そこね……!
セレーナっ!!
アイラは閉鎖されたドアを何度も斬りつけ、ひしゃげるほどに破壊した
そして――
はぁッ!!!
ドアを蹴り飛ばす
セレーナ、いるの……?
非常灯のかすかな光が、キャビンの輪郭をかろうじて浮き上がらせる
壁際で作動している端末には、さまざまなデータや波形図が映し出されていた
?
端末の接続パネルからケーブルが伸びている。その先には……
…………
……体が半分だけ残った、人型の残骸
垂れ落ちた腕に、虚ろな目……命の気配を感じられない
セレーナ……
アイラは大鎌を降ろし、ゆっくりと近づいて身を屈めた
そして手を伸ばし、残骸の頬に触れようとする
——!
アイラの存在に気づいたのか、死骸のようだった人型は小さく震え出した
アイラは一瞬驚いた表情を浮かべたものの、その目にはすぐに決意が宿った
残骸の漆黒の目にもまた、か弱い光が灯った
…………
ア……イ………………
セレーナ……よかった……まだ生きてる……
…………
セレーナの発声装置は酷く損傷しているようで、苦しそうなうめき声しか出てこない
セレーナはまるでそれを気にするように、声を出さなくなった
大丈夫よセレーナ、すぐに検査するから。帰ったら、新しい体に移りましょうね
アイラはセレーナの各機能を検査し始めた
…………
補助型構造体だったセレーナは、侵蝕率が臨界点を超えないよう、ぎりぎりのところで踏ん張っていたようだ
セレーナの強い意志がなせる業だ、とアイラは思った
大丈夫、帰るまで耐えられるわ
アイラはセレーナを見つめ、それからセレーナと繋がっている端末へ視線を移した
宇宙ステーションの端末に接続して……エネルギーをもらって、それで生き延びていたなんて……
こんなにも酷い姿で、どうやって暗闇を耐え抜いたのか、アイラには想像だにできない
そう、声
接続した端末を介して、声を宇宙ステーションの妨害信号に乗せてたわよね?
セレーナ、私が気づくって信じてたの?
…………
ごめんなさいね、遅くなって……
よし!行きましょう!
……待…………っ…………
アイラが端末のケーブルを引き抜こうとすると……
端末のモニターが変化した
これは……宇宙ステーションのデータベース……?
監視画面ね……あれは、グレイレイヴン?
画面上のグレイレイヴンは重力室のリング上で八方塞がりのようすだ
セレーナ……手伝うっていうの?
…………
だけど……ここの通信設備はもう……
…………
……他の端末を探してくるわ
すぐに見つかるといいんだけど……