Story Reader / 叙事余録 / ER09 昏曙の学影 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER09-12 昨日の再現

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八咫ちゃん、本当に行っちゃうの?

私をひとりぼっちにして、どこに行くの?

やっと八咫ちゃんのために、いつもの学院の日常を作り上げたのに……

気に入らない?望み通りじゃなかった?

大丈夫だよ、次は八咫ちゃんの希望通りに夢を調整するから

ここはもう私たちの学校なんかじゃない!ここはもう……ただの死者の学校だ!

こうして昔の日々に浸るのって、そんなに悪いこと?

痛みもなく永遠に生き続けられるんだよ。人生なんてもともと儚い幻想にすぎないんだよ?

どうして目覚めようとするの?目覚めたら幸せになれるの?

思い出した。今やっと全部思い出したよ

思い出したって苦しみが増えるだけよ、八咫ちゃん……

私は、赤潮がこの島に与える影響を解決するために、ここに来たんだった

アンタが投射で見せてる幻覚は、私を足止めする罠でしょ?アンタはずっと私を阻止しようとしてる

私にとっても……人類にとっても、アンタはもう敵だ

ユウカ、教えな。シヴァをどこへ連れてった!?

あの人は、八咫ちゃんにとってそんなに大事な人なの?

仲間だよ。肩を並べて戦う戦友でもある

じゃあ……友達ってこと?

友達?まあ、そうともいえるかな

あの人が八咫ちゃんの友達なら……私は?私は違うの?

今はそんな話をしてんじゃない!

結局、こうなるんだ……

どうして……一緒に赤潮の世界に行けばよかったのよ

心配しないで。後でゆっくり思い出させてあげる

説得は失敗に終わり、八咫の前にいた「ユウカ」の体はぐにゃりとねじれ始めた

黒髪の美しい顔の輪郭が曖昧になり、液体のように溶けだした

本物のユウカじゃない、幻影みたいなモンか

待って、ユウカ!あっちの世界を選んじゃダメ!

赤潮を選んじゃダメなの!

早乙女ユウカ?

ふふ……

目の前の「ユウカ」は赤い液体となり、教室の中に消えていった

やっぱり、ここは幻覚の中なんだ

夢と同じだ。夢と気付いた瞬間に崩壊し始める

教室の四方の「真実」も揺らぎ始め、全ての壁から赤い液体が染み出してきた

足下が続けざまに揺れ、大量の雑音と光が飛び交う

幻影で構成された空間や虚構の物体は、八咫の認識する現実と矛盾している

やがて、崩壊は徐々に八咫が立っている場所へと迫った……

地面に蜘蛛の巣のような亀裂が広がる

その亀裂が自分の側へ達する前に、八咫は身を翻し、教室の扉に手をかけた

行くしかない!

八咫が力いっぱい扉を開けたその瞬間……

彼女の周りの光景は地面に叩きつけられたパズルのようにバラバラになり、無限の暗闇となった

八咫の目の前に現れたのは、漆黒の一本道だ。それ以外に道はない

彼女はその細い道を必死に走った。その道の先には出口の白い光が見える

出口にたどり着く直前、八咫はふとある好奇心に駆られた

怪談の登場人物のように、彼女は思わず背後を振り返ってしまった

八咫の背後には、大きく口を開けた巨大な能面が恐ろしい勢いで迫っていた

恐ろしい牙が目の前の一切を呑み込もうとしたが、白い光を放つ出口はもう目の前だ

彼女は全力で前へと走り……その後、白い光が視界の全てを覆った

ハッ!

どこかよくわからない場所から、恐怖と混乱の感情とともに八咫はハッと目を覚ました

喘ぎを抑えられず、幻覚の余韻もまだ残っている

すでに構造体の八咫にとって、それは人間の名残のような、ある種の幻痛に近かった

冷静さを取り戻した八咫は、周囲の状況を観察した。近くには埃まみれの音響機材が置かれている

彼女は防音壁を支えに立ち上がり、じっと周囲の音に耳を澄ませた

どうやら、ここは学校の放送室のようだ

さっき、幻覚の中で見たオカルト研究部員の日記……

確か、多目的室に何か奇妙な機械が隠されていたって書いてあった

なんで学校にそんなものが?校内に一体何を隠してんの?

今この建物で起きている異常と関係があるのかな……

何か大事なことを忘れてる気がする

待てよ、そうだ。あの時の御園学院集団昏睡事件!

あの事件が起きたのは……多目的室……そうだ、多目的室だった!

何がなんでも調べに行かなくちゃ

八咫は放送室の扉を開け、まっすぐ多目的室の方へと向かった

階段を上がっていた時、八咫の頭は再びズキズキと痛み出した

また幻覚が……

足取りがどんどん重くなるのを感じながらも、八咫は不快感を必死にこらえ、進み続けた

ぼんやりとしながら多目的室にたどり着いた時には、彼女はほとんど意識を保てなくなっていた

クソッ……

あともう少しで着く

絶対に多目的室までは行かなきゃ……

粘り強く八咫は前へ進み続けた

ほどなく奇妙な音が聞こえ、昨日の人々や出来事、物が目の前に現れた

荒れ果てた廊下は歪んで変形し、奇妙な光と影が再び飛び交った

死去していたはずの記憶が再び鮮やかに蘇り、八咫を幻覚の世界へ呑み込んでいった