……クンクン、別の匂い
空気中に仄かな香りが漂っている。この迷路を作った時、機械体たちは「匂い」を再現しようと、アロマスプレーらしきものをここで撒いたらしい
かなり時間が経っているはずだが、一帯の空気には微かな香りがまだ残っていた
……バレンタイン?カメレオンの求愛行動みたいなもの?
うん、21号理解した
こちらが反応する前に、21号は脱出を試みて柱によじ登っていった
ちょっと違う?どこが違う?
こちらがそれに答える前に、21号は脱出を試みてもう片方の柱によじ登っていった
どうしてダメ?
バレンタイン司教は逃げられなかった?
どうして助けないの?
21号なら指揮官を死なせない
21号、ここから指揮官を連れ出す
「言い伝え」をどう解釈しようかと考えながら、決意に満ちた少女の顔を見ていると、思わず自然と彼女の頭をなでていた
?
少女は一瞬警戒するような表情になったが、またすぐに強い意志をその目に浮かべた
じゃあ、一緒に「逃げ出す」
こちらの言葉を待つ気などないように、少女は自分を前の方へ引っ張っていく
21号、必ず指揮官をここから連れ出してみせる