隊長!重篤汚染区域近くの分隊と連絡が取れたぜ!今Cエリアに合流してる!
こちらは撤退ルートを確保。合流開始
よくやった
次は第2分隊と撤退した分隊が合流に成功すれば……
前の計画では彼らはすでに撤退しているはずだが……
こちらストライクホークのクロム。第2分隊、応答を願います
こちらはすでに予定の合流地点に到達しています。速やかに目的地へ向かってください
その必要はありません。残るは俺ひとりだけです
?!
第2分隊は全滅しました……ゴホッ、俺は指揮官の最後の命令を遂行中です
それはどんな命令ですか……そんな情報はなかった……
工場を爆破します
だから……近辺の侵蝕体をなるべく引きつけないと……
わかりました。爆弾を誘爆してからも工場から撤退する時間は十分あります。計画通り私が迎えに行きます
その必要はありません
ここが俺の終点です
何を言ってるんだ、まだ時間が――
今回は運よく生き延びましたが
でも、次は?
次もまたこんな幸運に恵まれると?
負傷で動けないなら、現地で待機を!すぐ探しに行く!
クロムさん……周りを見てください
どこを見ても壊れた瓦礫ばかり。生者は錆びた缶と汚水の中で喘ぐしかないんだ
懸命に戦ってもパニシングはいつも我々より一手先を行く。思うに……やつらは……進化しています
前の小隊のチームメイトはまだ構造体整備室にいます。前回の任務で重傷を負って以来、あの病室から出てきたことはありません
きっと……もう二度と会えないんだろう
いつまで戦っても永遠に勝利する日なんか来ないんですよ
我々は勝てる
乾いた苦笑いがジャミングのノイズとともに聞こえた
まあ……戦争に勝利したって、俺たちに「未来」なんかないだろう
俺たちがこうやって地球で命をかけていることを、空中庭園で安全に暮らしている人たちは知っていますか?気にしていますか?
「期待している。地球の未来は君たちにかかっている」
「もっと戦功を上げるんだ。父親もきっと喜ぶだろう」
君は……
雲の上の人たちにとって、俺たちなんてただの道具にすぎないんだ
侵蝕体のグレネードで人の形がなくなるほど破壊されても、意識海が影響されない限り、戦闘は続行できる
記憶を失うリスクを負い、戦闘する意義も忘れ、自分が愛する人のことも忘れて
俺が構造体になったのは……ただある人が望んだからです。でも俺は……もう長い間その人に会っていません
仲間を失ったことはありませんか?重傷を負い、犠牲になった構造体に対する雲の上の人たちの態度を、あなただってよく知っているでしょう?
スミス様、元の小隊はどうなったんですか?
あれはもう使い物にならん。君が気にすることではない。科学理事会が状況に応じて最善の措置を講じるだろう
……彼らはもう、戦場へ復帰できないのでしょうか?
彼らには彼らの帰るべき場所がある。戦争とはそういうものだ
……
戦争の終結ですら高望みなんだ。戦争が終わったあとのことを考えるなんて、何の意味があるんです?
重圧という名の石を背負わされ、もはや一歩も歩けない人のように、通信の向こうからは構造体の小さなつぶやきが聞こえてくる
俺はもう……本当に疲れた
こんな終わり方も悪くない……
……急がなくては……!
どんな慰めの言葉ももはや無力だ。クロムはできる限りの全速力で構造体の方へと駆けていった
高速前進する機体は火花を散らし、クロムが出せる最高速度を冷却システムがギリギリで支えている。少しでも重心がずれれば転倒してしまうだろう
冷却システムが……まだ十分機能していない……機動性も……
もっと速く――
最後にあなたと話すことができて光栄でした
あなたは尊敬に値する方だ。俺、聞いたことがあるんです……あなたは自ら改造を志願したと
あなたの存在は上の人たちの捏造で、俺たちを慰めるためのただの神輿にすぎないと思っていました
ですがあなたの行動を見て……考えが変わりました
尊敬しています。あなたは……本当なら空中庭園で安全に暮らせただろうに
あなたなら、もしかしたら……
構造体の声はだんだんと小さくなり、すでに聞き取れないほどに弱々しい
ここからすぐに目標エリアに到達できるはずだ
――今は感情的になっている場合ではない
あんなことが二度と起きないように、行動しないといけない
クロムは工場に突入し、友軍のシグナルを捜索し始めた
そしてついに組立工場の一角で地面に横たわる構造体を発見した
彼は目を閉じ、すでに意識を失っていた
……機体はまだ最低限の生命維持をしている。間に合う!
こちらストライクホークのクロム、目標発見に成功。今から連れて戻る