ロボットが役を演じるなんて……ちょっとおかしいけど、面白かった!
それにセリフのやりとりも面白かったわ!まるで昔の人が現代に生き返ったみたい!
……えっと、続きはないのかな?
ごめんね、続きはまだできあがってないの
だれ?
驚かせちゃった?私はセレーナ、この舞台劇の作者よ
あなたの感想が嬉しくて、思わず話しかけちゃった
え?この舞台劇、あなたが作ったの?
まあそんな風に堂々と言える出来でもないけど……
でも、これは私の作品。制作者として胸を張らないとね!
ええ、年齢だって私と大して変わらなそうなのに……本当にすごい
そんなに褒められると……照れちゃうな
さあさあ、舞台劇についてお話するわね!
これはデータベースで見つけた人類初期の演劇『テンペスト』を改編したものなの。資料が欠落してたから、一部しか復元できてないんだけど……
あ!私もシステムでこの作品を調べたことがあるわ!紹介文を見ただけでもう……!
こうして、ふたりは周囲も気にせず夢中でおしゃべりに没頭した
——だから、もし挿絵が必要なら、私に言って欲しい!
本当!?実は悩んでたの!舞台劇の背景、どうしたらいいかなって
挿絵を参考にできれば、舞台もきちんと設計できるわ!
ふふ、役に立てるなら嬉しいわ
——本館はまもなく閉館いたします。ご来場の皆様は、ご退館の準備をお願いいたします――
もうそんな時間……
え?全然気づかなかった……
私たち気が合うわね。色んな話ができて……今日はすごく勉強になった
私ももう帰るね。結局、あなたの舞台劇しか見なかったわ、あはは!
ごめんね……嬉しかったら、つい……
でも、アイラだって時間を忘れるくらい夢中になってたよね?
じゃあ――これからもよろしくね!
絶対よ!
……それから多くの歳月が流れた。どのくらいかといえば……アイラ自身も忘れるほど長い月日だ
自分と同年代の親友ができて、毎日が充実していた
芸術や創作のこと、趣味のこと。アイラはあらゆるものをセレーナと共有せずにはいられない
そんなアイラにも、小さな悩みがあった
アイラ、また例のお友達からメールよ
あ、先生!ほんとだ、すぐチェックするわ
タッタッタ……
ふふふ、セレーナはいつもクマの絵文字を入れるんだから……
それよりあなたの新しいお友達、本当にすごいわね
そうよ、セレーナはすごいの!
……って、先生、なんでわかったの?
この前、市内の展示ホールで彼女の名前を見かけたから、友人に訊いてみたの
友人は展示の責任者でね、詳しく教えてくれたわ。セレーナは界隈の「期待の新星」なんだって
……期待の新星って何?
うーん……つまり、物凄く評判がいいってことね
将来性も有望だし、創作の腕もぐんぐん上がって、とっても見込みがあるみたい
作品は……十代の子供のものとは思えないって
うーん……セレーナならまあ当然かな……
アイラは仲が良すぎて、気づかないのよ
傍から見たら、宝石のように輝く未来が眩しいくらいよ…………
当たり前だよ。セレーナは絶対に有名になる
だとしたら嬉しいわね。間接的だけど、私も芸術家の成長を見届けられるんだもの
あっ、ごめんなさい。おしゃべりしすぎちゃったわね
先生は行くわ。アイラみたいにいい子ばかりじゃないし、先生としてのお役目をしっかり果たさないとね
……
アイラ、最近連絡できなくてごめんね!今すごく忙しくて!
前言ったと思うけど、舞台劇を出展するの!
脚本を出せば終わりだと思ってたんだけど、まさか監修もする羽目になるなんて……めんどくさいよ……
そうそう!今回の仕事相手はね、空中庭園の世界政府芸術協会で、この道のプロなの!
それでね、構造体に会ったの!それもたっくさん!
機械の身体だなんて信じられなかった!普通の人間とまったく同じよ!
もし、アイラがいなかったら……私ひとりだけだったら、ここまで来られなかった……
だからね、ずっと感謝してるの。面と向かっては言えなかったけど……
ねえ、アイラ。アイラも試しに絵を出展してみない?
色々な大人の作品を見てきたけど、アイラの絵なら負けないと思うの
考えてみて。将来の役に立つかもしれないわ
そうなんだ、忙しそうね……
世界政府芸術協会か……きっとすごい人がたくさんいるんだろうな。そういう人たちに色々教えてもらえたら――
……よし!決めた!
セレーナ、待ってて!私もすぐに追いつくわ!絶対に負けないんだから!