灼翎の的確な一発の射撃が、橋の向こう側の武蔵陸型を撃破した。2名の蒲牢衆を連れて橋に近寄り、曲を援護しながら防衛線の影に隠れた
3人に近寄ると曲は蒲牢衆の手からライフルを奪い取り、引き金を引いて橋の下に向けて、弾倉が空になるまで攻撃し続けた
銃声が止まった時、もう侵蝕体の叫び声は聞こえなくなっていた
兵士が唖然としている間に、曲はライフルを彼の手へと戻す
橋を爆破したので、しばらくの間は侵蝕体の進撃を遅らせることができますが、油断はできません
隊形を縮小して、各小隊の被害状況を確認してください
指令を終え、曲は兵士を率いて城壁の下の本部に戻った。防衛線の防御装置は、発射する度に大量の侵蝕体を撃破することができる
贔屓衆の防御装置はとても役に立つ。侵蝕体は私たちの防衛線に近づくことすらできなかった……
突然、一発のロケット砲が橋を超えて前線の陣営に落ちた。爆発による爆風が兵士を吹き飛ばした
発射ポイントをたどると、上半分しか残っていない1台の武蔵陸型が発射姿勢を保ったまま停止している
地面に投げ出された若い兵士は、かすんだ目を開けて、爆発地点から至近距離にもかかわらず無傷ですんだことを不思議に思った
ゲホッ
温かい血が若い兵士の顔をつたった。顔をあげると、灼翎が自分のことを庇ってくれていたことに気づいた
灼翎の左腕がひどくただれている。血が彼の口元から滴り、若い兵士の体に落ちる
曲はその状況を見るやいなや、走り寄ってきた
冉遺(ゼンイ)!灼翎に治療が必要です!
これしき……
灼翎は手で口元の血をぬぐい、手を振って、曲が冉遺(ゼンイ)を呼ぶのを制した
倒れていた若い兵士が起き上がり、震えながら灼翎を助け起こし、臨時に作った防御壁にもたれかからせる
すまない
灼翎はもたれながら、若い兵士の肩を叩いた
戦場は油断をしてはならない。行け、大丈夫だ、まだ死なんよ
は……はい!
若い兵士は再び防衛線の後ろに戻った。灼翎は振り向いて曲を見た
灼翎、もうやめましょう
大丈夫です。このくらいの傷は大したことはない。このまま前線から退きたくない
灼翎はそう言いながら腰から自分の短刀を取り外し、素早く自分の焼け焦げた左腕を切り落とした
すぅすぅ、はぁっ!
灼翎は素早く深呼吸し、慣れた手つきでガーゼを取り出して左腕に巻き、応急処置をした
曲様、ご心配なく。あの腕を残しておいても邪魔になっただけです
あなたは相変わらずね
ハハ、灼翎、帰隊しました!
曲は、灼翎の表情を見て、いくら説得をしても無駄だとわかった
わかりました。ではいきましょう