げっ……まさかここに配属されてくるとはな
……
なるほど、噂の「死神」か……
待ってください、隊長、それは……
構造体の制止は間に合わなかった。小隊長はヴィラに蹴り飛ばされ、喉もとに刀が突きつけられている
私のことを死神と呼ばないでくださる?
このッ……
待ってください!隊長、俺はこの件で独房食らってるんですよ。あとでまた追及されたら、たまったもんじゃない……
チッ、仕方ないな
隊長はヴィラの刀を払いのけ、隊員の手を借りて立ち上がる
まあ少々のハプニングもあったが……
今回の任務内容は、都市を放棄する撤退戦だ。皆それぞれ最善を尽くせばいい
防衛ではなく撤退……住民の状況は?
準備が間に合ってない。撤退手段も不十分だ
必要な物資を回収してから、ここを放棄する……上層部の指示はそういうことなのね?
……その通りだ
どこから手をつけたらいいかしら。少なく見積もってもまだ数千人が取り残されている。もともとあった防衛施設を利用したとして……
何をどう利用してたって、この場所を守ることはできないぞ!
ここは重要なハブよ。ここを放棄するということは、この一帯の戦線を放棄して、戦場を縮小するということ……
そこまで言って、ヴィラは最初の小隊で聞いた「作戦本部が宇宙へ移管する」という話を思い出した
ここの資源の移転……おそらく全てを後方に送るつもり……
どこで聞きつけたのかは知らんが、本部はそう言っていた
つまり取り残された者、撤退し損ねた者は
犠牲になるだろうな
……侵蝕体を1カ所に誘導すれば、より多くの人を撤退させる時間を稼げるわ
おい、ちょっと!
身を翻して外へ出ようとするヴィラの腕を、独房の隣人だった構造体が掴んで止める
死にに行くつもりか!
私自身の痛みを終わらせるために、行くのよ
ヴィラは射抜くような目線で、構造体を見返す。そして腕を振り払い、双刀を抜いた