Story Reader / 祝日シナリオ / 運命のサプライズデー / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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常羽と過ごす時間

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[player name]、どう?俺の秘密基地?

アジール号の車両基地の一区画で、少年は誇らしげな表情をしていた。親指を立てて、後ろのスペースを指差している

それほど広くはないが、自由に動き回ることができる。水道と電気も完備され、小さなクッション入りベッド、コーナーにはさまざまな資料が入った端末も備え付けられていた

空いたスペースには大小の箱が積まれていた。その中は食料から道具まで必需品がぎっしりと詰まっている。もし丸1年ここに閉じ込められても問題なさそうだった

秘密基地だよ、秘密基地って呼んでくれよな。避難所って、妙に不吉な響きがあるじゃん

今日の誕生日のために、アディレ商業連盟が祝いの席を設けてくれた

来客の多いパーティでは、貴族たちが人脈作りに躍起になっていた。このような社交の場にはあまり馴染めない。人の波にもまれている内に少し疲れてしまった

その時、常羽がどこからともなく現れ、ジャミラが呼んでいるからと苦痛でしかないパーティから連れ出してくれた。そして、ジャミラのところに行く代わりにここへ来たのだ

おい!どうしたよ、ボーッとしてるな?

アジールの貴族たちは年寄りの小狡いやつばっかりさ。やつらは言葉巧みに色々言って罠をしかけてくる。ったく、ああいうのとは話すだけで疲れるよ

……今の世の中、良心ある商人なんてひとりもいない。[player name]、こういう連中を相手にする時は、常に慎重にした方がいいぜ

よし、いい心がけだ。ちなみに、俺はそんじゃそこらの商人じゃない。やつらはそっちの金が欲しいだけ。でも俺は違う。そんな低俗なのは趣味じゃない……

勘弁しろよ、あの連中と一緒にすんの?あいつら全員、ただ金が欲しいだけの商人だぜ。でも俺は違う。そんな低俗なのは趣味じゃない……

指揮官の命を奪ってどーすんだよ。だいたい、指揮官の命を金に換算してみろって、どんだけ高くつくか

なぁ……今まで気付かなかったけど、[player name]って口八丁って言われない?

はは、もしいつか、口八丁なんて誰に言われたんだって訊かれても、俺って言わないでくれよ

指揮官のものを俺のものにしてどーするんだよ、口が増えてたくさん食べれるってか?

……悪くない。こうしよう、交渉だ。この金額と1日3食。どう、少しは心が動いたんじゃない?

もうひとつゼロ……

えぇ!?裏の意味はないよ、そんな変な目で見ないでくれって!

そういえば、さっきパーティであまり食べてなかったけど……

想像しただけで食欲が失せるなあ……

よっしゃ、何か食べるモンを作るよ。わざわざ来てもらったのに、腹ペコで帰らせるなんて俺の礼儀じゃねーや

ちょっとあそこに座って時間を潰してて。端末の中に電子書籍があるし、ヘッドホンで音楽も聴けるからさ。ターボかけるよ、すぐにできるから

常羽が指差したベッドに座って、端に置いてあった端末を開くと、履歴の上位は全て戯曲に関するものだった。ここで常羽がひとり、楽しんでいる姿が目に浮かんだ

戯曲フォルダをクリックして適当に見ていると、ふと、ある音声ファイルを見つけた

「111」と名付けられたそのファイルは、九龍風のファイル名が並ぶ中でひと際目立っていた

どうやら偶然にも自分の誕生日らしい。好奇心を抑えられず、ヘッドホンをつけてファイルをタップする

聞こえてきたのは常羽の戯曲だった。しかし、過去に彼が披露したものとどこか違う。常羽の歌はいつも完璧だ。しかし、これは練習中らしく、時々音も外れている……

内容もこれまでのものとはかなり違うようだ。これはもしかしたら常羽のオリジナルかもしれない。失礼だが完成度が低く感じるのは、制作途中だからなのだろうか

時折音程が外れたり、歌詞の内容に食い違いがあったり、どう聞いても優れた作品に思えない……だがなぜか魅力を感じ、何度も何度も繰り返し再生した

食事ができた、こっちで食べよ……って待って!なんでこれを聴いてんの!?

事態を把握する前に、頭からヘッドホンが外され、端末は強制的にシャットダウンされた

顔を上げると、常羽が珍しく慌てた様子で自分を見つめていた

こちらの呆気にとられた様子を見て、落ち着きを取り戻そうと常羽は2回深呼吸をした……それでもまだ興奮は冷めやらないらしい……

今日は指揮官の誕生日だから、指揮官のために歌おうと思ったんだ。でも、俺の知ってる戯曲は年寄りの歌ばっかりだ。今日の日にはふさわしくないだろ

だから自分で曲を作ろうとしたんだけど、曲を作るのは歌うより断然難しくて……曲調もうまくコントロールできないし、どうやっても満足するものにならない……

戯曲フォルダに興味を示すなんて思わなかったから、隠さなかったんだけどさ。どうして……よりによって指揮官が見つけるんだ……

これは宝物とは呼べないよ

よりによって……わかった、1万でコピーしていいよ

本当に払うのか!?

降参降参、あげるよ、金なんかいらない。俺からの誕生日プレゼントとして……こんなできそこないの戯曲でいいなら、プレゼント代も節約できるし、一挙両得だな……

ちょっと……大げさに笑うなよ。まるで俺が大損害を被ったみたいじゃん……

ただ、この曲は他の誰にも絶対に聞かせないと約束してくれよ。もし聞かせたら、精神的被害の損害賠償を起こして、家のドアをノックすることになる……

約束だぜ……

さぁ、飯だ飯。ほら、こっちだよ指揮官、主役は上座だ