セルゲイとアントノフの案内で、ドックのすぐ近くにたどり着いた。2隻の赤い巨船が浅瀬に停泊している
2隻の船は橋代わりに渡された複数の木の板によって繋がっていた。船上も船の周辺も、大量の家屋や設備で溢れかえっている
夕食時だからだろうか、船上には灯りがともされていて、たまに賑やかな声も聞こえてくる
…………
キャランタの執行官ヴァディムにここに追いやられてもう数年だ。2000人のコミューンメンバーがどうやって極寒の冬を越していると思う?
この2隻のモーゼ級の原子炉は状態がよくてな、ほぼほぼ未使用に近かったんだ。こいつがなかったら、俺たちはとっくに凍え死んじまってただろうな
電力も熱も蒸気も、何もかもがこの2台の原子炉によって賄われてんだよ
…………
シュテッセンの苦渋の表情を尻目に、アントノフはタバコを深く吸い込んだ
あんたのことが信用できないわけじゃねぇ。だがな、もしキャランタにいられたらこんなことにはなってねぇんだよ……
ヴァディムの野郎は俺たちが粗野だ野心的だと言いがかりをつけて、キャランタ統治の邪魔になるっつって追っ払ったんだ。その時、航路連合は何もしてくれなかったよな?
それは……
今更あんたを責めてるわけじゃない。ちょうどあの時、連合の方もドレークの件で手一杯だったんだろう
だがよ、こうなっちまった以上、今更ヴァディムをどうこうしたところでキャランタの別の人間を傷つけることにしかならねぇ
とにかく、これでわかったろう。モーゼ級をおいそれと渡すわけにはいかない
……なるほど
総代表、私は彼らに賛同する。船を取り上げるくらいなら、守林人は……罪人の汚名を背負い続けることを選ぶ
…………
ほう、この構造体……守林人のメンバーなのか?
ええ、私は皆さんの堅忍持久に敬意を表したい
生きるためだ。生きるためさ……
そう、生きるため。守林人のために皆さんの生きる希望を奪うなんて絶対にありえない
はっはっは、お前らが意気投合するとはなぁ……
だが……俺の望む結果はそうじゃない