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All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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終劇

語り手

交錯する拳、一閃する銀光――「アクション巨星」とケルベロスは、すでに数百回の攻防を繰り広げていた

ふたつの拳では6本の手には敵わない。大柄で威圧的な「アクション巨星」でさえも、さすがに疲れが出てきた刹那――

こ、降参だ……

一方、クレイグの隠れ家では……

まさか……実力行使に出るとは……

クレイグに向かって銃を構える。ここに来るまでにすれ違った機械体は、一切邪魔をしてこなかった

クレイグさん、危ない!

助手はクレイグを守ろうと全速力で移動したがうまく止まれず、クレイグに衝突した。その拍子に、彼は「うっかり」クレイグの手にあった端末を叩き落としてしまった

それに続いて、銃声が響く

クレイグと助手は目を瞑った

目を開けたクレイグは自分に怪我がないことを確認すると、急いで助手の方を見た

その時、地面に転がっている端末が彼の目に入った。それには銃弾が貫通している

全ては計画通りだ。銃を向けられている助手は、徐々にクレイグから距離を取る。誤ってクレイグが撃たれないようにするためだ

機械体には手を出すな……

私が援護します。クレイグさん。早く逃げてください!

いや、いい。助手よ、おそらくだが……ゴホッ……彼らが言う「覚醒機械」は君のことだろう。君は彼らにとって重要な存在のようだ

それでも、あなたの命令に従います。あなたがここに来て、私たちを目覚めさせてくれた。そうでなければ、私たちは皆ここで永遠に忘れ去られていたでしょう

つまり、君たちは……

ゆっくりとクレイグに近付き、手錠をかける。しかし、彼はまったく抵抗しなかった

ひとつ訊いてもいいか?

今は……何年だ?

その瞬間、クレイグは胸の懐中時計の針が静かに回るのを想像した

……

ヴィラ

――これが広く出回っている物語よ。指揮官「様」はどう思う?

ヴィラから手渡されたローズティーをひと口すする

ヴィラ

空中庭園の首席が何十体もの機械体と戦い、機械体と人間がお互いを尊重し合う――多くの人はそういう物語が好きなのね

ヴィラは劇場の2階の手すりに寄りかかり、物憂げな表情を浮かべた

ヴィラ

誰も疑わないから、ちょっと面白くないだけよ

……初めて会った時と今、あなたが同一人物だってことを忘れそうだわ

まぁいいわ。私は結末に興味がないし、そもそもこの機械体がどこへ行こうが私には関係ない。黙っていれば、各々が好きな真実を想像するでしょう

ヴィラに倣って、赤い柱に寄りかかった

そう言い、ヴィラとともに声のする方向――21号とノクティスに視線を向ける

21号

21号が最初に見つけた!

ノクティス

食いたきゃ自分で取ってこいよ!

ヴィラ

この退屈な「ハッピーエンド」を私が考えたと思う人もいる――「ケルベロスの裏の顔」をネタにすれば、でっち上げた話の方が信憑性が出るわ

ヴィラ

私は愚か者を欺く方法を熟知してるだけよ

くだらない。報告書を書くだけでも煩わしいのに

……ねぇ、自分の最期について考えたことはある?

ヴィラ

本気で言ってるの?

ヴィラ

そんなものが本当にあると思ってるの?馬鹿というべきか、可愛いというべきか……

ヴィラは舞台の方へ顔を向けた

すると彼女は束ねていた髪をほどいた。赤い髪が零れ落ちる水のように流れ、赤と黄の灯りと溶け合う

初めて会った時の顔が頭に浮かんだ。髪型は今と同じだが、印象はまったく違う

視線は無意識のうちにローズティーに向かい、改めてヴィラの顔へ戻った

ヴィラ

そうだ、今日呼んだのは物語の結末のためなの

ヴィラ

大丈夫、皆はあなたの結末に満足してるわ。でも、私は……

ヴィラの隣へ行き、手すりに寄りかかる。舞台の中央にいる語り手の声が響く中、自分の関心は隣の人物にある。好奇心に駆られて、顔を覗き込んだ

実のところ、自分は物語の結末で英雄のように登場することはできなかった。そして、物語がこれほどまでに奇妙な方向に発展していくとも思っていなかった

しかしその後、急にこの件に関するあらゆる噂が広まり始めた。唯一耳にしたのは、今のこの物語――真実とはかなり異なるものだ

ヴィラ

しっ――

ヴィラは舞台を指差した

語り手

指揮官はようやく職を辞し、故郷へ帰ることができた。そして、ひっそりと暮らせる平和な場所を見つけ、俗世から離れ……

語り手

天下の興亡盛衰が如何様になろうと、数ある英雄豪傑が川とともに東へ流れてゆく

語り手

この地上では数え切れぬほどの名が語り継がれてきたが――

我々はもう少しともに過ごすこととなる――またいつか、物語の全貌を話す時が来るだろう

爆発でシメるか?

登場人物の名前は変えてもいいわよ。九龍は韻を踏むのを好むと聞いたことがあるわ

ランダムな組み合わせしか作れません

好きにして頂戴、それよりも――

ヴィラは背伸びをした

この哀れな指揮官を連れ出す方法を知りたいわ。低血糖の中、何とか持ちこたえているみたいだけど

21号が運転する

助手が首を振った

こちらの車は、他の道具を改造するためにかなりの部品を使ってしまっています

おぶって帰っても、そんなに時間はかからねぇだろ

ノクティスはヴィラの隣にいる意識が朦朧とした人間を背負おうとした

これで帰れそうか?

「アクション巨星」が2頭の馬を連れてきた

おい、も、もしかして……

ノクティスの声は、興奮を隠しきれていなかった

動物、好き

これをどこで手に入れたの?

以前「黄金時代の西部劇」の主役を演じたことがあってな。野生馬がいたから捕まえたまでだ。九龍のスタイルとも合うだろう

ヴィラは隣にいる人物をちらりと見る

……ま、いいわ。私は責任取らないわよ

ヴィラはその人物を馬の背に乗せ、続いて自分もひらりと馬に乗る。そして、ぐったりした人物を抱きかかえた

あなたって本当に放っておけない人ね。……しっかり掴まってなさいよ、指揮官「様」

その後ろの山頂で、信号塔が爆発音とともに倒壊した