Story Reader / シークレット / 14 視線の虜囚 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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14-4 再会

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αが煙の中に飛び込んだことで、遠くにいた者たちもこちらに気づいたようだ。彼らと接触しないために、αは素早く地下水路の中に潜り込んだ

前の探索で調べたところでは、このトンネルの片方はハイジがいるカプセルにつながっており、もう片方は直接下へと降りる穴に繋がっている

彼女は刀を持ち上げてその穴へと向かったが、そこには大きくて頑丈な錠がかけられていた

……邪魔ね

αは武器を振り上げた。その斬撃によって、壁には人ひとりが通過できるほどの亀裂が入った

手を借りるわ

αは周りを浮遊する魚形の異合生物をつかむと、下方への狭い通路の中に飛び込んだ

なかなか便利ね

αが手を離すと、2匹の魚形の異合生物はゆっくりと通路の中を泳いでいった。2匹は出口でつっかえ、壁の亀裂に挟まれ、尻尾を振ってもがいている

ここから……まだ調べていない場所がふたつ

αは自分の目標地点へと急いだ

……これは

目の前には中型の「貯水池」があり、赤潮が大きな渦を作っていた。そこではある機器の中枢が、心臓のように赤潮を地下水路のさまざまなパイプへと送り出していた

……ここは赤潮を送り出している場所?

送り出す目的地に関して、αには大体の予測がついていた

あそこに赤潮を送るの?

αが地下水路の中を探索している時、緑の植物を栽培している奇妙な部屋を見つけていた

その周囲を調べている時に、αは赤色の木の下に、ある通路が隠されていることに気づいた

更に下に行って詳細に見ようとした時、突然現れたハイジに止められたのだった

正解かどうかは不明ながら、ほとんどの区域を見てきたαが、あの隠された部屋にだけまだ行ったことがないのは事実だった

どうやら、あそこが一番疑わしいというわけね

けれど離れる前に、まずはここを徹底的に捜索しないと

αは眉をひそめて、赤潮の流れる渦の中から安全に潜れる場所を探した

??

……よっ

背後から、聞き慣れた声がした。αは振り向いて、暗闇と一体化している影に目を凝らした

ロラン?

自分の推測を確かめるため、αは警戒しながら影の方に歩み寄った

ロラン

おっと、来ないでくれ

彼の声は少し震えており、どうやら発声モジュールが損傷しているようだ

ロラン

今の姿を見たら、驚かせちゃうよ

ここで何をしているの?

ロラン

ほかにやりようがある?君と同じ目的だよ

あなたもルナを探しているってこと?

ロラン

ご明察。僕はちょうど、下から上がってきたばかり

……何も手がかりはなし?

ロラン

そこら中を探したけど、下は危険な物以外に何もなかったね

ルナ様はここにいないようだ。これは、いい知らせかな、悪い知らせかな?

周囲を流れる水音だけが響く中で、ふたりはしばらく沈黙した

あなたが生きているってことは、ガブリエルの「スペア」は片づけたのね?

ロラン

もちろん

ルナを見た?

ロラン

残念ながら……あいつを倒すのに力の全てを使ってしまってね

…………

ロラン

そんな顔をするなよ。ルナ様でも苦戦したようなやつなんだから

ロランの損傷した発声モジュールを通してぎこちない笑い声が響いた

ルナでも苦戦した相手に、どうやって勝ったの?

ロラン、前からあなたは本当の力を隠していると思っていた

私が意識海に入ったあの時も、どうやってグレイレイヴンを引き止めることができたの?

ロラン

そんなに警戒しなくてもいいよ。僕はただちょっと成長しただけ。もう前とは違うんだ

まあ、実力を隠していたことは認めるよ。でもそれは、空中庭園の者に対してだ

最初に手持ちのカードを見せると、相手に手を変えるチャンスを与えてしまうだろ?

ルナ様でも苦戦したような相手を始末できた理由は簡単なんだ

僕は彼女が成長するのをすぐ傍で見てきた。その戦闘方法もよく知っている

ガブリエルさんお手製の「姉妹」で一番すごいと思うところは、敵の攻撃を真似できることだ

でも、猿真似はしょせん猿真似。まがい物にはその攻撃が戦闘に有利かどうかの判断はできないからね

黄金時代の古い笑い話にあるんだ、「猫がドアの開け方を覚えるのを防ぐ方法」

僕があれを倒すことができた理由は、この笑い話と同じ、シンプルなことだよ

戦闘中、意味のない動きで惑わしたのね?

ロラン

いや、もう少し狡かったかな。その点に関しては、実は感謝しているんだ

ロラン

僕は事前に偽装をしたんだ。君につけられた傷を利用して、僕自らが戦闘中に自己強化のために自傷しているように見せかけたのさ

相手は最初は半信半疑だったけど、僕が自分の左腕を切り取ったのを見て、ようやく僕の動きを真似し始めたんだ

…………

ロラン

ほとんどの人は、前例を学び一瞬で今を超えていく学習マシンには勝てないと思ってる。でも、僕みたいな悪い前例だと話は別だね

ロランの声は赤潮の荒れ狂う波の音でかき消された。彼は高笑いをしたあと、少し黙って休んでいるようだ。その体には普通の会話でさえもこたえるようだった

ロラン

君とルシアの意識海がリンクしたあと……僕とグレイレイヴンのあの戦闘……

実は、あれは戦闘といえるようなものじゃなかった

君と話したあと、僕は一時的に撤退して、時間稼ぎのための「贈物」を準備してすぐ横で待っていたんだ

もともとは君を足止めするつもりだったけどね、役に立ったみたいだ

……これから、どこに行くの?

ロラン

これに関しては当分、秘密ってことにするよ

そう……それでもいいわ

αは踵を返し、機械の中枢の後ろに立つ影を背にすると、出口に向かって歩いていった

ロラン

待って

αはその言葉に歩みを止めたが、振り向かなかった

ロラン

もし、本当にルナ様の失踪に、「ルシア」が関係しているとしたら……

それでもルナ様を探し続けるのかい?

だって、ルナ様がずっと願っていたのは……

ロラン、言いたいことはわかってるわ

ルナが、昇格ネットワークの目的について迷い出し、自分の望みを見失ってしまったとしても――私には、彼女の真の願いが何かはわかっているつもり

ただ、私が言葉にしないのは……その願いが叶うことがない事実を知っているからよ

昇格者の状況から見て、空中庭園には何も期待できないし、また、全てをあの「ルシア」と何の情報も持っていない指揮官に頼るなんて不可能だわ

グレイレイヴンの立場が変わらない限り

極地で起こった一連の出来事。あれで、ルナの心は崩壊した……

でも、目標を達成するためには、もう少し準備する時間が必要だわ

ロラン

…………

中枢の後ろにいるロランは小さな声で何かを言ったようだ。しかし彼の声は渦巻く波の音にかき消されてしまった

この拠点はもう破壊されている。空中庭園の小隊がまだ上にいるわ。彼らはおそらくもうひとりの代行者に遭遇したはず

あっちの代行者に今まで人類と蓄積してきた矛盾を清算してもらえばいい。そうすれば私も、この絶え間なく続く問題から抜け出して、ルナを探すことができる

どちらにしろ、連綿と積み重なってきた問題の大部分は、この戦闘で崩壊したってこと

残りの問題を片づけたら、ルナを連れて、その本当の願いを叶えてあげたいの

勝手に解釈してべらべらと話してくれたけど。でも、まだ全てを挽回できる余地があるのは、あなたという不確定要素があったからでもある

ロラン

それは、しぶしぶであれ僕に感謝していると受け取っていいのかな?

そう理解したければ、勝手にどうぞ

ロラン

冷たいね

さて、僕は全ての地下水路を探索したんだけど、まだここでルナ様を探し続けるつもりなの?

まだやり残したことがあるの

ロラン

そう。じゃあ、幸運を祈るよ

Hasta luego.

…………