全ての用が終わり控え室に戻って電気をつけると、そこはいつもと様子が異なっていた
ドアにはバースデーケーキのステッカーが貼られ、取っ手には小さなクラッカーがついていたが、音はしなかった
更に、以前バンビナータからもらった日記帳を机の上に置いていたはずのに、なくなっている
すぐにデスクの周囲を探すと、デスクの下にあの日記帳のページが1枚落ちていた。そこに見覚えのある筆跡があった
「私は日記帳です」
「日記帳が逃げました。手がかりを見つけた人だけが、私を捕まえることができます」
不可解に思いながら紙をひらひらと振ってみると、突然控え室の片隅から声がした
引き出しの……中
声のした方へ顔を向けると、小刻みに震える段ボール箱があった。まだ片付けていない荷物の山の中に置かれている
バンビナータじゃない、勘違いです
必死に笑いをこらえながら、バンビナータの指示通りに引き出しを開けた。中には紙があった――自分が書き留めた、ある記録だ
「今日は定期検査のために、バンビナータをスターオブライフに連れていく……今回はあまり痛くないといいな」
紙をめくると、裏にはかすれたスターオブライフのアイコンが描かれていた。そして、バンビナータが残した言葉もあった
「日記帳は、指揮官がいればもう痛くないと言っています」
コホン……
「段ボール箱」が再び動き、中の小さい妖精がわざとらしいヒントを出した
また日記帳が逃げました。今度は……冷蔵庫が怪しいです
冷蔵庫を開けると、水色の風船の束が「溢れ出し」た。紐の先に、人間が書いたと思しきとある記録が1枚ぶら下がっている
「今日、記念公園を通りかかったら、無料で風船を配っているロボットがいた。ひとつ受け取ってバンビナータにあげた。バネッサが目をむいていたのは気にしないでおこう」
風船……覚えていませんが、ご主人様は「誰かからの贈り物が気に入ったなら、ちゃんとありがとうと言っておけ」と言っていました
バンビナータ、気に入りました……
段ボール箱の中から心のこもった言葉がこぼれ出す。話し手は自分が「隠れている」設定をすっかり忘れているようだ
……!ヒントは、ありません。バンビナータは……本当にここにいません
数秒間の沈黙が流れて、結局、段ボール箱は弱々しい声で次のヒントを与えてくれた
あの……裏を見てください
実は、とっくに裏返していた――そこには水色の風船がいくつも描かれている。その下には、風船を持った灰色の人間が描かれていた
「ありがとう」
ありがとうの文字の後ろにインクが点々と付いている。書き手は少しためらいながらも、こう書き添えたようだ
「日記帳がありがとうと言いました」
「日記帳がまた逃げました。今度は箱の中」
ついにゴーサインが出たようだ。バンビナータが切り離した日記帳のページを手に持つと、すぐに隅の段ボール箱の方へと向かった
段ボール箱の揺れが次第にガタガタと激しくなった――人間の足音が近付くにつれ、ついに段ボールがポーンと立ち上がり、バンビナータの顔が現れた
サ、サプラーイズ!お誕生日おめでとうございます!
バンビナータは色とりどりの風船を抱えていた。それ以外にもさまざまな形の小箱、キャンドル、人形……おそらく、誕生日に関連する要素が彼女の周りに積み上げられていた
あの!指揮官……お誕生日おめでとうございます……以前、ご主人様から指揮官の誕生日を聞いて、バンビナータはそれを……日記の最初のページに書きました
質問してもいいですか……バンビナータは、指揮官の誕生日サプライズをちゃんとできましたか?指揮官は気に入ってくれましたか?
今日は指揮官の始まりの記念日でもあります。重要な日だったので、バンビナータは真剣に取り組みました
この風船をどうぞ。これも……あと指揮官の日記帳、お返しします……
これから、もっと見たいんです……バンビナータについての記録を。指揮官、いいですか?