成功です
そう……
そうです。これからは曲様も外においでになれます
外の世界……どこか遠く感じる言葉だわ。あの戦争からどれほどの時間が流れたことか
ええ、あの戦争のことはよく覚えています。あの時からあなたは九龍商会の墓守となられました
美しい志です
称賛として受け止めましょう
ははは、ではようこそ、新しい世界へ
御託はいいわ。あなたは偽善者よ
偽善、そうかもしれません。でも偽善かどうかは誰もわからないのですよ
停滞していた時が流れ出し、初めて私は建設中の九龍環城や地下遺跡から離れた
その時からだ。現代に生きる人々の生活を観察し始めたのは
くそ、防衛線が突破される
支援は?支援部隊はどこだ?
レーダーでは部隊はすでに撤退……クソッ、置いてかれた
ちくしょう……!
侵蝕体が来た。もう終わりだ、我々はここで死ぬんだ……
諦めてはいけません
誰だ?
突如、拠点に入ってきた少女に兵士たちの会話は中断された
彼女はさっと龍槍を振り、拠点に侵入してきた侵蝕体を撃破した。更に最前にいた侵蝕体に龍槍を右手で勢いよく投げ、ふき飛ばした
彼女が右手を高く上げると、新しい龍槍が生成された
構造体だ
違う、彼女には……パニシング反応がある。侵蝕体だ!
私は敵ではありません。それより、目下の敵である侵蝕体を処理するのが先です
それだけ言うと、曲は真っ先に拠点から飛び出し、外にいる侵蝕体と戦闘を始めた
曲の能力は優れている。が、体内のパニシング侵蝕を抑え、兵士を侵食させずに大量の侵蝕体から兵士を守るのは、さすがに難しい
戦闘が終わり、廃墟と化した拠点に曲と唯一生き残った兵士が立っている
た、助かりました
皆を助けられませんでした……
いえ、こんなに敵が多くては……
送りましょうか?
大丈夫です。私はもう部隊に見捨てられた。このまま帰れば面倒なことになります。この近くに「オアシス」という拠点があります……一緒に行かれますか?
あなたには侵蝕の症状がありますが、ちゃんと説明すれば、何とかなるかと
必要ありません、おそらくお互いに面倒なことになるから
そう……ですか
そう聞くと兵士は曲に敬礼をして去ろうとした。しかし一歩踏み出した瞬間、彼は倒れ込んだ
彼の背中は傷だらけで、侵蝕体のアームが1本刺さったままだ
あなた……!
曲は兵士のもとへ駆け付けたが、すでに彼の呼吸は止まっていた
曲は拠点の横に3つ墓を造った。木の墓標に3人の兵士のヘルメットを掛け、そのまま拠点を後にした
中に入れろ!
ダメだ。外は侵蝕体だらけで、お前らを入れたらこの町が終わってしまう
城の外で数体のスカベンジャーが兵士と口論をしている。しかし突然の侵蝕体による攻撃で彼らは一瞬で灰と化した
お、お願いします。子どもだけは街に戻してください
ええ、そうするわ
曲の返答を聞いた女性はやっと手を離した。しかし、攻撃で失明したこの女性は知らなかったが、自分の息子はとっくに息絶えていた
離別、裏切り、苦痛、死
これが今という時代を覆う状況なのね
パニシングがもたらした地獄の中で人類はもがき、苦しみながら生きている
この世に冥府も地獄もないことはわかっている。でも私の目の前に広がっているのが地獄じゃなかったらなんなの?
人類の命は虫けらより安く、いつでも死と隣り合わせ
彼らは抗いながら、苦しみの中で死ぬ
傲慢な言い方だけど……
でも、あなたたちが苦しみ続けるのをこれ以上見ていられない
誰かが背負わなければ。それが罪であったとしても王の責任だわ
自分が大切にしている物を守るのが王の役目
本当に決めたのですね?
ええ、上にいる者たちを引きずりおろすしかない。そうすれば人類の苦痛は終わるわ
彼らがこの悲惨な時代でもがく必要はなくなり、全ての人が仮想の世界で永遠の命を手に入れられる
かしこまりました
ああ、華胥。これからは全データを人類の意識モデルの収集とバックアップに使って。万世銘計画は九龍以外にも行う必要があるわ
全ての人類は歴史に記録され、ともに新たな時代を迎えるべきよ