バンジからメッセージをもらって、この公園で会うことになった
公園に到着するとすぐに背後から足音が聞こえてきて、トントンと肩を叩かれた
誕生日おめでとう、指揮官
君の誕生日を祝うのは初めてじゃないよ
公園のベンチでバンジは自分の隣に寄り添うように座ると、頭を傾けてこちらをじっと見つめてきた
でも、ふたりきりは初めてだね
バンジはうなずいた
静かな方が好きだ
去年の誕生日は大勢で祝ったから、君と全然話せなかったし
ふたりきりで過ごせる時間は貴重だよ
穏やかに微笑むバンジの髪の先から雫が垂れている。それは、彼がここまで慌てて来たことを物語っていた
そう
大丈夫だよ、信じられないなら触っていいよ
バンジは突然顔を近付けるとこちらの手を取り、バンジの頬にぴったりとあてがった
バイオニックスキンの感触が指先に伝わってくる。構造体独特の柔らかい肌触りだった
そして、少し火照っている感じもする
ほら、どこも問題ないでしょ?
言葉を返す前に彼は元のように座り直し、ポータブルバッグに手を伸ばした。しかしふと何かを思い出したのか、その視線が宙をさまよった
実は、ケーキを用意したんだけど……ちょっと心の準備がいるかもしれない
バンジはゆっくりとバッグから潰れた小さな箱を取り出した。箱を開けると当然、中のケーキも潰れている。だが細かい細工が施された美味しそうなケーキの面影は残っていた
今朝、買いに行ったんだ。でも緊急任務が入ってそのまま持って行ったら……この通り
前に休暇が同じだった時、ケーキショップに並んでいる君を見たんだ。でも君の番が回ってきた時には、もうケーキは売り切れてたみたいだった
バンジは何も言わず、ただ黙って顔を上げた
目覚ましで起きられれば大丈夫
淡い金色の瞳からこちらに熱い視線が注がれている。早起きは彼にとっては途方もない苦労だったはず、そのお返しに何か大きな「贈り物」を欲しているかのようだ
残業として数えてる徹夜以外なら、この1年で一番早く起きたことになるかな
お返しについては後でゆっくり考えるよ。とりあえず今は保留にしておこうかな……?もう崩れてるけど、ちゃんと食べられ……んっ!
箱に入っていた金属のスプーンでケーキをひと口分とって、バンジの口に押し込んだ。バンジがもぐもぐする様子を見ながら、自分もひと口味わってみた
どう?
ん……気に入った?じゃあ明日の朝、もう一度並んでちゃんとした形で買ってくるよ
誕生日の主役のためなら喜んで
バンジは唇についたクリームをペロリと舐め取ると、微笑みながら口を開いた
その前にもう一度……誕生日おめでとう、指揮官
次はもっと完璧な形で、僕の気持ちを贈るよ