舞台前で立ち止まり、振り返ってバンビナータに話しかけようとした時――後ろから何かにぶつかられた
こちらが急に立ち止まったのに気付かず、バンビナータが自分にぶつかってきたのだ
……もう到着でしょうか?
う……バンビナータがまた何かしてしまいましたか?
はい……
指揮官はお怒りではなさそうですね
少女の青色の瞳がおそるおそる振り向いてきて、こちらが本当に怒ってないかどうかを確信したあと、彼女は徐々に落ち着いてきた
指揮官の命令であれば、バンビナータは何としても命令を実行します
ですが、迷路をくぐり抜けて指揮官にまた会えた時……
バンビナータは何だか……不思議な気持ちでした
これまでには似たような記憶がなかったので、バンビナータはこの気持ちをどう表現したらいいのかがわかりません
ですが、バンビナータは……とても嬉しかったです
バンビナータは少しためらって、自分の方に近付いてきた
指揮官、これからは……何か新たな命令はありますか?
バンビナータは……ですか?
少女はぜんまいが巻き戻った人形のように、舞台にぼうっと立ち、しばらく黙り込んでいた
オド……踊る……ですか?
「追憶」に陥る前にバンビナータは本能的につま先立ちになり、とても優雅にポーズを作ってみせた
たとえ記憶が全て消されてしまっても、また甦ることだってある
「好き」なものは変わらないし、「好き」な人だってそうだろう