議長、直近の報告をまとめました
ありがとう
……やはりそうか
どうかしましたか?
侵蝕体の活動が活発になっている。地球に落ちた異重合体の影響か……あるいは……
なんにせよ、手をこまねいているわけにはいかないだろうな
アシモフはハセンとセリカの会話に割り込むと、ハセンの手中のファイルからマップをつまみ出し、大きなスクリーンに投影した
我々科学理事会の予想通りだ。侵蝕体は活発になっているだけじゃない、集団を形成する傾向も確認できる
従来は本能のままに同じ場所へ向かうだけだったのが、今じゃ、特定の場所を攻撃するために戦力を集結させている素振りがある
私たちの作戦の影響で、侵蝕体の行動パターンが変わったということですか?
そうかもしれないし、違うかもしれん。侵蝕体には生物の常識が通用しないからな
アシモフ。つまり、君たちには現状況に対処する手段の用意がある。だからここに来たんだな?
アシモフは映像を切替えた。スクリーンに構造体用のパーツらしきものの設計図が映し出される
これは?
構造体の拡張モジュールだ。「逆元呼応」モジュール
侵蝕体が戦闘集団を形成したとなれば、我々も相応の規模の戦闘を展開する必要があるだろう。だが、現実的に考えて不可能だ
だから、従来の少数精鋭の方針を継承しつつ、作戦に参加する全兵を「精鋭」とする――
このモジュールを使用すれば、それができるということかな?
そうだ。逆元呼応を起動すれば、作戦エリア内にいる構造体個体が繋がり、思考とリンクを共有できるようになる……
「一即ちこれ全なり」を実現できるというわけだ
……モジュールの製造状況はどうなっている?
一定量は確保できるが、生産ラインが安定しない。なにしろ他にも作るべきものが山とあるからな
そうか。君の言うように、十分に対処しうる戦力を侵蝕体に当てることは考えていた
侵蝕体の集団を放置するわけにもいかん。集団がこのまま拡大していけば、取り返しのつかない事態に発展する可能性もある
セリカ
はい、何でしょう?
調整可能な部隊を今すぐ帰投させてくれ。アシモフ、第2級構造体にモジュールを実装する段取りをお願いしたい
2級?なぜ1級じゃない?高度な機体の方が協調もとりやすいんじゃないか?
高度な機体でなければ対応できない状況というものもある。万が一の事態が発生し、隊列を離れて単機で侵蝕体を相手することにでもなったら、他の隊員を危険に晒しかねん
……わかったよ、どのみち俺は作るだけだ。あとは好きに使ったらいい
では、セリカ。命令の伝達を。これより、集団作戦を開始する!