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灯火
テントから飛び出したルシアの目の前には、一面の銀世界が広がるばかりだ
ルナ……
ルナがいないと、何もかも……
意味がないのに……
空中庭園も……未来も……食べ物も……生きることさえ……意味がないのに……
キィ――
前方から、1体の侵蝕体が徐々に近づいてきた
…………
しかし、ルシアはナイフを構えない
キィ――
……
もう……終わりにしよう……
キィ――
ルシア！
…………
ルシアは応えない。もはや、その瞳は何物をも映してはいなかった
ルシア、君はまだ生きなければならん
お前が憎い……この世界が……憎い……
キィ――
ニコラは一振りの太刀をルシアの前に投げた
戦え、ルシア
全ての苦しみの根源は、パニシングだ
もう、戦う理由はない……
放っておいて……
君は生きなければならん。なぜなら、それこそがルナの望みだからだ
…………
この刀を誰に向けても構わん
ただ、ルナの犠牲を無駄にするな
ルナ……
キィ――
ルナ……！
……
……
うっ……
うああああああ！！
ついにルシアは足下の太刀を拾い上げ、侵蝕体へと突進した……
…………………………
数日後――
意識海の波形が安定しました……
バイタル、安定……
パニシングテスト、クリア……
Ta-193コポリマー適応良好、拒絶反応なし
よし。体外生命維持装置を停止、逆元装置との接続を始める
意識体ルシア、準備はいいか？
…………
意識体ルシア、返答を
…………
ザザ――
手術室のスピーカーが起動した
彼女は同意している
承知しました
ニコラは腕を組みながら、手術台の上に眠るルシアの姿をモニター越しに見つめる
ルシア……
君は本当の意味で、自分の人生を歩めなかったが……
もし己を燃やし尽くすことが君の運命だというなら……私は、それを無駄にはせん
今日から君は真の灯火となり、人類の命運とともに歩むのだ。たとえそれが、君の真に望むものでなくとも……
ルシアよ、我々を導いてくれ。あの暗闇の向こうへ
