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インブルリア……記録通り、いえ、記録を上回るおぞましさ……
ロゼッタは異形の身体を見つめた。まるで、物語の中の「恐怖」そのものを体現したかのような異形
やっぱり来ちゃったの……本当面倒臭いなぁ
エステバン?……あなたたちの目の前にいるじゃない
どうしてそう、好きこのんで無駄なことばっかりするかな……
エステバン、まだ?
ラミアは溜め息をつくと、傍らのインブルリアを見上げた
ま、まだ……エ、エネルギーが――ない……
指揮官、この声……
断続的で雑音混じりだが、しかしそれは疑いもなくエステバンの声だった
なぜ、インブルリアがエステバンの声を……それにこの状況……まさか、インブルリアは目覚めたの?
そう一度にたくさん質問されても……まあいいか……私が言えるのはね、ただエステバンの要求に応えてあげただけってこと
要求に、応えた……?
そう、エステバンは私がパニシングなしでインブルリアを制御できるようにする。その代わり、私はエステバンが航路連合へ復讐できるように今後の安全を保障してあげる
復讐……?エステバンはなぜ……?
訊きたいのは、私の方……守林人のあなたに訊きたい
あれだけ不当に扱われて、罪人呼ばわりまでされてるのに……なんで連合のゴミカスのために戦う?
あいつらを守る理由がどこにある?
あなたには関係のないこと。あなたこそ空中庭園の構造体では?
私はこの航路連合の逃走兵で、罪人で、あのディアンナとかいう守林人と同じように研究者の一族だ!
何らかの方法で逃走したのね。指揮官、研究棟の外で防御を展開した時のことを覚えている?
あれは本来「罪人」の逃走を防止する手段だった。それでも、あの場所から逃げ出す者は少なくはなかった
……[player name]は気づいてたのか。でも、ああしなければコードをラミアに奪われてしまうところだった
コードを奪われてしまったら、取引自体が成立しなくなる……
あの時のこと、忘れられない。怒り狂った人間たちが家に来て、私を縛り上げ、あの気味の悪い建物に連行した
毎日毎晩、苦痛の声が響く場所。私たちは何人かで守衛から武器を奪い、やっとの思いで逃げ出した。岸に停泊していたボートで逃げられると思ってた
でも、最後に残ったのは私ひとりだけ。皆、逃げてる間にどんどん捕まっていって……恐ろしくて振り返れなかった。全員を見捨てて、私ひとりで逃げたんだ
無事外に出てみたら、今度はパニシングというもので世界が破滅しかけていて……生きていくためには構造体になるしかなかった
それからずっと、慎重に戦って来て、一生懸命生きてきた。それでようやく、ようやくこのチャンスを手に入れたんだ!
ここに戻ってくるチャンスを……このゴミ溜めみたいな場所に復讐するチャンスを手に入れた!
航路連合さえなければ、恐怖の日々を過ごす必要もなかった。それに、航路連合を破滅させれば昇格者に保護してもらえる……!
どんなことがあっても……私は生き延びてやるッ!
エステバン……あなたも……
そりゃあ私は面倒臭がりだけど……それくらいのことはきっちり約束を守りますよ。侮辱しないでくれるかな、グレイレイヴン指揮官
もちろん、他の連中がどうだかは知らないけどね
そんなこと関係ない!私だって無辜の人間だったんだ……でも、誰ひとり私を助けてくれなかった!
うああああああ!!
意識海の融合が次の段階に進んだかな?……よし
エステバン、今から「コード」で機体を起動するよ。そしたら意識海経由で全バイオニックを制御できる。航路連合を破滅させられるよ
ラミアはイヴァンの録音再生器を取り出すと、拡張装置らしきものにはめ込んだ
了解!
ロゼッタは瞬時に反応した。スピアから発された衝撃波が直接ラミアを襲う
へ?これだけ?
透過した!?
——!!!
声……
そして、ドレークの声が空間を震わせる音量で響いた。付近のエネルギーパイプが発光し始める
エステバン、あとはよろしく。私はバイオニックの航路連合破壊劇を鑑賞しに行くから
自分たちが作ったもので破滅に追い込まれるとか……想像するだけでワクワクしちゃう、うへへ……
……ラミア!
見つからない……これまでに出会ったことのないタイプの敵だわ
ええ、そうね指揮官
ああああぁぁぁぁーーーッ!!!う、あぁぁ、あああぁぁぁーーーッ!!!