それなりにちゃんとしているわね
あのゲートはいつになったら開くの?
迷路の順路通りにくぐり抜けて行き、一本道を通ると、クリアしたふたりには舞台上でお互いへの想いを伝える時間が与えられる
だが……目の前の光景は、明らかに迷路の創造者が最初に望んだ形と違っているだろう
αは太刀を前に抱え、つまらなさそうに柱に背をもたせかけると、この長い15分間をしばしの休憩にしようと決めたようだ
こちらの視線に気付いたのか、αは突然その目を向けてきた
……昇格者とふたりきりで同じ空間にいる。これは経歴に大きな傷がつくようなことじゃない?
……よくその理解力で……まあいいわ
何か言いたいことはある?
αは生まれながらの戦士のようだった。彼女の姿を見かける時はいつだって、戦っているか、戦いに行く途中かのどちらかだ
こんなハートフルな場所に急に入ってきたせいだろうか、αの顔つきはいつもよりも柔らかく見える
こういうところにあまり興味はない
言ったはずよ、あなたの誘いでもなければ、こんな場所に入ることは永遠にないだろうと
αはこの凝りに凝った迷路に嫌気がさしているようだ
……この手の「体験」は、これで十分ね
もっとインパクトのある世界を、今度見せてあげる
こんな退屈な場所じゃないわ、もっと広大なところ
全ての枷を打ち破って……もっと強くなって、この世界の支配者となった景色よ
……そうね、楽しみにしておいて
まさか、断ったりしないわね?
賢明な判断だわ。私がどういう「あなた」に関心があるのか、わかっているでしょう?
これからも引き続きお互いに監視して、用心し、利用し合いましょう
この災厄の終点にたどり着けるのは誰か……楽しんで見届けることにするわ
やがてゲートが開いた。αは武器をしまうと、迷いなく前へと一歩を踏み出した