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All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

NO.47 タイタン塹壕

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ベソニダスは物思いに沈んでいる

「物思いに沈む」というのは正確ではないかもしれない。実際、手中のアサルトライフルは、彼方の塹壕の監視哨を寸分の狂いもなく狙っている

ベソニダスの指はトリガーにかけられている。そのまま引き金を引けば、コンマ1秒と経たずに彼の憤怒に染まった弾丸が射出されるだろう

だが、ベソニダスは考え込んでいた。傍らにいる9名の兵士たちは、まさかこの期に及んで考え込んでいるとは夢にも思っていないだろう

ともにオブリビオンの遺志と責任を継承し、訓練を受けてきた魂の同胞。オブリビオンの寡黙で勇敢なデスマシーン

ベソニダスの肩に士官を表す紋章がついている以外、彼らには何の違いもなかった

ベソニダスの肩には、他の9人の兄弟よりも遥かに重い責任がのしかかっている。9人を率いて任務を達成するという責任が

――この時、彼らは戦地から離れた塹壕に散兵展開していた。24時間敵を監視し続け、決してこちらから仕掛けてはならない

とにかく、彼らの任務はひたすら監視し、来たるべき時に砲火を誘導することだ

そしてこの時、ベソニダスは考え込んでいた

ベソニダス。

ガリヤファン

どうした?

ベソニダス

あと30分で交替だ。俺とハラムが出るから、あんたとカスティアンは休んでくれ

ガリヤファン

モーションセンサーの方は大丈夫なのか?

ベソニダス

お陰さまで、バイカル湖のように波ひとつない安静な夜を過ごせたからな、何も心配はいらない

ガリヤファン

そうか。なら俺は定期巡視にいってくるとしよう

ベソニダス

……そんなに働きたいなら、止めやしないが

ガリヤファン

ベソニダスが休憩時間を巡視に充てるのはいつものことだ。もし彼が本当に休むと言い出したら、ガリヤファンはそれこそ驚くだろう

ベソニダスが小隊長を務めて5年。この5年間、彼はひたすら真摯に実直に、9名の隊員と向き合ってきた

だからこそ、ガリヤファンは早めに当番を代わろうと買って出たのだ

ベソニダスが隊員たちを大事に思うのと同じように、ガリヤファンを始めとする9名の隊員はベソニダスを大事に思っている

……互いに、わざわざ口にすることは決してないが

再検査でもモーションセンサーの機能に問題は見当たらず、ベソニダスは満足そうに塹壕の掩体をあとにした

司令部

司令部より19-1――

ベソニダス

こちら19-1

司令部

「灰燼」から応答があった。君たちはほどなく後方に撤退することになる

だが、その前にやってもらいたいことがある……

ベソニダスは軍用無線機を握りしめたまま、狂風が吹き荒ぶ砂漠に立ち尽くしている。その顔は、だんだん血の気を失っていった

ベソニダス

……

……了解しました。必ずや任務を遂行します

司令部

Кто с мечом к нам придет, от меча и погибнет.(誰が剣を持ち来て、誰が剣に死するや)

ベソニダス

ДА(了解),Кто с мечом к нам придет, от меча и погибнет.(誰が剣を持ち来て、誰が剣に死するや)

……指揮官……

……指揮官!

指揮官、端末を見てください。短波通信ですよ

そう言われて手元を見ると、個人端末のランプが赤く点滅している

残念ながら、短波通信では識別IDを送れませんので……

???

短波通信の使い方を忘れたわけではなかったようだな

装置によって合成された音声ではあるが、聞き慣れた口調

どうやら、連絡がついたことに安堵しているようだ

ワタナベ

……付近で任務中と聞いたものでね。ご機嫌伺いだ

ワタナベ

「聞いた」とは……

何やら話がありそうだ

ワタナベ

力を貸してほしい。あなたの……いや、グレイレイヴンの力を

その近くで、我々の仲間が……厄介事に巻き込まれている

なんの厄介事です?

またぞろどこかの意識海がどうのという話なら、すみませんが――

ワタナベ

すまない。では、続けよう

そちらの付近に最終防衛線の遺構があり、オブリビオンの2個小隊が駐屯していた

ところが、最近になって正体不明の外部勢力によって、防衛エリアから追いやられてしまったんだ……厳密に言えば、交戦の末、敗走した

その外部勢力というのが、どうやらグレイレイヴンといわくがあるようでな……それで助力をお願いしたいというわけだ

……

……まさか、九龍夜航船と関係があるというのだろうか?

だとしたら、ワタナベの頼みであろうがなかろうが、放っておくわけにはいかない

ワタナベ

できるだけ早く返事をくれ

通信は終わった……

指揮官

……ふむ、なるほど

通信状況が芳しくないな……君たちが派遣を延長したいというのなら、輸送機の手配を後ろ倒しにしよう

通信切断

輸送機を遅らせてくれなんて一言も言ってないんですがね……

……いいんですか?

来たか

今、現地とつなぐ

……

こちら19-1、どこからの発信だ?

19-1、こちらはSkykingだ

Skyking?まさか……

私だ

19-1小隊、ベソニダスであります!

かしこまった挨拶はいい、状況を説明してくれ

は……はい!

現状、K-44防衛戦を占拠した敵は、我々の砲撃とあらかじめ敷設してあった地雷によって、いくつかの集団に分断されています

分断された集団を各個撃破すれば戦局を打開できるのですが、いかんせん兵力が不足していて……

第22中隊はどうした?お前たちと一緒にK-44に詰めていたのではなかったか?

22中隊は3班に分かれ、迫撃砲で前線に砲撃を続けています

……状況はわかった。局面の打開は私の「客人」が担ってくれる

それまでは、できる限りのことをやっていてくれ

了解です!19-1小隊、任務遂行に全力を尽くします!

頼んだぞ

……と、こういう状況だ

もちろん、お前たちだけを行かせるような真似はしない。私も同行する

最も叩きやすい敵はここからほど近いタイタン塹壕の一群だ。まずはそこから始めるとしよう