昨晩はバンジと遅くまで話をしていて、そのまま彼のところに泊まった。もう朝か……
こんなに心地いい日差しに包まれていると、二度寝をしたくなる……
そう思いながら寝返りを打つと、額に圧がかかった
まったく……
バンジがその「重み」をどかしてくれると、自然と表情が和らいだ
漂う芳ばしい香りに、浅い眠りから目を覚ました。目をこすりながら隣にいる白い髪の構造体に目を向ける
起きた?
彼は九龍式で淹れた芳ばしい香りを漂わせる熱いお茶をテーブルに置いた
うん
うん、猫。あれで起きなかったら、もっと重いものを載せようと思ってた
バンジはそう言いながら横に座り、目の前に瓶や缶等を並べ始めた
そう。これで材料は揃った
テーブルの上に並べた物を整理したあと、バンジは小瓶を3つ渡してきた
はい、約束してたウィッシングボトル
欲張りすぎだよ
前にも言った通り、願い事は3つだよ。つまり、今日指揮官に作る「バンジ特製ドリンク」も3杯までってこと
願い事は決まった?今日の主役の願いは、全部僕が叶えるよ
決まったら、その紙に書いて。大丈夫、覗き見なんてしないから
小さなボトルの中の紙を取り出し、ひとつ目の願い事を書いて、再びボトルに収めた
開けていい?
バンジは許可を得てから、今日叶えるべきひとつ目のウィッシングボトルを受け取った
えーっと……「バンジから誕生日を祝ってもらう」
結構ざっくりしてるね
すると、彼はテーブルの上の瓶や缶に目を走らせ、少し考えたあとで、いくつかを選び取った。注ぎ、混ぜ合わせ、特製のドリンクが完成した
最初から考えてたことだから、そこまで時間はかからないよ
どんな味なのかは、飲んでみてのお楽しみ
バンジから渡されたドリンクを受け取り、少し眺めてから一気に飲み干した。ドリンクの上半分は草原のような鮮やかな緑色で、下半分は海のような深い青色をしていた
どう?
ジャスミンと青梅シロップだよ
青梅シロップには疲労回復効果があるんだ。そしてジャスミンには――
九龍には「相濡常安、以沫不離」って言葉があるんだけど……簡単に言うと「平穏と安定がともにある」って意味。その意味が込められてる
当たり
その幻想的な色から、チョウマメは色んなドリンクに使われてるんだ
美しい色彩って、色んなものを連想させるでしょ。空とか、海とか……さまざまな想像をかき立ててくれる
「自由」
僕はただ、君が連想するためのきっかけを提供しただけ。どんな風に自分の願いを定義するかは、君次第だよ
平穏への祈りを除けば、僕は君が目指す終点にたどり着くことだけを願ってる。それは空を翔る鳥のように、水中を泳ぐ魚のように自由であること
甘く清らかな香りが口の中に広がり、余韻が永遠に続くような甘美さに浸った
ひとつ目の願いは、満足してもらえた?
それはお楽しみってことで
バンジは落ち着いた笑みを浮かべ、心配している様子はまったくないようだった
これを通して君に伝えたいことは、まだたくさんある。今日丸1日使っても足りないくらいにね
でも、まだ昼にもなってない。時間はたっぷりあるから……ゆっくり今日を楽しもうね