Story Reader / 本編シナリオ / 41 遺志継ぐ帰航 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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41-27 路傍の人

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エンジンを全開にしてファウンス宇宙船は霧域を突破し、電光石火の速さで宇宙へと帰還した

宇宙の手が宇宙船をなで、発生するはずの巨大な衝撃波は僅か0.5秒で消え、予想されていた全ての事故を防いだ

二次元の世界から突然三次元へと引き戻された人々は、手足の感覚が蘇るのを改めて感じたが、真っ先に抗議の声を上げたのは胃だった

宇宙船の学生たちが嘔吐する声があちこちで響く

空中庭園のスタッフたちも慌ただしく動き回っていた

ファウンス宇宙船が現れた!ドッキングするぞ!ただちにドッキングの申請を!

9番ドッキングポートの権限は全て開放した。オート連携モジュールが起動……知能軌道計算システムはまだ計算中!ゲシュタルト!

ゲシュタルトが幽かな青い光を発し、冷静な女性の声が中央放送と全スタッフのイヤホンに流れた

ゲシュタルト

宇宙船の軌道投入完了、姿勢正常。軌道調整はおよそ1周後に完了します

……ドッキング条件確認、E-2159区域へのドッキング開始

ドッキングまで22分08秒

……

ゲシュタルトの放送から雑音が聞こえた。まるで「思考」しているかのようだ

そして、ゲシュタルトはスーパーコンピュータらしくない行動を取った――優しげに反応し、呼びかけた

ゲシュタルト

ファウンス、お帰りなさい

スタッフたちは一瞬動きを止めたが、すぐにまた作業に戻った

……ドッキングできます!

待て――総員注意!ファウンス宇宙船で高濃度のパニシング反応を探知。この反応の規模……代行者レベルの敵が乗っている……いや、それ以上だ!

警告!科学理事会があるS-2135区域が攻撃を受けた!敵のパニシング反応規模は昇格者レベル以上だ!全空中庭園のマインドビーコンリンクシステムが崩壊した!

ゲシュタルト

第2級警報

警報がけたたましく鳴り響く

おい!宇宙船の上にいるあれは――

スタッフたちの叫び声が静まった

……見えたぞ

スタッフは顔を上げ、ふらふらと体を起こすと、宇宙船の突端に立つ人影をじっと見つめた

ゲシュタルト

第1級警報

宇宙船の最上部の霧が散ると、赤と白の人影が見えた――彼女は傲然と顔を上げ、姿勢を正すと髪を耳の後ろにかけた。彼女は防護装置がなくとも、宇宙空間に立つことができた

彼女はゆっくりと刀を鞘に納め、空中庭園を見下ろした

彼女は1歩、また1歩と、宇宙の重力を無視しながら空中庭園のブリッジに向かって歩みを進めた

迎撃……準備……

第1級警報だ!迎撃準備を!!

誰かの手がスタッフの肩に置かれた

下がって

非戦闘員は退避

先頭に立つ女性指揮官が大股で前に出た。その背後には、数えきれないほどの人間の兵士と構造体兵士が集結している

彼らは銃を構え、女性指揮官の歩みに合わせてブリッジに迫った。レーザーサイトの赤いポイントは全て赤と白の人影に集中している

αは人混みの中にいるリーフとリーを見つけると、宇宙船の端で足を止め、それ以上進もうとはしなかった

対峙は約30分近く続いた

ゲシュタルト

ドッキング完了

宇宙船の内外の圧力は正常、ハッチを開放します

ファウンス宇宙船のハッチが開くと、いくつかの青白い顔が軍隊の前に現れた

……

バネッサは空中庭園の強い光にさらされ、目を開けるのもやっとだった。彼女は強引に足を踏み出したが、自分の体力を過信していたのか、ふらついて倒れそうになった

それを見たある人がすぐに手を伸ばしてバネッサを支えようとしたが、意外にも自分の手足をコントロールできなかったようで、横にいたルシアに支えられた

――!

指揮官!

リーフとリーが真っ先に陣形を乱して隊から飛び出した。そして新世代のファウンス宇宙船のメンバーがドミノ倒しのように倒れる寸前で、皆を支えた

ヴァレリアは学生たちの服に飛んでいる赤黒い血痕を目ざとく見つけ、眉をひそめた

リーフとリーに続いて、スターオブライフの救急隊員たちが兵士たちの援護を受けながら宇宙船に突入し、死神と時間を争いながら救助を始めた――これが次の戦争だった

αは宇宙船の上に立ち続け、手は刀の柄に軽く置かれていた。彼女は余計な動きをせず、ただファウンスの学生たちが次々と運び出されるのを見守っていた

彼女は守ろうとしているだけだ

意識海の中の霧域から、自らの問いかけが聞こえてくるようだった

αは僅かに頭を上げ、その声に耳を傾けた

……

αは再び頭を下げ、人間とその横にいるルシアを見た

幸せを得られるであろうルシアを

……

もう十分よ

最後のひとりだった指揮官が宇宙船を離れた時、兵士たちは黙って指揮官とグレイレイヴン隊員のために通路を開けた

αは目を伏せ、それ以上見ようとはしなかった

彼女は膝を曲げて力を込め、宇宙船の頂上から一気に飛び降りた。空中庭園の建物を壊すつもりはなく、ブリッジから離れる準備をした

こうして、静かに去っていこうとした

しかし、警戒心は彼女から離れることはなかった

あの人も足を止めて、こちらを見た

……

αは2歩進み、ブリッジに近付いた

兵士たちは瞬時に神経を尖らせ、その動きに合わせ、彼女の後頭部や背中に狙いを定めている

動くな、α。そこまでよ

しかしαは足を止めなかった

緊迫した雰囲気の中、人間は手を差し伸べた。唇を僅かに開き、何かを言おうとしている

「ありがとう」あるいは「すまなかった」。それとも「ここに残って、α」だろうか?

α

…………

αは無言で歩き続けた

彼女は視線を逸らそうとはせず、狙いをつける赤い光点も一切気にせず――そのままその人とすれ違い、グレイレイヴンとすれ違った

緊迫した雰囲気の中で、人間はαに手を差し伸べることはなかった

α

…………

αは無言で歩き続けた

彼女は視線を逸らそうとはせず、狙いをつける赤い光点も一切気にせず――そのままその人とすれ違い、グレイレイヴンとすれ違った

見知らぬ者同士のように。あるいは完全に別々の道を歩むように

しかし、彼女はもう答えを必要としていなかった

「無神論」はすでに人類と永遠の誓いを交わし、幸せな道とは正反対の道を選んだ。まさに今、彼女は人々とは反対の方向、ブリッジの終点へ確固たる足取りで向かっていた

そして、暗黒の宇宙へ足を踏み入れた

「木」の下で、αは地球をじっと見つめていた

……リオラたちが話していたことは正しい。ドミニクにはまだ他の計画がある

人間はすでにドミニクが予見した道を歩んでいるわ。私はこの道がすぐに方向転換しないよう、守り続ける

人間にいくつかの指針を与える必要があるわね

αは手を伸ばし、大西洋の中心を指差した

目を覚ましなさい

αが触れた大西洋のある場所で、ひとつの「目」がゆっくりと開いた

本来なら私と同じ視点で見るべきだった者……あの人間

彼女はもはや、ともに一生を過ごすことを諦めたその名前を、再び口にすることができなかった

あなたの「起点」は、ここで見つけることになる

彼女は大西洋の海水の中に、ひとつまたひとつと因果を作り上げていった

……待って

彼女は突然、何かに気付いた――まるでもうひとつの視線が彼女と同じものを見つめているような感覚がある

彼女は数秒間確認してから、それを白と黒の構造体が発していることに気付いた。どうやらもうひとつの変数らしい

彼女からオフェリアの気配を感じる

彼女は仔細に調べた

アトラスの海は新王に沸き立ち、波涛が天を揺るがし、灰色の海岸が現れる

濃い腐敗の気配の中で、無数の死骸が砂浜に点在していた。人間、構造体、鯨、鮫、猿、蛇、渡り鳥……

1本1本の銀糸が絡み合い、臍の緒のようにそれらを繋ぎ合わせると、進化から墓地へ、奈落へと沈んでゆく

「無神論」……ついにこの視界を得たのね

蜘蛛の女は死体の海、その果てに佇んでいる

オフェリアの姉……「ヘレンティン」

妹が、あなたに私のことを話してくれていたのには感謝しなくちゃ。でも私は、あなたのような「代償」を払ってない。この血と肉の器を借りて、ここであなたと会えているの

言いたいことは何?

「天秤のもう片方」

彼女が手を掲げると波が揺れ、5本の指から繋がった糸が無数の腐乱死体を吊り上げた。たちまち、空中にふたつの螺旋が形成される

宇宙の情報は不変よ。あなたはもうその偉大な力を見たし、体験もしたはず

あなたは最も正しい脈絡を見つけて、他の余分な枝葉末節を断った。その結果……この文明もまた、あなたの選択に応じて、同じ代償を支払う

この道の未来でも、人類は「選別」がもたらす他の危機に直面し続ける

その時、あなたは運命を取捨できる監督者として、人類が最後の審判として下す選択を受け入れ、支えるしかない。その結果がどうなろうと

女性はαを見つめている。波が、億万年の岩礁を洗い続けていた

これは、あなたが望んだ未来?

無数の影が目の前を掠めていく。これこそ、αがただの1度も迷わなかった答え――

私は自分の未来を燃やし尽くした。その結果、人々が踏み出す道は正しく、厳しく、長い道になるはずよ

彼らは私の影をたどり、より遠い明日へと歩んでいくことになる

そう……

ヘレンティンは海を見るともなく眺めた。朽ちた屍が絡み合う螺旋が海水に浸かり、最古の単細胞生命を構成していく

螺旋の序列には10塩基対があり、それは樹上の10個の果実に相対していた

ラディクス?

ええ、全ての意識の温床ね。生命の繁殖と分裂によって、人は樹の根と結びつく橋を失ってしまった

ある時、天空と大地は分かたれた。稲妻が空を走り、細胞は分裂と凝縮を繰り返す。海から陸へ、そしてデボン紀後期へと

ヒトから「樹」と呼ばれる生命体の形態が、世界中を支配した

これは地球だけの解法。どの物語も、この脈絡の上で答えを見つけることになる

あなたはあの人間とともに、それを使って欠けた隙間を塞いだ。でも、パニシングの主もまた、それに基づいて新たな代理人を選び出す

それならとっくに理解しているわ――「ラディクス計画」は誰かの素晴らしい発明なんかじゃない。ドミニクはただ、正しい道に先んじて立っていただけ

ヘレンティンはうっすらと微笑みを浮かべて、広大な海を見つめていた

じゃあ、これも理解しているのね――人類は決して、墓から奇跡を求める必要なんかないって

……なんだか疑わしいわね。あなた、本当にヘレンティン?それともただの質点の投影にすぎないの?定められた運命の中で、この一連の瞬間については初見だわ

――それが私たちの目的。私が代償を支払ったのは、監督者であるあなたへの警告のため……異変はじきよ。できるだけ早く「ラディクス」を通して、この世界のルールを理解して

αはヘレンティンの過去と未来に関する資料をめくり、彼女が語ったあの異変の中に、見覚えのある姿を見つけた

結末をあらかじめ知りたい?

必要ないわ

αは顎を上げ、腐った蛍の養分を吸い上げて生い茂る巨木を見上げた

私の運命は、人類文明の全選択を必ず見届けること。結果、達成されることは私の最終目標にすぎない。その1分1秒の全選択と変動こそが、私が最も「監督すべきもの」よ

αは再び視線を落とし、足下の地球を見つめ続けた

地上の臨時キャンプの中で、ルナもまた目を開いた

αが去るのを見送ってから今まで、ほんの一瞬しか経っていないようだ

傍らでは、パニック状態の魚がどうやら更に慌てているらしい

ひぃぃ!ファ、ファウンスがまた現れました……!

ラミアはどこからか手に入れた通信端末を振り回し、表示された全員への通知を指差した

ロランは逆に、すでに答えを知っているような風情だ

彼女にお祝いの言葉を言った方がいいのかな?やっと自分の道を見つけたねと

……

ルナは顔を上げ、空を仰ぎ見た

運命の起点を取り戻したのね

ルナは突然、上空の視界に何の障害物もないことに気付いた。空から宇宙に至る全てが、彼女にとって障害ではなくなっている――彼女は次第に全てを見通せるようになった

目の前の空気に触れた彼女には、思いのままに掌握できる感覚が――自分と昇格ネットワークとの繋がりが、本当にαが言った通り、「ある日覆された」のだという確信があった

彼女はあの時の通話をずっと覚えている

特に言っておきたいことがある――「未来」のいつか、私は霧域を収束させ、自分の力を使って昇格ネットワークに干渉するつもりよ

その日が来るのはそれほど遠くはないかもしれない。あなたも気付くでしょう

その時が来たら、全てはあなた次第よ。もしあなたが昇格ネットワークを逆に掌握したいのなら、私は手伝う

……姉さん。姉さんは私に昇格ネットワークを完全に掌握するチャンスをくれたのね

彼女は拳をぐっと握りしめた。まるで空気中のパニシングを全て集めようとするかのように

絶好のタイミングだわ。ちょうど姉さんの力がいくつかの「異常」のせいで妨害されている

彼女は目を細め、その「異常」は、空中庭園を頻繁に挑発しているひとりの代行者が発しているのを感じ取った

あなただったのね

彼女は意識海の中のノイズをひとつひとつ整理し、進む方向を定めると、ふたりの昇格者に向かって頷き、森を出ることを決めた

私はずっと姉さんの側にいるわ。次は……

まずは私たちで、あの「異常」を起こす害虫を駆除しなくちゃ

ルナもまた選択した。憎しみに……あるいは愛に満ちた代行者の座に、しばらく留まることを

昇格の力もまた、彼女が正しいと信じる道で発揮され続けることになる