Story Reader / 叙事余録 / ER01 遥かなる方舟 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER01-6 「セージ」の貢ぎ物

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運搬機械はもともと物流会社が製造した新エネルギー輸送機械だった。しかし投入される前に、パニシングがそのエリアに蔓延した

彼は倉庫の奥深くに捨てられていたが、物資を探しに来た人間たちが扉をこじ開け、休眠中の彼を目覚めさせたのだ

彼は災害発生前の指令に従うが、輸送を必要とする人類はもう存在しない。それでも彼は人間に壊された体を引きずって町中を巡り、運搬できるものを探し続けた

そのうち彼は壁に描かれたグラフィティアートに惹きつけられた。機械たちが言うには、そのグラフィティアートは「セージ様」が残した啓示なのらしい

ある日、未完成のグラフィティアートの前に不思議な機械体が立っているのを見た。彼女は微笑みながら壁に美しいラインを描くと、完成後に拍手をしながら喜んでいた

そして少女は隅に隠れていた運搬機械に気づくと、彼の頭をそっとなでてくれた。その瞬間、運搬機械は初めて「温かさ」という感覚を理解した

彼女が自分の身分を明かさなくても、彼女こそが「セージ様」だと運搬機械は確信した

「セージ様」は人類の遺物に興味があり、1日中デパートで「お宝」を探していた。そして彼女はデパートにいた他の機械を集めて「ロープレ」というゲームを始めた

そのゲームにどんな意味があるのか、運搬機械はよく理解できなかったが、少女が心から喜んでいるのを感じた。その強烈な感情は自分の空っぽだった心を満たしてくれた

しかし少女はすぐこの地を離れていった。彼女は手を振って「バイバイ、ナナミ楽しかったよ」とだけ言い残し、太陽が輝く方向へと歩き出した

彼女が好きなものを集めておけば、いつか帰ってきてくれるのでは?

運搬機械は人間が残した芸術作品、書籍、ゲーム、オモチャ……そういった町中の物を集めて、拠点に持ち帰るようになった

彼は集めた「貢ぎ物」を倉庫内にきちんと並べ、彼女がやってくるのを待ち続けていた

セージ様が最初にきた時よりもたくさん集めたから、きっと前より楽しく遊んでくださると思います

でも、セージ様は全然帰って来てくれません。「キーアイテム」をまだ見つけていないからでしょうか?

それに私の仲間たちも……誰ひとり帰ってきません

運搬機械は「貢ぎ物」と機械の残骸の中に困惑したように立ち尽くしている

……その仲間たちとはどんな外見なのですか?

私と同じ型番の運搬機械です

デパートに入ってすぐ、彼女は運搬機械の異常に気づいた

ナビシステムだけではなく、他の機械仲間に対する識別能力も故障しているようなのだ

パニシングに侵蝕された機械は識別信号を発信できなくなるため、彼と同型で目の前に立っていても、運ちゃんはそれが昔の仲間だとは識別できない

ハカマはまさに運ちゃんの眼前で、侵蝕された機械体を撃破したのだ。今、彼らの残骸はここにある

……

何か問題が起きたのでしょうか?

本来なら全てを伝えるべきだったが、どうしても口が開かなかった

……いいえ、これなら……たぶん、彼女も気に入ると思います

私も「セージ様」を探して追いかけているんです。私の……使命なので

ハカマは倉庫の片隅へと歩いた。そこにもグラフィティアートが描かれ、周りには「貢ぎ物」がたくさん置かれている

壁には新しいものと古いもの、ふたつが描かれていた。古い方のタッチには喜びが満ちあふれ、作者はこの絵で自分の喜びを伝えようとしているようだ

新しいものには小さな少女とたくさんの機械が描かれている。それを見ているうちに、ハカマはナナミが昔に描いた絵と、その時の彼女の笑顔を思い出した

彼女は今どこにいて、何をしているのだろう?

目を閉じると、ハカマの頭は「思う」という感情でいっぱいになった

もしセージ様に会えたら、私たちがここで待っていることを伝えてくれませんか?

了解しました、必ず伝えます。運ちゃんが待ち続けていることを

ありがとうございます!私はずっとここで、彼女の帰りを待っています!

ハカマは手を伸ばし、運ちゃんの頭をなでた

運ちゃんは懐かしい姿を見つけたかのように、カメラのガラスに映るハカマを静かに眺めていた

離れる前にハカマは運ちゃんと戦闘で荒れてしまった倉庫を整理した。ふたりは運搬機械の残骸を柔らかなマットレスに乗せた。彼らが安らかな眠りにつけるように

唯一立位の姿勢をした運搬機械はハカマに手を振り続けた。彼女が自分に向かって頷き、別れを告げるのをじっと見ている

女性の姿が段々小さくなり、やがてきらめく太陽の中に消えていった