皆が反応するより素早く、侵蝕体が吼えながら道路を塞ぐ構造体を蹴散らし、後方にいるバンジに向かってきた
距離が徐々に近づき、バンジは引き金を引き続けた。弾は正確に相手の両足に命中したが、それでも侵蝕体の突進を止めることができない
バンジ!
左足関節……
突進は止まらないが、バンジの攻撃は確実に侵蝕体にダメージを与えていた。バンジは侵蝕体の破損した左足関節を見つめたまま左側に身を転がして、なんとか突進を避ける
直接その体が当たりはしなかったが、侵蝕体が建物に激突して粉砕された瓦礫がバンジに当たり、バンジの体が地面に倒された
ゲホッ……
侵蝕体はのろのろと建物から離れて振り向いた。そこにいる者の中で一番距離が近いバンジに向かって、ゆっくり歩いてくる。そして腕を振り上げ、最後の一撃を与えようとした
侵蝕体の腕が高く上がった瞬間、数発の弾が侵蝕体の体に当たり、その体の半分を吹き飛ばした
————!
バンジが振り向くと、トンプソンと数名の構造体たちがお互いに助け合いながら立ち上がり、掩体壕に寄りかかって攻撃してきたのだ
その攻撃の反動で、彼らは地面に吹っ飛んだ。戦闘によって全ての傷口が一斉に裂け、循環液が破損した部分から溢れ続けている
我々、は……
倒れるもんか……
旗印だ
皆……
その反撃で侵蝕体の電子脳が完全には破壊されなかったらしい。オイルをその残った半身から滴らせながら、侵蝕体はバンジの頭を狙って武器を振り上げた
どうやら……これで最期らしい
小さくつぶやき、バンジはゆっくりと目を閉じて、静かに死を迎えようとした
バンジっ!
遠くから聞こえた大きな叫び声に、バンジは反射的に目を開けてその方向を見た
カムイが黒い大剣をバンジの前で構え、侵蝕体を蹴り飛ばした。その圧倒的な力に侵蝕体の電子脳は粉々になった
目の前のその光景を見た瞬間、バンジを支えていた気力の最後の糸が切れ、バンジは地面に倒れこんで気を失ってしまった
バンジ、バンジ!
……ここは?
あっ、目が覚めたか。トンプソンの言う通りだ
そうだ、侵蝕体、そしてほかの仲間は……?
安心しろ、全て終わったよ
この区域の侵蝕体は全て掃討した。負傷した仲間はトンプソンが今、世話してるよ
そう……か……
悪くない感覚だ
え?
自分ができることをして……また進む感覚だよ
真実か偽りかは考えない、結果も考えないで一心不乱にやる
目の前の出来事を見て、頭よりも早く体で判断する
ほぉお~、どうやらお前もこの感覚、わかってきたんだな!
カムイ!バンジは目覚めたか?
トンプソンはバンジがいる掩体壕に入り、カムイに訊ねる。カムイがバンジを見下ろすと、バンジはすでに両瞼を閉じて胸を規則的に上下させていた
……
起きたけど、またすぐに寝た……おっと、声のボリューム下げろって、起こすなよ!
声が一番大きいのは君というバカだよ
お、おお……
ハハハ、眠れるのはいいことだ。前みたいにずっと眠れないよりはいい
腑に落ちたんだろう。これからは長く穏やかに眠れるようになるさ
――――
教授……あなたの質問に、今でも完璧な答えを出すことはできません……
過去の罪を変えられないのはわかっています
でも今は、僕は嘘と過去を背負って前に進もうと思う
嘘の存在、あなたと僕の正誤を白日の下に晒すためではなく、目の前の仲間が嘘によって傷つけられないために
僕とあなた、そしてスターオブライフ全体が、前に進み、何らかの変化をする時期に来ているんです