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All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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バンジ·明晰夢 カササギの祈り

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七夕祭りといえば、伝統的な民俗の屋台が多く再現されている九龍エリアが最も賑やかだ

しかし、驚くことに……そこで思いがけない人物に遭遇した

その声に振り向いた彼は、のんびりと伸びをしながらこちらを見つめた

あれ、[player name]。来てたんだ

……何?僕の顔に何かついてる?

欲しいものがあって

彼は頷きながら、自然と自分の手を引き、屋台の方へ歩き出した

ちょうどよかった、探しに行こうと思ってたんだ

ひとつ頼みがあるんだけど、いい?

彼に導かれるまま屋台へ近付くと、九龍の伝統的な服を着た老人が飴細工を売っているのが見えた。その技術は映像でしか見たことがなく、実際に見るのは初めてだ

溶けた砂糖の香りが鼻をくすぐり、目の前の珍しい技に引き寄せられた

指揮官のために、商業エリアに店舗を常設してもらうよう申請しようか?空中庭園に飴細工屋があるのも悪くないと思う

彼は軽く笑い、腕を組んで柱にゆったりと寄りかかった。目が合ったバンジは、楽しそうな表情を浮かべている

君の反応が面白くてついね

で、話は戻るけど、頼みっていうのは……

バンジは屋台に置かれた数行の文字が書かれている木札を指差した

これのことなんだよね

そう。七夕祭りの特別企画で、九龍文化の伝統行事を基にしたふたつのコースに分かれているんだ

ひとつ目は「糸通し」。子供の手先の器用さを鍛える、子供用のコース

それと、僕が参加できるもうひとつが……

彼は木札の下部を指で軽く叩いた。そこにはふたつ目のコースに関するルールが記されていた

今回の賞品は、滅多に販売されない限定版の安眠アロマなんだ

僕の「小さな願い」といってもいい

だから、手に入れるのを手伝ってほしいんだ。ダメ?

ペアコースへの参加をご希望ですか?まぁまぁ、緊張なさらず

このチャレンジは、皆さんに思い出を残してもらうためのもの。そのために飴細工が必要なだけで、複雑な作業は何もありません

飴細工で何をすればいいの?

砂糖で相手の名前を描くだけです。砂糖が固まれば完成です

最後のステップは……飴細工が完成するまで秘密です

そうだね

露天商の指示に従い、バンジと並んでそれぞれのボードの前に立ち、飴細工の注意事項を聞いて、制作に取りかかった

作品の完成度は問われていないが、つい丁寧に仕上げたくなる。時間が経っても、まだ名前の半分しか完成していない

ふと隣のバンジを見てみると、彼の進み具合もほとんど同じだった。普段の無精な姿勢とは違い、珍しく真剣な眼差しだ

その様子はまるで……

まだ終わってないのに、もうサボってるの?

バンジはこちらの顔の前で手を振って、我に返った自分をからかうように笑った

あんまりじっと見てるから、もう終わったのかと思った

うん。大事なことだから、急いで失敗するのは避けたい

大切な人や物事に対しては、真剣に取り組むものでしょ

というよりも、大事なのはチャレンジの内容の方かな

答えている間に、彼は一筆書き終えた

指揮官の名前は僕にとって、とても大切なんだ

だから、できる限り細かく、ひとつひとつの線を丁寧に仕上げたい

おふたりとも、このチャレンジの趣旨を理解していただけたようですね

そう言って、横で見守っていた露天商も会話に加わった

相手への思いと尊重を、甘い飴細工に込める――

それがこのチャレンジの真の狙いなのです

大切にしすぎるあまり、余計に緊張し、僅かなミスに対しても臆病になってしまった

時間が経ち、ふたりとも飴細工を完成させた。先ほどの会話が頭に浮かび、手にした飴細工に特別な意味が宿った

では、チャレンジの最後のステップをお教えします。それは――お互いの飴細工を交換し、共有することです!

相手の心意をしっかりお受け取りください

指示に従い、バンジと飴細工を交換した。彼は無事に賞品を手に入れ、一緒に他の屋台を回ることにした

バンジは安眠アロマを見つめていた視線をこちらに向けてきた

特段好きってわけじゃないよ、他にも目的があっただけ

そう言って、彼はアロマの中のひとつを手渡してきた

はい、これ。賞品を「独り占め」するつもりはないから

このペアのアロマには、飴細工と同じ意味があるんだ

「繋がり」だよ

指揮官と僕が関わり合い、絆を築いた「繋がり」の証

同じ香りの中で眠ることで、たとえ同じ空間にいなくても、心で指揮官の存在を感じられる

そして飴細工は……

バンジは自分の名前が書かれた飴細工を取り上げ、端をそっと噛んだ

九龍の伝統的な雰囲気を引き立てるため、街の一角には赤い提灯が灯されている。揺らぐ灯火が彼の顔や瞳に映り込み、一瞬の煌めきを与えた

君の「名前」はもう僕の手の中にある

そして僕の「名前」は君のもとに。この飴細工が、どれだけ時間が経っても途切れることのない、僕たちの特別な絆になるんだよ