ナナミから送られてきた謎の座標に従い、郊外にある空き倉庫に足を踏み入れた
突然、頭上の巨大な照明が消え、背後の大きな扉がバタンと音を立てて閉まり、暗闇の中に閉じ込められた
ピピ――クハ、クハハハ。善良ナ、アプラシス星人ヨ。我々、ギアド兄弟ニ捕マッタ、カラニハ――
奇妙なセリフを読み上げる電子音が途切れ途切れに響く。機械の関節が動く鋭い音が混じり合い、一面の暗闇の中に反響していた
……お前はもう逃げられない――おい、大事なところでセリフを途中で止めるな
ア、ゴメン……アプラシス星人ヨ。我々、ギアド兄弟ニ――
シャキーン!この宇宙にナナミの第一法則違反者を発見!スター警察、只今参上!!
突然、活発で明るい声が天井から響き、それと同時に消えていた全ての光が再び輝きを取り戻した――
ウワァ!スター警察ノ、ナナミ様ダ!! おい!まだセリフの途中だぞ!
光に照らされてギアド兄弟が正体を現した……クマ型バイオニック1体と、頭に包帯を巻いた機械体が1体。どこかで見たことがあるような……
ふふん、悪名高きギアド兄弟め!
VL426星系に逃げ込めば、ナナミに見つからないとでも思ったのか!
ナナミのスターアンテナはいつでも、どこでも、宇宙の果てでも!永遠に指揮……じゃなくて!アプラシス星人の奇跡の電波を受信できるんだから!
ナナミは剣と盾を持ち、機体の後ろに繋がったワイヤーを使って、まるで童話の中の騎士のように空中から自分の前に降り立った
怖がらないで、アプラ……うーん、呼びづらいね!やっぱり指揮官でいいや!
怖がらないで、指揮官!ナナミが来たからもう大丈夫!
おのれスター警察め……ギアド兄弟、一生の不覚!
マダダ、焦ルナ兄弟!チカラヲ合ワセテ、アノ技ヲ使エバ……タトエ、スター警察デモ、我々ノ敵デハナイ!!
ギアド兄弟は奇妙なセリフを呟きながら、それぞれ左右に体を傾けて変なポーズを取り、何かを始めようとしている
この悪党め、かかってこい!ナナミがいる限り、指揮官に手は出せないよ!
ほぼ同時に、双方は互いに向かって突進した。次の瞬間、鋼鉄が激しくぶつかる轟音が響き渡った
しかし、双方の動きは非常に緩やかだった。遠慮がちにしばらく戦ったあと、双方は元の位置に下がった
もう!ギアド兄弟の「全宇宙無敵パワー」はズルすぎるよ!弱点なんてひとつもないじゃん!
ちょっとスター警察の攻略ガイドを検索してみるね
……あった!この技を破るには、宇宙のミラクルラッキースターを装備しないといけないんだって!
ナナミはどこからか投影スクリーンを出してきて、真剣な顔で攻略を読み上げたあと、こちらを見た
宇宙のミラクルラッキースターって、指揮官のことじゃん!
だって今日は、指揮官のミラクルラッキーな日だもん
ナナミはそう言いながらこちらに近付くと、組み立てた武器を渡してきた
指揮官はしっかり握ってるだけでいいよ!
ナナミはそう言いながら背後に回り込んだ。次の瞬間、小さな力が自分の腰を優しく抱きしめるのを感じた
その直後、背後の機体のローラーが全速力で駆動し、ナナミに押されるように体が前方に飛び出した。耳元で、風が猛然と吹き抜ける音が鳴り響く
あとはナナミに任せて!!
一気に行くよ、指揮官!
辛うじて重剣を持ち上げる。ギアド兄弟はなんとか構えを取って防御しようとしたが、自分とナナミの「超速ビーム」によって防御が突破され、地面に倒れ込んだ
しかし、敵を倒してもナナミは止まることなく、そのまま真っ直ぐ加速し、厚い壁に向かって突進していく――
指揮官!目を閉じて――!!
――予想していた衝撃は訪れず、その代わりに優しい風が肌をなで、湿った水気が頬を掠めた
スピードが徐々に緩くなった。目を開けると、鳥のさえずりと花の香りが漂う森が目の前に広がっていた。午後の陽光が松林に射し込み、柔らかな暖かさを地面に落としていた
同時に、木の後ろから出てきたたくさんの小さな機械体が周りに集まってきた。後ろを振り返ると、巨大な壁の正体はホログラムだった
ふぅ……そうしてナナミは指揮官を無事救出し、ギアド兄弟を倒して、滅びる運命のVL426星系から脱出しましたとさ!大·勝·利·エンディング!
ナナミは両手を上げて、自分と小さな機械体たちの間に立つと、とびっきりの笑顔でカード騎士の勝利のポーズを取った
えへへ、ナナミとロハちゃんとマーチン……それとみんなが一緒に指揮官のために用意した『スター警察4001』初回限定公演だよ!
痛たたた……ナナミ、ちょっとは手加減しろ……
ナナミ、今日ノタメニ、ズット練習シテタ
みんなにとっても、ナナミにとっても、指揮官は超超超超~~~~大切な人だからね!
もうすぐ指揮官のお誕生日なんだよって言ったら、みんな超盛り上がっちゃって。で、指揮官に超絶刺激的なサプライズを用意しようって話になったの!
一番盛り上がってたのはナナミだぞ
んもう!今、監督がお話してるところでしょ!
とにかく、指揮官は楽しかった?
さっきナナミが指揮官に言ったセリフは、ナナミが本当に思ってることだからね!
指揮官は、銀河さえもキラキラと照らす「ミラクルラッキースター」なの!宇宙のどこかで困ったことがあったら、ナナミがすぐ駆けつけるからね!
ナナミはそう言いながらこちらの手を握ると、太陽に向かって高く持ち上げた
みんな、準備はできた?
オッケー!
指揮官――
ハッピーバースデー!!