発せられた

同時に、霧に包まれた斜面の森から、幾重もの影が次々と姿を現す。それらは武器を携え、足並みを揃え、冷たい夜を喧騒で塗り替えようとしている

…………

それは、夥しい数の構造体だった

命令を受けた構造体たちが、αへ向かって一斉に駆け出した。その勢いで大地が微かに震えている

突然、1体の咆哮が夜を裂いた。それはまるで開戦の狼煙のように、静寂を瞬時に燃え上がらせた

銃声、叫喚、砲火、脚部エンジンの轟音……あらゆる音がそこかしこで炸裂し、煮え立つ濁流となる

上空に大量の輸送機が出現し、サーチライトが白い霧を貫いて夜を昼間のように照らし出した。輸送機からロープが垂らされ、第3陣の構造体が集結しつつあった

αは無意識に武器を持つ手に力を込め、脳裏に数多の戦術を巡らせた

だがその時、周りに漂っていた霧が晴れ、彼女は一帯に山のように積み上げられた構造体の残骸に気付いた

これは……

無数の折れた刀や槍が散らばり、あるものは屍の上に、あるものは循環液に濡れた地へと突き立っている

バンッ――

暗闇が押し寄せ、αは果てなき深淵へと沈んでいった

暗黒の中で歪な万華鏡が開き、錯綜する映像が背後から前へと流れ込み、眼前で捻じれ、形を変えていく

それはかつての人生の断片のようでありながら、誇張され、どこか見知らぬ色を帯びていた

遥かな深淵の底から、誰かの声が響く

???

私は、こんな結末を受け入れない

私は……生き延びる

歪み乱れた時空が、次第に見覚えのある景色を結び、αの前に形を成す……

そこにあったのは、かつてのファウンス士官学校だった

ハ……

つまらない幻影ね……パニシングの仕業?

意識海に残る痛みを抑え込み、αはざわめくパニシングをコントロールした

彼女が隠れ家から出ると、遠方の地平線からほんのりと輝く赤色が現れ、暖かな日光は瞬時に一面を金色に染め上げ、太陽は朝の白い霧を振り払った

αはわかっていた、ファウンスの跡地の何かが彼女を呼んでいることを

プリズム広場

地上

ファウンス士官学校の跡地

人間は改めて手にしていたパニシング検知器の濃度を確認し、そのあとにそれを降ろした

霧域の中の件はすでに一段落し、ファウンス宇宙船も空中庭園に戻っていた

該当エリアの制御権を取り戻し、事態を収拾するべく空中庭園は小隊を派遣。学校跡地を全面的に調査し、そこにパニシングの濃度測定装置を複数ポイント設置していた

その時、静まり返った広場を歩いていた。世界は眠りに落ちたかのようで、吹き抜ける風の吐息と、侵蝕体の微かな唸り声だけが響いている

キィィ――

パニシング濃度測定装置の数値に異常はない。しかし、どうしても微妙な違和感が拭いきれない

彷徨う侵蝕体は何かに導かれているのか、進行ルートが終始、広場の中心をぐるぐると回っていた。目の前の空気に向かって腕を振るい、攻撃の仕草をしている

思考の末、情報を得るために探索を続行することにしたその人その人は銃を構え、遠くの侵蝕体に狙いを定めた

弾丸は正確に侵蝕体の頭を撃ち抜き、内部中枢を破壊した。糸の切れた凧のように、侵蝕体は力なく地に崩れ落ちる

近くにいた2体の侵蝕体が戦闘音に惹かれ、それぞれ建物の曲がり角と物陰からこちらに突き進んでくる

事前の探知と、数も位置も一致している

思考を巡らせながらも、手は止まらない

バン!――バン!――

2発目、3発目が続けて放たれ、角の陰からふらふらと現れた侵蝕体を沈黙させた

銃声の余韻が消えかけた、その瞬間……

ブロロロ……

何かが砂と瓦礫を蹂躙し、崩れた建造物を越えて障害物を突き抜け、逆光を背負ったままプリズム広場の中へと突入し、こちらの視界へと飛び込んできた

鮮烈なる赤いバイク。それに跨る者は、鬼のような2本の角を冠している

バイクは砂煙を巻き上げ、地面に弧を描いて停止した。高身長の影が、静かに車体から降り立つ

[player name]……

一瞬、驚きがαの瞳に浮かんだ。だがすぐに、その色はいつもの鋭さへと塗り替えられた

キィィ――

最後の1体が身を低くすると鋭く跳躍し、甲高い咆哮をあげながら襲いかかってきた

騒がしいわね

αは前方に踏み込むと、小刀を下から上へと振り上げて、侵蝕体を真っぷたつにした。鉄屑と化した骸が無音のまま地へと崩れる

αは小刀を腰に収め、振り返って人間の方へと歩み寄った

……どうしてここに?あなたもあの幻影を見たの?

はっきりとは言えないけれど……何かが私をここへ呼んだのよ

αは目の前の人を見て、幻影の中で改造を受けたあとのその人その人の姿を思い出した。頭を横に振ると、やがて彼女は口を開いた

ただの幻影よ

???

幻影なんかじゃない

背後から、幽鬼の囁きにも似た低い声が響いた

誰!?

ふたりは瞬時に振り返り、声の主を探した

広場の中央はつい先ほどまで、ありふれた空気と光が満ちていた。しかし今この瞬間、そこはまるで静止したように凍りついている

見えないガラスが内側から押し広げられるかのように、表面が軋み、たわみ、ついには一寸ごとに白くひび割れていく

カチッ――

空間に、髪の毛ほどの細く鋭い亀裂が浮かんだ

パキッ――パキパキ――

1点から爆ぜた裂け目が蜘蛛の巣のように四方へと走る。低く鈍い音から鋭い破裂音へ、磁器が砕け、氷山が崩壊するような音が響き渡った

いきなり空間そのものが崩落し、漆黒の裂け目が虚空に出現する

裂け目から白い霧が噴き出し、廃墟を越え、足首を覆い、地を満たしながら広がっていった

その深淵から、暗赤色に染まった左手が現れ、裂け目の縁をがっしりと掴んだ

αは小刀を抜いて前へ一歩踏み出ると、こちらを背に庇った

気をつけて、来るわ!

ザシュ――!

もう一方の手も現れ、その両腕は力を込めると、裂け目を強引に押し広げた

渦巻く霧と歪む光影を揺らしながら、ひとつの影がこの世界へと足を踏み入れる

ああ……

彼女は軽く手首を回した。銀色の髪が舞い、瞳には混沌と貪欲に燃える猩紅が宿っている

やっと見つけた……

霧の向こうには、蠢く黒い影たちが控えている。無数の異合生物と侵蝕体の咆哮が重なり合って響く

ふたりともその姿をよく知っていた――αの旧機体だ。だが記憶の中のと少し異なっていて、その気配は恐怖と混沌に満ちている

影の視線はこちらを掠めると、αを冷酷に射抜いた。唇が悪意を孕んだ弧を描く

……もうひとりの私

αの瞳孔が鋭く縮む

機体を変えたの?その方が好都合ね

その額の角、いいじゃない。私にも似合いそう

誰なの!?

彼女の掌に、パニシングを孕んだ暗紅の雷光が迸る

私?あなたが選ばなかった道。捨て去った可能性。私は……

言い終えるよりも早く、影は人の目では捉えきれぬ速さで、紅い雷鳴を帯びた弧状の剣波を放った

……あなたの「影」よ!

それがある種の信号であったかのように、「影」の後ろの裂け目から敵が洪水のようになだれ込み、ふたりへと襲いかかった

チッ

αは小刀を握りしめた。真っ赤なパニシングが手に浮かび、同時に一閃して剣波を放つ

ふたつの剣波は空中で衝突し、激しい爆発とともに衝撃波と礫を撒き散らした

バンバンバン――

弾丸が奔流のように放たれ、迫る異合生物を正確に撃ち抜いた

1発目が左目を貫き、2発目が喉を裂き、3発目が下顎を貫いて頭部を吹き飛ばした

撃たれた異合生物は力なく倒れ、その屍は後続の群れに踏み潰された

右手を刀柄にかけたαが身を低くした次の瞬間、その足下の地面が爆発した。

紅い残影と化した彼女は、敵の奔流の中へと突っ込んでいく

半月状の深紅の刀光が横一線に閃く。前方にいる数体の侵蝕体と異合生物は悲鳴を上げる間もなく、身体を両断された

αは洪水の中に屹立する巨石のごとく、怪物たちの猛攻を強引に堰き止めていた

彼女は後方に佇む「影」を見据えると、距離のある位置から言い放った

あなたの力って、この程度?

ふふっ

「影」は挑発には乗らず、腕を組み、まるで傍観者のような余裕を漂わせている

彼女の視線はずっとαに縫い留められていた。αのひと振り、一挙手一投足を観察し、分析している

αの新機体は「影」にとっても予想外だったのだろう。彼女はその瞳に歓喜の色を浮かべながら観察を続けている

面白いわ……想像以上に強い

彼女の左手が、ゆるりと腰の刀柄にかかる

観察は終わりよ。今度は、私が相手になってあげる

次の瞬間、その姿が忽然と消えた

引き延ばされた残像が空気を裂き、一直線にαへ迫る

はぁッ――!!

進路上の侵蝕体と異合生物は、全てその一閃によって両断された

ガキィィン!

巨大な金属音が戦場を震わせる。衝撃波がふたりを中心に円形に広がり、大地の石をことごとく粉砕した

あなた……何者?

αは右手で真紅の小刀を逆手に取り、眼前に構えた。「影」が持つ小刀とαの小刀が激しく競り合い、火花が散る

知りたい?

言ったでしょう。私はあなたの影

言い終わる前に、ふたりの姿が同時に消えた

ガキン――ガキン――

判別不能なほど密な打撃音が炸裂する

ふたつの影は広場を縦横無尽に駆け巡り、交錯し、離れ、ぶつかり合う。衝突の度に肉眼で見えるほどの衝撃波が吹き荒れた

「影」の命令で、侵蝕体と異合生物は次々と後退した。遅れたものは戦闘の余波に巻き込まれ、裂け散った

αの斬撃は凄まじく鋭く、一撃ごとに急所を狙い撃つ

無駄も迷いもなく、一挙手一投足が研ぎ澄まされた死神の誘いだった

「影」の技もまた鋭く、更に狂気が混じっていた

自らが傷つくことなど厭わず、αの刃を前に、しばしば相打ちを選ぶ。そのせいで、αはいつもと違う戦い方を強いられた

ふたりは、まさに互角だ

αは逆手の一撃で影の刃を弾き飛ばすと、即座に突進し、刃を返して「影」の喉元へ迫った

影としては、上手に真似たけど

所詮、影は影

「影」は上体を後ろに逸らし、切っ先がその鼻先を掠める。そのまま体を捻り、αに向けて蹴りを放った

さすがは私が選んだ「体」ね。どんなサプライズを見せてくれるのか、楽しみだわ

傲慢ね

αは「影」の蹴りを膝で受け止めた。ふたりの脚が衝突し、鈍い轟きを響かせる

その反動を利用して、αと「影」は互いに距離を取った

「影」の口元には、狂気に満ちた笑みが浮かんでいる

あなた……

だが次の瞬間、「影」の身体が震え、苦悶の表情を浮かべた

うっ……

腹部が半透明に揺らぎ、輪郭が霧へと溶け始めた

ここまで……か

彼女が手を振ると、生き残っていた数少ない侵蝕体と異合生物は裂け目へと退き、姿を消した

お遊びは終わり

同時に、彼女の背後の裂け目が収縮を始め、狭まっていく

逃げるの?

αは地を蹴り、矢のような速さで「影」へと飛び込み、刃を下から振り上げた

「影」は後退してそれを躱すと、フェイントの一撃でαを牽制し、裂け目へと飛び込んだ

そうはさせない!

αの刃がすぐに追いつき、その背中を貫こうとする

こちらも横から素早く回り込み、銃弾を連射して退路を断つ

3人がほぼ同時に裂け目の縁へと到達した

ふん……!

「影」がいきなり凄まじい勢いで振り向き、αの斬撃とこちらの弾丸を同時に受け止めた

ガキィィン――!

鋭い音が響き、αの斬撃が弾かれた。刃の勢いは止まることなくそのまま振り上げられる。弾丸はキンという鋭い音を立てて刃を掠めた

しばらくこの体をあなたに預けるわ、また会いに来る

「影」は後退しながら、右手を腰の長剣にかけた。赤い稲妻が彼女の全身を走り、刀身が少しずつ抜かれていく

αもそれに応じるように小刀を引き寄せた。武器が変形し、小刀が長刀へと姿を変える

パニシングが彼女の周囲に集束し、刀身が眩い光を放つ。次の瞬間、彼女は長刀を猛然と振り下ろした

ハァッッ!!!

ふたつの力が真っ向から衝突し、衝撃波が炸裂して空気が悲鳴を上げる

強力な攻撃がぶつかった瞬間、混沌としたエネルギーの激流は相殺されることなく、ますます混乱を極めたひとつの流れとなって、激しく裂け目の縁にぶつかった

例の裂け目が一瞬で膨張し、次いで内側へと崩壊していった

ゴオォォォ――ゴオォォォ――

あらゆる音も景色も引き剥がされ、世界は純白へと沈んでいく

裂け目が膨張した瞬間、αは身を翻して手を伸ばし、こちらの前に立ちはだかった

[player name]!

だが、彼女の声は轟音にかき消され、その手がこちらを掴むことはなかった

広場には再び死のような静寂が戻り、異合生物と侵蝕体は霧となって消え失せ、3人の姿もまた、跡形なく消え去った