ルナは広場のベンチに座っていた。広場には、巨大なサメのキャラクターの像が立っている
像の台座には東洋風の家紋、それから金色で「サメピー」という名前が刻まれていた
ルナはベンチの傍らに貼られているポスターに目をやる。サメピーが頭を抱えて、何かから逃げ回っている滑稽な構図だ
建造物の装飾にあしらわれていたり、土産品のキャラクターだったり、ウォーターパーク中にこのサメがいた
……あなたは、あなたを可愛がってくれたお祖父さんを待っているのね
ルナはサメピーの像を見上げた。像は、BGM設定されているキャラクターソングをループ再生している
一緒に遊ぼ!
ジンジャーブレッドマン大好き~!
ルナはサメピーの歌をなんとはなしに聴きながら、腰を上げて像の前に立った。手を伸ばして像に軽く触れると、像全体に緋色の電流が走る
通信要請――
ルナの腕輪が電子音を鳴らした。腕輪から投影された通信画面に名前が表示されている。ルナは軽くタップし、通信を許可した
九龍環城の後片づけが終わりました
情報によれば、空中庭園は北極航路連合と共同戦線を張り、新たな作戦を展開するようです
今は好きにさせておけばいいわ。私たちにはもっと大事なことがあるから
承知いたしました……ここまで手間をかけた狩り、獲物がルナ様にとってご満足のいくものでありますように
それはあなたが気にすることじゃない
申し訳ありません、出過ぎた発言でした
あなたの情報源とその情報は信頼できる。あとは、それを使うべき相手を見分けられるようになれば完璧ね
お言葉、痛み入ります。これからも昇格ネットワークのため、身を賭してまいります
ふん……
ルナは通信を切った
足下から響いてくるエネルギー中枢の轟音、そしてますますパニシング濃度を上げていく空気の震えが、ショーの開幕が近いことをルナに伝えていた