不完全な構造体と不完全な侵蝕体。互いに同種の武器を振るい、戦っている
侵蝕体は大剣をかつてのように放り、そして構造体はそれをかつてのように簡単にいなした
マオ、俺はアンタのことを師匠と思ってた。なぜこんなことをする!
俺はただ、町で多少才能のあるガキを見かけ、稽古をつけてやっただけだ
いつまでもお前の面倒を見ていると思うか?俺はお前に生きる権利を与えてやったんだ、それだけで十分だろう
ふざけるな!体よく実験体にしただけだろうが!挙げ句に、仲間の背後を撃つような真似しやがって!俺たちの敵は侵蝕体じゃないのか!?
お前たちは侵蝕体だ、カム
俺たちは人間だッ!
大剣を手放してしまったカムは、手足を駆使して戦っている。接近するチャンスを探るが、マオは距離を取って大剣を振り下ろし、カムの動きを封じる
体内に標準値を超えるパニシングを抱えながら、自らの本能に従って殺戮と破壊を行う。まさに侵蝕体そのものだな
単にもともと人間で……まだパニシングに肉体を壊されてないというだけだ
この野郎!!!
お前たちには確かに昇進の可能性があった。真の黒野の兵士となる可能性がな。だが、実験は失敗した
いや、パニシングを人体に注入するなどという狂った計画……何の成果も得られないのは当然か
お前たちの部隊に異常者が現れたことで、上層部はようやく理解した。構造体こそが真の救いであると
アンタはその実験の成果だって言いたいのか!マオ!!!
俺もただの実験体だ。特殊保安部隊は50人も残っていない
それなのに、なぜ!!黒野のために戦うんだ!!!
過程はどうあれ、最終的にパニシングに勝ち、この世界を守ることができるのであれば……意味のない犠牲ではない
そんな屁理屈、俺は認めないッ!!!
今の世界はそういう理屈で動いているのだ、カム!
違う!俺がわかっているのは、俺たちがだまされたってことだ!俺たちを殺したのはパニシングじゃない!お前らだ!
マオは守りに転じ、直接カムの攻撃を受けようとした
だが、カムは学んだことがある。カムは瞬間的にマオの大剣を踏みつけ、その勢いによって空中に飛び上がった
ふん、ガキが!
マオはカムの動きにもバランスを崩されていない。彼は構造体の特性で身体の平衡を保ったまま、大剣を振り上げて空中のカムに斬りかかった
今だ!
何だと!?
最初からこの戦いは1対1ではなかった
マオがカムを待ち構えていたように、カムもまた、マオとの戦いを予想していたのだ
カムの仲間たちはずっとチャンスを待っていた。カムの掛け声と同時に弾丸がマオの腕を打ち抜き、大剣は慣性によってマオの手から離れた
カムが瞬時に空中の大剣を奪う
パニシングが何だ!人類が何だ!パニシングが蔓延してなくたって、お前らみたいなヤツは自分の欲望のままに同じようなことをしてたに決まってる!
他者を簡単に切り捨てるヤツが、世界を守れるものか!!!
カムは着地するなり身を翻し、絶叫とともにマオに突撃する。その刃が、マオの身体を貫いた
まるで時間が止まったかのような一瞬だった
それにな、師匠……俺はこの世界が憎い
マオは返事を返さない。マオはカムの顔を見、紫に変色したカムの右手を見、そして循環液に覆われた大剣を見て、
最後に自分の体を見た。ただ火花が飛び散り、人間らしい痕跡は何ひとつない
実のところ、俺も同じだ
師匠……?
マオが倒れた瞬間、階下の炎がこの空間に一斉に広がる。そしてカムは、ようやくこの場に満ちる悲しみと絶望の声に気づいた
仲間も、マオについてきた黒野の人員も、皆が涙を湛えている
それから、聞き覚えのある音――
頭上のけたたましいエンジン音は、建物の壁を震わせながら、何かを投下する
続いて、爆発
黒野!!!!!
カムは穴の開いた天井から、自分の戦友を殺した航空機を見た。そして、飛行機もまた、カムたちの位置を特定した
ここまで、追ってきたのだ
建物の中に逃げる場所などない。カムはただ、仲間が、そして守衛たちが爆撃に飲み込まれるのを見ているしかなかった
……何もできなかった。マオに勝ち、自分の気力を失った。そして、生きる理由も失った
倒壊し続ける建物で、カムは武器を投げ捨て、白い空を見上げた
クソッ……!
クソッ!!!!!!