Story Reader / シークレット / 14 視線の虜囚 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

14-8 長夜来たる

>
ルシア

なぜ助けに来たんです?

ルシアは前方にいる代行者を警戒しながら、低い声でαに聞いた

α

説明する必要はない

ルシア

…………

α

[player name]

αがこちらを見て、何かを言おうとしている

α

地下都市で集噛体を撃破したあと、ルナがどこに行ったかわかる?

α

また?

αは少し訝しげな表情を浮かべたが、すぐに何かを理解したようで、眉根を寄せた

α

本当に?

αは嘘を見抜こうとするように、鋭い目でこちらの目を見つめてくる

最後の記憶の中で、自分は集噛体のコアから眩しい白い光が放たれたのを見た。その後、周囲のパニシング濃度が急激に上がったのだ

ルシアとともに撤退しようとした時、上で崩壊が起こった

再び目が覚めた時、侵蝕の程度はすでに弱まり、自分を覆っていたものは誰かによって排除されていた

そして……華胥も消えていたのだ

α

…………………………

しばらくの沈黙ののち、αは視線を再び目の前のフォン·ネガットに集中させた

フォン·ネガット

おや?お話はもう終わりですか?

あの人間からもっと多くの情報を聞き出せるかもしれない。私もそのことに興味があるんです、話の邪魔はいたしませんよ

その言葉を聞いて、αは軽蔑するかのように笑った

α

執行部隊にいる限り、彼らは真実について何も知らない

ルシア

でも、私はもう記憶を取り戻しました

α

それで?

ルシア

え?

α

過去の記憶以外のことは?

ルシアはしばらく黙った。αの言葉は彼女の興味を引いたが、あの代行者の前で、質問し続けるかどうかはためらわれた

しかしまったく未知である敵と、直接対決するのが破滅的な行為なのは明らかだ

温室の上にいるクロムのために時間を稼ぎたい。ここではやはりもっと時間をかけるべきだろう

α

ルシアから何も聞いてないの?

ルシア

何のことを言っているのですか?

α

記憶を取り戻しただけで、事件の全貌は知らないわけね

ルシア

事件の全貌……

α

気にならなかった?指揮官が昇格者とリンクできることをヴェンジに教えたのは誰か、とか

そして彼はどの昇格者とリンクしたのか

αはわざと「昇格者」という言葉を強調した。依然、目線は目の前の代行者に留めたままだ

ルシア

彼の手下……ですか?

α

理解が早いわね

ルシア

…………

ルシアは一瞬ためらい、それでも心の中の疑問を解消しようと決めたようだ

ルシア

「ウィンター計画」を知っていますか?

α

なぜその名前を知っているの?

ルシア

調査で

ルシアは簡潔にひとつの単語を吐き出すと、それ以上、多くを話ろうとしなかった

α

その計画についてはあまり知らない

それは昇格者に関しての研究であることくらいね

我々が調査した情報からすると、ヴェンジに関係する事件に由来している可能性があります

[player name]の状況が更に悪化するなら、この計画と関係する可能性が高い。なぜならその後、今でも計画を推進してくれる指揮官を探しているようだから

ルシア

α、なぜ助けに来てくれて、そして、なぜ私にこのことを話してくれたのですか?

α

私は過ちを繰り返すのが嫌いなの。「自分」が過ちを繰り返すのも見たくない

ルシア

それは……この前言っていたことと少し違いますね

α

ふん……

私は変わらないわ。変わったとしたら、そっちよ

気づいてないの?ルシア

何も知らずに、楽園の中にいたあなたが……もう「始まり」にいる

この言葉を聞いたほとんどの者は「始まり」が何を指すのかわからなかった。しかしルシアはその言葉を聞いて眉をひそめた

α

私は「自分」が過ちを繰り返すのも見たくない。たとえあなたがいつか深淵に足を踏み入れるとしても、見捨てられてであって欲しくない

ルシア

あなたの言っていることが本当に指揮官の身に起きるのであれば、私は全力でそれを止めます

α

それはほんの一歩にすぎない、どんな憎しみも一日で蓄積されるわけじゃないわ

αはしばらく沈黙して、ルナに言われた言葉を思い出していた

α

ルシア、あなたのことはただの陰謀の産物だと思っていた。嘘に塗れた不必要なデータの一部にすぎないと

だから、あなたと出会ったあの日から、あなたの存在を消したかった

でも、あなたは私に別の可能性を見せてくれた

今のあなたは、もうあの時のような、迷っているひ弱なルシアではない

独立して存在する人格だわ。たとえ私と似ていようとも、私はもうあなたを余計なデータとして見たりしない

あとどれくらい抗えるのかを、見せてもらう

ルシア

……私は決してあなたと同じ道を進みません

α

本当に?

じゃあ、その日がやってくる前に、全力で深淵から逃げ出すことね

でも今は――

αは一歩前に進み、ルシアと同時に刀を握りしめて、切っ先をフォン·ネガットの方に向けた

フォン·ネガット

極地で起こった出来事について、彼女に教えなくていいのですか?

α

他人の口から聞く方が、信じやすいこともある

フォン·ネガット

そうですか、ではいらっしゃい

強制的に始まった戦闘は3分の間続いた。相手の攻撃手段は多様で、かつ無限だった

フォン·ネガットをよく知るα以外に、ほとんどの者が少なからぬダメージを受けていた

なぜかはわからないが、あの代行者はあえて致命傷を避けて、獲物と戯れるかのような攻撃をしてきている

しかし、αでさえ、フォン·ネガットを直接攻撃することはかなわず、繰り出した攻撃は全て彼の防御フィールドに跳ね返されてしまった

この防御フィールドってやつ、本当に厄介だな!さっさとその甲羅から出てこいよっ!

防御も戦闘の一部ですよ。もし私に近づくことさえできないなら、私を挑発する資格などありませんよ?

そして、なぜいつも中心で突っ立っているあの指揮官を守るのです?

彼はのんびりとした足取りで歩きながら、こちらを見つめてきた

なるほど、あなたは先の尖った水晶の角錐のようだ

彼らの力を刺激して、そしてすぐに枯渇させる

指揮官はそんな存在ではありません!

勝手にしてください、私はもう飽きてきてしまいました

彼は両手を後ろに回して、口元にはふざけたような笑みを浮かべている

機体を換装したばかりの隊長さんはまだ戻ってこないですね。もう母体の養分にでもなってしまったのかな?

???

ギャァ――――――――

かすれた悲鳴が壁を通して、皆の耳に届いた

おめでとう、あなたは正しかったようだ

彼は皆に向かって拍手をして見せた

約束は守りましょう、もうここから離れていいですよ

しかし、必要な情報を抹消するために、あとひと仕事ありましてね

光が彼の握りしめた掌の中で流砂に変わり、それが地面に落ちた瞬間、空間内のパニシングの濃度が急激に上昇した

ここは崩れる、早く撤退を!

皆は互いに援護し合いながら、出口へと撤退する

指揮官を援護!

絆というものは往々にして厄介なものだ、そうでしょう?

彼が微笑みながら手を上げると、パニシングの電流がすぐさま指揮官を護ろうとする者に襲いかかった

皆が目の前の攻撃に対抗している間に、崩壊した巨大な石板が上から覆いかぶさってきた。わずかな隙間はあるが、人間のか弱い体では動かすことができそうにない

指揮官!!

……

彼の攻撃は僕たちに集中している!今、そこに行くと指揮官を巻き込んでしまう。まず引き離そう!

いい観察眼ですね。でも、役には立たない!

雷のような爆発音が空中に響き、壁が再び崩壊した

指揮官ッ!!!!!!

ルシアは宙に飛び上がり、空中で落下してくる石板を打ち砕いた。そして砂利を利用して周囲を走る電流状の攻撃を食い止めている

こっちです!

αの一連の攻撃により、フォン·ネガットの防御フィールドにも大量の亀裂が生じたが、すぐに元の状態へと回復していく

そこにルシアが姿勢を低くして突進した。ふたりの刀が前後してその頑強な光の壁に突き刺さり、回復する前に再び突き破った

面白い、あなたたちが抗う姿は実に面白い

そんなに指揮官のことを救いたいなら、全員でかかってきなさい

ここで戦闘を続けさせたいだけのようですね

崩壊が心配なら、安全な場所に移動してもいいのですよ

早く、行くぞッ!

カムイの怒りの言葉で、皆はこの区域から離れた

しかし、ルシアが再び刀を持って前進しようとした時、フォン·ネガットがαに向かって指を鳴らした

再び開始する前に、規格外を排除しなければいけませんね

突然、大量の混乱した雑音がαの意識海の中に流れ込んできた

自分の立場を弁えなさい、α