次のポイントは列車中央に位置する工業車両です。当該車両の生産システムは動力以外のあらゆる動作に関わる最重要機能で、緊急性も危険性も極めて高い任務になります
列車の構造図によれば、ここから工業車両までは回廊車両を除いて計8両の距離があり、平民車両を通過しなければなりません
リーは構造図をタップする。平民車両内部のスキャン映像が空中に浮かび上がった
車両内には鉄の壁に沿って窮屈な寝台が並んでいる。隙間には生活用品が散らばっており、まるで巨大なアリの巣のようだ
更に異合体が徘徊している。グルグルとにおいを嗅ぎ回り、血走った目で獲物を探すさまは、檻の中の猛獣のようだ
そこにはもはや人間が暮らしていた痕跡は跡形もなく、まさに地獄の様相を呈している
平民車両は侵蝕率が極めて高く、人間の生命反応も、逆元装置の信号も皆無です。初期スキャンのパニシング侵蝕密度は2.429g/L
次の回廊車両の先が、平民車両です……
ええ、準備はできています
私が先行します
待って
一緒に行く
工業車両にたどり着かないと、作業のしようがない
私、ここをよく知ってるから
……前は、人に見つからないようにしてたから
ここの床材のことだって、隅から隅までよくわかってる
役に立つよ
……あなたたち、貫通扉から入るつもりなの?
平民車両のオートメーションは全部ダメになってる
平民車両の貫通扉の構造は他の車両と違う。エネルギー供給が回復しない限り、中からは力ずくで開けるしかない
つまり、貴族車両から平民車両に行くことはできても、平民車両から先頭車両にたどり着くことはできない……?
私が貫通扉を破壊します
……列車が壊されてばっかりじゃ、整備部隊が可哀想
誰かが次の車両の通路に回り込んで外から手動で操作すれば、扉は10秒もしないで開くと思う
では、回り込む方法は?
排気口を使う
車両の空調システムの排気口ですね。ですが、大きさが問題です……
……中に入れるとしたら、ソフィアしかいませんね
私にやらせて
私は役に立てるし
戦える
薄い唇をキュッと結び、背筋をピンと張って立つソフィアは、さながら灌木のようだ。細く、小さいけど決して折れることのない強さを秘めた木……
……
他の人が戦っているのを黙って見ていたくないから
少なくとも時間の節約にはなるでしょう
……作戦中でも、作戦開始前でも
指揮官の指示に従うのであれば、何も言うことはありません
ちゃんと従うよ!
指揮官殿、ソフィアは見た目よりもずっと強いと思いますよ
大丈夫です、必ず守りますから!