Story Reader / 叙事余録 / ER05 撃ち伐る流砂 / Story

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ER05-9 日没と酒

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端末の音がまた途絶え、うんともすんともいわなくなった。ノクティスの身に何が起きたのかわからない

信号が消える前の端末が示した場所から、彼の居場所をおおまかに推測するしかない

小さな町のことだ、距離もそれほど遠くはない。しかしノクティスは、宿から離れない方がいいと言っていた。もしこれが罠だったら……

どうやら町でトラブってるな……ちょいと見に行こうと思うが、お前さんも……

彼は指をクイッと動かしながら部屋を出た

一緒にこい。あの赤髪の構造体を探したいんだろう?

マックスと一緒なら、確かに安全だが……そもそも町長のマックスを完全には信用できない

どうした。俺がお前さんを取って食うとでも?

ふむ……度胸があるのは褒めてやる

マックスは足を止め、葉巻をふかした

それと、俺のことは「町長」と呼べ

扉が開いた瞬間、耳をつんざくほどの喧騒とむっとするような強い酒の匂いが流れ出してきた。誰もいない町の路上とは別世界だ

あまりにも騒がしく、普段の倍、怒鳴るように声を出さないと会話ができない

町の酒場だ……ここにいるほとんどのやつらにとって、アルコールは必需品だ。特にこんな夜はな

マックスは大きく空気を吸い込んで麦の香りを嗅ぐと、誇らしげな表情をした

ふん……今年の出来も悪くない

空中庭園にもアルコール飲料はあるが、厳格に管理される規制品だ。こんな風に普通にマーケットで流通する商品だとは思ってもみなかった

合成食品ではない、自然食品を長時間かけて醸造し、飲み物にすることは、ある意味かなりの贅沢ともいえる

これが「ニューオークレイ」のゴールデンブラッドだ……

マックスは泡立つ黄金色のビールを一気に飲み干した

ワインのような高貴さもなく、米酒のような芳醇さもない。だが単純な快楽と自由を享受させてくれる

1杯やるか?

頭のお固い指揮官だな。あれを見習え。考えるな、飲め

???

やっっっほ――――――!

その時、酒場の一角から奇声と歓声が上がった

???

異合生物なんざ、あの変な森でバカみてえに倒したぜぇ!一匹一撃だ!しかもグレイレイヴン指揮官を守りながらだなぁ……

兄貴!すげえよ!パねぇよ!

【規制音!】で【規制音!】すぎる

シャシャシャ!おーう、指揮官が来たぜ!おーいここだァ!

人々をかき分け、煙と暗いライトの向こうを透かすように見ると、ノクティスが誰よりも高い場所に立って、手招きをしているのが見えた

赤らんだ顔を見ればわかる、電解液疑似酒を飲んでいるのだ……酒以外にそんなものまでここは生産しているのか?

いえいえ、兄貴はホンのちょこっとしか……

意外にも現地の住民が当たり前のように会話に加わってきた

シッ!【規制音!】命知らずが……10分前に兄貴に同じことを言った【規制音!】は、あそこで逆立ちの前衛アートになってるぜぇ!

ノクティスにこちらの声が聞こえてなくてよかった……

ちょっと前までの彼らはノクティスに唾を吐こうかという態度だったのに

兄貴が異合生物をぶちのめしてくれたお陰で、食糧を貯蔵してたサイロが無事だったんだ……じゃなきゃ今年の収穫祭はパァだったぜ!

【規制音!】、俺らだって恩を仇では返さねぇさ!

彼らはどう見ても善人ではないし、むしろ悪人キャラとしてはありふれている。だが物事の筋をねじ曲げるクズではないということなのだろう

それに喧嘩しても勝てねえしな!ウキャキャキャッ!

【規制音!】それな――!グハハハハ!

ノクティス

おい!指揮官、何してんだ、こっち来いよ!

周りの人に囲まれ、ノクティスの前まで押し出された。よく見れば彼は椅子の上に立ち、片足をテーブルにまで乗せている

ノクティス

いっちょ踊ろうぜ!

ノクティス

タコか?踊るなんてどこでもできるだろ?楽しけりゃいいんだよ!

キラキラした照明の下で、ほろ酔いのノクティスが手を伸ばしてきた

マックスの言う通りかもしれない。この町ではあれこれ複雑に考えない方がいいのかも……

ノクティス

おらおら!

ためらいつつノクティスの手を握った瞬間、テーブルの上に引き上げられた

人々から歓声と笑い声がドッと上がり、気まずさも少し和らいだ――だが踊れと言われても、こちらはずぶの素人だ

ブレイクダンスでもやるか!

来いよ!何だよ、照れんなって……

ノクティスはこちらに耳を貸さず、手足をバタバタと動かしている――当然「ブレイクダンス」風、なだけの動作だ

もうどうでもよくなった――ダンスに決まった形があるなんて誰が決めたんだ?ぎこちなくても、心のままに体を動かせばそれがダンスなんだ!

ガハハハ!おい!俺らも踊ろうぜ!!

【規制音!】、おうよ!

酔っ払いたちがノクティスのマネをしてわらわらとテーブルに上り、音楽に合わせて好き勝手に踊り始めた

床に落ちた最後の酒瓶を酒場のマスターに手渡した頃には、空の端がすでに明るくなっていた

もうこんな時間か……と思わずあくびが出る。ファウンスにいた時なら、任務中にあくびをしようものなら、落第ものだ。かなり気が緩んでいるらしい

う――ん……

ノクティスはもちろん、床には大勢の人が転がっていた

ふん、こいつ……1日で町のチンピラと馴染みやがった。もともとここの住民だったみてえだな

で、空中庭園の指揮官さんよ。お前さんはどう感じた?

人生は……「まさか」の連続だ。起きたことはすんなり受け入れりゃいい

お前さんが言ってたデモンって野郎をここで調べるつもりなら、仕事に就かないとな……

マックスが酒場のマスターに頷くと、マスターが優しく微笑みかけてきた

なんならこの酒場で働けばいい。ちょうど収穫祭の時期で、マスターも人手不足で困ってるしな

だが、今は身分のことは忘れよう

この構造体は……高い戦闘力があるみてえだし、町の護衛を任せよう。起きたらヴァンのところに連れていけ

俺のせがれだ……町の安全を守るとか言って、今は保安官を自称している

お前さんがたが何かを調べたいなら、あいつが手助けするだろう……彼がそうしたいと思えば、だがな

ってことでお前さんの最初の仕事は、マスターを手伝ってこの酔っ払いどもを外に掃き出すことだ

そう言ってマックスは去っていった。隣にいたマスターは袖をまくり、外見からは想像できない筋肉を見せると、片手で酔っぱらいを引っ掴んで次々と外へ放り投げた