これがお前が言ってたイベントか?
カムは目の前のヘッドフォンをつついた。これで本当に遮音できるのか疑問に思っているようだ
「相手の言葉はなんじゃろなゲーム」……なんだその妙なタイトルは。まさか、お前の言葉を俺が理解できないとでも?
……大したことないな。正解すれば食道街の特別クーポンがもらえるんだろ?
さっさと始めよう。迷う必要はない
互いに役割を交代するルールのため、まずはカムがヘッドフォンをつけて、自分の言ったことを当ててもらうことにした
渡されたヘッドフォンは音質もよく、大音量で流れる音楽が耳障りになることはなかった。ノイズキャンセリングは完璧に外の音をシャットアウトしている
スタッフの合図で、挑戦が始まった
カムにわかりやすいように大袈裟に口を動かして、ゆっくりと言った
今スイカを食べる?
首を横に振り、1音ずつはっきり、ゆっくりと口を動かした
タ、ベ、ル
……あげる?
カムは目の前でだんだん諦めムードになっていくこちらを見て、なぜそんなに落ち込むのか理解できないようだった
改めてルールをお伝えしますが、制限時間内に1回当てたらクリアです
どうしてもわからなかったら、スキップして次の言葉に進んでも構いません
すぐにそのルールを適用することにした
あなたは対決の人……?
大袈裟な口の動きでもあまり効果がないので、ジェスチャーを交えることにした
カムはこちらが口を動かしながら体で表現するのをじっと観察していた。まずカムを指差し、次に自分の胸の辺りで手を動かす
……なんだ?胸に何か詰まっているのか?
これには、横に立っていたスタッフも思わず吹き出した
カムは少し不満そうにしながら、指示通りにヘッドフォンを外した。しかし、まだ諦めるつもりはなさそうだった
交代だ。次はお前が当てろ
ひとつも当たらないなんて、ありえないだろ
スタッフに交代すると告げ、自分とカムは立ち位置を変えた
最初の言葉は簡単だ。お前でも絶対に当てられる
よく見てろよ。「ずっとあなたの側にいたい」
カムは同時にジェスチャーも加えた
……誰がそんなこと言ったんだ
カムはこの状況がどんなにもどかしいか、やっと理解したようだ
もういい、次だ
「お腹いっぱい」
......
お前、ふざけてるのか――
申し訳ありません、時間切れです。残念ながらおふたりは挑戦失敗です
ルール通り、ここで諦めるしかなかった
こんなことじゃ、何の証明にもならない
ただのゲームだ。上手くいくこともいかないこともある
別に残念がることじゃない。行くぞ
カムは目の前にある食道街の案内板を指差した
クーポンがなくても、食道街には行けるだろ
本当はクーポンなんてどうでもいい。お前とこういうことができるなら……それで十分だ