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All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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八咫 星摘みの叙述

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端末の共有座標に従い、押し寄せる人波をかき分けてたどり着いたのは、展示エリア西側の屋台通りだった

辺りを見回したその時、群がる機械体の向こうで、見覚えのある黒いシルエットがふと目に留まった

よっ、グレイレイヴン指揮官!

八咫もこちらに気がつき、たくさんの荷物が積まれたワゴンを止めて、手をぶんぶん振ってきた

ここで屋台を出せるチャンスがあるって聞いてさ。最近の「鍛錬の成果」を試してやろうと思って

これ、忘れたなんて言わないでよ?

彼女はワゴンから年季の入ったノートを取り出した。それは、つい最近一緒にアジサイ島で見つけた「レシピ」だ

あの時の屋台もそこそこ好評だったけど、どうしても森田のおっちゃんの味にはまだ届いてない気がしてさ

それで小隊の皆に料理を教わって、全然違う新レシピを編み出してやったってわけ

今じゃ、シヴァも私の鯛焼きを食べて、目ェ見開いて親指立てるんだから

そういうこと!ちょうどいい場所でしょ?

シュッという音とともに、背中のリュックから4本の機械のアームが飛び出した

動力アームユニットが素早くワゴンの食材と調理器具を整理し、あっという間に調理台を作り上げた

――とはいえ、今日のコンステリアの人出じゃ、私ひとりでは回せない

アームが桜ソーダの缶を取り出して投げると、八咫は片手で軽々とそれをキャッチした

バイト代は出すからさ、手伝ってくれない?「いつでもサポートチケット」を1枚あげる。筋トレだろうが雑務だろうが、呼ばれたらすぐ行くよ?

プシュッ――八咫はソーダ缶を開けて、こちらに差し出した

……うわぁ、強欲。欲張りモード全開じゃん

八咫は大袈裟にため息をついた

ま、今回は特別だよ。店じまいしたら48時間限定で使えるチケットも何枚か追加しておく。ただし、期限がすぎたら無効だから。OK?

缶を受け取り、爽快なソーダをひと口飲む。その瞬間、屋台タッグが正式に始動した

八咫屋――いざ開店!

すみません、たこ焼きをひとつください

たこ焼き1舟、ラジャっ!

八咫は鉄板をぐっと返すと、6、7個の黄金色のたこ焼きが宙を舞い、機械のアームが空中で正確に舟皿にキャッチした

アームの見事な連携プレーで、舟皿を自分が立っている配膳口まで運んできた

うわぁ!これ、すっごく美味しい!

この店、いい香りがするな……アジサイ島の名物料理?並んでみるか

人間、食文化、購入、学習……

太陽が西の空へと傾き、積まれていた食材も次第に底を見せ始めていた

自分と八咫は接客と調理に忙殺され、時間が経つのも忘れていた。最後の客が去った時、ようやくコンステリアが完全に宵闇に包まれていることに気がついた

屋台の看板を裏返し、クーラーボックスから桜ソーダを2缶取り出した。八咫は、まだコンロの前で何か作業をしている

えっ、あ……ちょっと待ってて、すぐ終わるから!

ッ――!

背後から不意打ちなんて卑怯だ!

八咫はケチャップのボトルを掴むと、くるりと振り向いて反撃を開始した。自分の頬に甘酸っぱい赤い印がつく

ふぅ……とりあえず完成かな、ちょっと見てよ

彼女が差し出したトレイには、豪華なオムライスが乗っていた

黄金色の卵が芳ばしい香りを閉じ込め、夕日の光を浴びて、鮮やかな赤いケチャップが輝いていた

ケチャップで書かれた文字は走り書きだったが、なんとか読めた

柔らかな風が八咫の銀色の髪を揺らし、彼女は普段あまり見せない照れた表情を浮かべていた。彼女は自分と目を合わさないように、少し横を向いた

……

彼女は運動の後に気持ちを整えるように深呼吸してから、口を開いた

[player name]もわかってるでしょ。今日はほら……あの日だし、私の誘いにもちゃんと応えてくれたし……だから……

――ちょっと、茶々入れんなっ!

彼女は軽く咳払いをし、抑えきれない恥じらいが耳を赤く染めた

だから、とにかく!今日はお疲れ!

これ、ず――っと練習して、ようやく作れるようになったオムライスなんだ。ご褒美として受け取ってよ

誰かのために作るのは初めてだけど……ほら、早く食べてみて!

もういい大人なんだからさぁ……私、ガキっぽい人って苦手なんだけど

でも、指揮官のためなら……克服できるように鍛錬してもいいかなとは思う

ひと口食べると、ふんわりと広がる卵の香りとソースのうま味が舌を刺激し、言葉にならない満足感が広がった

夢中で食べ進める自分を見て、八咫はぱちくりと目を丸くし、期待に満ちた表情を浮かべていた

ねぇ、無言で食べてないでさ。味はどう?

マジ?スプーン貸して、私も食べたい

うっま……シュエットのよりイケるんじゃない?アンタ、ラッキーだったね

彼女は自画自賛しながら、ぱくぱくと頬張った

ふたりで過ごす時の小さな儀式――2本の桜ソーダの缶を開け、1本を八咫に渡した

あぶなっ、忘れるところだった!

それじゃあ……七夕、おめでとう!

乾杯!

夕食を終えると、八咫は約束通り「いつでもサポートチケット」と書かれた紙を出してきた

そしてこちらに渡す前に、わざわざ1枚1枚に「使用期限:48時間以内!」と赤ペンで書き足した

それらは全部、自分と八咫だけの特別で楽しい思い出になるだろう