人間とは、ビーチが目の前にあれば突撃せざるをえないもの!
青い空、白い雲、真夏の太陽!ビーチはまごうことなき究極のリゾート地!
ビーチを満喫できない、遠方の友人にも会えない!そんな君に、最高のバカンスを用意したぞ!
没入型VR!真夏のビーチ物語!大切な仲間と一緒に、忘れられないバカンスをすごそう!
とんでもなく能天気な音楽が流れてきたので、リーは冷静にゲームの音量を下げた
最初に表示されたのはさまざまな服装が掲示された画面
【あなたの服装を選んでね!】
……これは……なんだ?
こういうゲームは、まず最初にアバターを作るんだよ。みんなのデータはアップ済だから、服装だけ選べばOK!
全部……水着ですね
おふざけに付き合ったことを早くも後悔していますよ
えー、いいじゃんか!普段、構造体の俺たちがこういうのを着られる機会なんかないんだから!!
一面に並ぶ水着を見て、リーフは困惑しているようだ
作戦塗装以外の服装なんて選んだことありません……指揮官、何かご助言をいただけませんか?
え……?こ、これを着るんですか……?
リーはVRゴーグルを貫きそうな鋭い目線をこちらに送ってきた
指揮官にそんなご趣味がおありとは……あなたに対する認知を更新しました
はい……で、では、これにします!
リーフは黒と白の水着を選んだ……するとVRゴーグル越しのリーフが水着姿になった。背後には、魚の尻尾のような装飾がついている
……
そ、そうでしょうか……?
リーは迅速にメニューを閲覧し、一着を選んで確認ボタンを押した
あ!早い!早いよ!俺まだ他の見てないって!
バーチャル空間で水圧や抗力の影響を考える必要はないんですから、なんだっていいでしょう。そもそもお前は初見でもないだろうに、何を迷ってるんだ?
ちょっとしか遊んでないし!それに、こういうのもゲームの醍醐味だろ!
まったくもって理解できない
俺のはどれがいいと思う?指揮官!アドバイスプリーズ!
ほぅほぅ、指揮官はこういうのが俺に似合うって思ってるんだな……確かに布面積が少くて動きやすいぞ……
あっ、あの……それはちょっと……カムイ、やはり他のも見てみましょう!
お!これはいいね!バカンスって感じがする!
もしお前がそれにするなら、僕は今すぐこのゲームから抜けるぞ
これは……ちょっとおかしくない?アヒルのクチバシ、外せるのかな……?
指揮官、からかうのはやめにしてください。あいつ、何でも本気にしますので
うーん……どれも面白いよなぁ。どれにしようか……
何も選ばないことを推奨します
こう一覧を見ていくと……リーさんが選んだ水着が、一番正統なデザインのようですね……
カムイは眉間にシワを寄せながらメニューを上下にスクロールしていたが、やがて太ももをパシンと叩いた
いいや!服なんて重要じゃないよな!せっかくみんなと一緒に遊べるってのに、大事な時間を無駄にしてる場合じゃないぜ!
カムイは服装選択画面を閉じると、デフォルトのアバターでゲームに入った
水着は初見の時にひと通り試着したしな
お!ビーチバレーの対戦モードができるぞ!ペアで!
じゃんけんでペアを決めようぜ!勝った方と負けた方で分かれよう!
そうじゃないと、お前ら絶対指揮官と組みたがるだろうし
……
……誰もかれもがお前と同じだと思うなよ
指揮官!じゃんけんしようぜ!じゃん、けん——
——ほい!
カムイはグーを出した
カムイはチョキを出した
カムイはパーを出した
あれ、あいこ?ダメダメ、もう1回!じゃん、けん——
——ほい!
カムイはグーを出した
カムイはチョキを出した
カムイはパーを出した
またあいこ!?息ぴったしじゃん!?こうなったらふたりで組もうぜ!?
最初からそう言えばいいのに……
では、私はリーさんと組みますね?
じゃあチームも決まったことだし!始めるとするか!