芝居の筋は波乱に満ちていないといけない。数奇な運命の主役は賢く鋭敏で、邪悪な悪役は一途な追随者だ。それぞれが逃れられない重要な役割を担っている
観客が恐怖におののき、涙を流し、そして万雷の拍手が響くまで毒蛇は次々と人々の前に現れ、マジシャンの帽子からは永遠に鳩が飛び出し、災難は影となり劇中の者を苦しめる
こんな馬鹿馬鹿しい考えが浮かんだことに苦笑いし、筏を縛っていた手を止めて、声がした方向を見た
――これは勇者の宿命だ
何かがおかしい
耳がそのわずかな違いをとらえ、笛の音より先にドラゴンの咆哮が聞こえた
しかしすぐに、笛の音が「リード」した