Story Reader / 祝日シナリオ / 聖なる夜と星の海 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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星々のささやき

指揮官。任務の都合上、この付近で夜を明かすことになります。問題ありませんか?

では、リーとリーフと一緒にテントを設営しますね

……今回の遠征は長期戦ですからね。……柔らかいベッドは望むべくもありませんが、柔らかい枕なら私の膝枕でなんとか代替できないでしょうか?

ルシア、指揮官は冗談を仰ったんです。真面目に取り合うことはないですよ

冗談だったんですか?

それにしてもだいぶ冷え込んできましたね。今日はクリスマスイブでしょう?

そう言ってリーフは寂しそうに空を見上げた

今年のクリスマスも皆さんと一緒に過ごせると思っていたのに、少し残念です……

あちらこちらで問題が起きていますからね。皆、各地に派遣されていて、祝日を過ごしたくても準備の時間すら取れなかったでしょう

そうはいっても任務が何より大事ですからね……少し感傷的になってしまいました。指揮官、明日も頑張りましょう!

ええ、指揮官の言う通りです。頑張って任務をこなしていけば、来年はきっと皆一緒に過ごせますよ

先のことを考えるのは、まだ少し早いですよ

リー?

リーはいたずらっぽく微笑むと、プロジェクターを取り出した

これは指揮官とルシアとリーフ、それに僕自身のために用意したクリスマスプレゼントです

プレゼント……いつの間に……

1週間前にはもう用意していました。あなたたち、口で何にも言わなくても「クリスマスプレゼントが欲しい」って顔に書いてありますよ。特に指揮官

そういうことにしておきましょう

それでこそ、僕が時間をかけて準備した甲斐があるというもの

それで、プレゼントは何なんですか?

「皆」です

え……?

ルシアもリーフもその言葉の意味を理解できない。リーはそれ以上何も言わず、「乱数」を衛星に接続する権限を起動させた

リーは衛星から受信したデータをプロジェクターにインポートした

じゃ、接続しますよ~

おい!人の話を聞け!!

プロジェクターにカムイとクロムが現れた。画面の大部分がカムイの顔で埋まっており、クロムは後ろから彼を引き剥がそうと必死だ

画面を占領するなっ!

動作を確認してるんですよ~。やっほー、グレイレイヴン!見えてる?聞こえてる??

だから!リアルタイム通信じゃないって言っただろ!いや待て……もう始まってるんだった!カムイ、早く話せ!

えー、こういう時は隊の長が最初にしゃべるもんじゃない?

都合のいい時だけ隊長扱いか……え~、コホン……

クロムは疲れ切った顔をしていたが、すぐに姿勢を整え、真正面からカメラを見据えた

ストライクホーク隊長、クロムです

グレイレイヴンの皆さんが今、そのような任務に就かれているのかは存じませんが、もしクリスマスイブにこれをご覧になる時間があったのなら

任務は順調だということでしょう。もちろん、こちらも極めて順調です

色々なことがありましたが、皆が無事で今日までいられたことを、そしてこの先もおのおのの理想のために戦い続けられることを、心から嬉しく思っています

隊長、校長先生の挨拶じゃないんだからさ……

最低限の礼儀だろう……でなければ、何を話せというんだ?

そんなの、言わなくてもわかってるでしょ――

メリークリスマス、グレイレイヴン!今年は一緒に過ごせないけど、ちゃんとプレゼントは用意したからな!

空中庭園に戻ったら、他のやつも呼んでプレゼント交換しようぜ!なお俺が一番欲しいのは新型のゲーム機です!

……はあ、まったくお前は。まあ確かに、通信録画にも時間の制限がありますので

私もグレイレイヴンへのプレゼントをご用意するつもりです。互いに任務を完了させ、のちほど空中庭園でお会いしましょう

これって……

ストライクホークの通信を見終わったリーフは、少し驚いているようだ

ええ、僕のプレゼントは「皆」だと言ったでしょう

任務開始前にメールを送って、皆にお願いしておいたんです

続きを見ましょう

さすが指揮官、僕のプレゼントがなんだかすぐにわかってくださいましたね

ワタナベ

ワタナベだ……

思いもよらないプレゼントへの感激も冷めやらぬうちに、次の映像が流れ始めた。モニターに浮かび上がったのはワタナベだ

突然のことで何を話したらいいのかわからないが、まずは、メリークリスマス

ご覧の通り、私は今オブリビオンの基地にいる。地理的な理由からここは12月でもかなり暑い

そういうわけで、特にクリスマス気分というのもないんだが……そういえば先ほど子供たちが花をくれたな。少し早めのクリスマスプレゼントだとか言って

ほら、これだ……いや、こんな話をしてどうする……

ワタナベさん、勝手に始めちゃったんですか!?まだメイクが済んでないのに!

クソッ、もう戻ってきたのか!……おい、なんだその服は!?ふざけるな、そんなの絶対に着ないぞ!

皆で基地中ひっくり返して見つけた一番フォーマルな服ですよ!

お前たちの審美眼はどうなっている!?

ゴホン……見ての通り、私に化粧をしようする部下たちから逃げなければならなくなった

では、「メリークリスマス」の一言をもって、通信を終了させてもらおう

メリークリスマス!……おい待て、なんでガキどもまでいる!?お前ら!どう考えても遊んでいるだろう!?!?

……

……一体どんな服だったんでしょう

オブリビオンも楽しいクリスマスを過ごしているようですね

よし、次は俺らの番だな?

「次は」ってどういうこと?

ここに来るまで無駄に時間をかけちゃったから。アップロードの順番から見ても、私たちは一番じゃない

なるほどね。って「無駄に」ってなにさ。あんたたちがあれこれ準備するって言い出したんじゃない

ショーを披露する時間がなくなっちゃう

そうだな、だから準備が終わった時点でショーはやめることにした

……あんたたち、バカなの?

馬鹿と天才は紙一重、このコインの裏表みたいに……

あんたのコイン、どっちも表じゃない?

へん……取るに足らない蒲牢ごときが……

「取るに足らない」とは何事よ!あたしは取るに足りる蒲牢ですっ!

あ、時間が

ああ、ええ、ゴホン――

ちょっとちょっとちょっと!残り時間わずかよ!

クソッ、どうする!?どうすればいい!?

じゃあ、あとのは全部飛ばして、3、2、1、さんはい――

メリークリスマス!

……とんでもなくハチャメチャでしたね。ソフィアがいなかったらどうなっていたことやら

でも、とても楽しそうでした

ええ、それに「ショー」のことも気になります

指揮官に賛成です。今度是非観に行きましょう

そう言ってリーは次の通信に切り替えた

メリークリスマス、グレイレイヴン

グレイレイヴンの……ふん……メリークリスマス!

私たちのメッセージが何番目なのかはわかりませんが、すでにたくさんの祝福と挨拶を受け取られたことでしょう

ですから、私たちはこちらを用意しました……カレニーナが作ったプレゼントです

待っ……!ビアンカ!どこでそれを!?

あなたの部屋ですよ。扉を開けっ放しにするなんて、大胆ですね

だからって、勝手に持ち出すなよな!

ビアンカが持っているのはパズルだ。去年のクリスマスに、皆で一緒に完成させたパズル

ビアンカ、今すぐ返せ!

カレニーナの抗議を華麗にスルーしながら、ビアンカはパズルの背面に隠されていた手紙を取り出した

カレニーナ直筆の手紙です。直接お渡ししていてはタイミングを逸してしまいますので、ここで読み上げさせていただきますね

おい、ビアンカ……まさか、本当に読む気じゃ……え……

クソ、かくなるうえは……!

カレニーナ、その銃はなんです!?なぜカメラに向けるのですか!?

塵となって消え失せろ!!!

――

カメラが破壊されたんでしょうね……

怪我をしてなければいいんですが

ビアンカがいれば、大丈夫でしょう……多分

では、最後の通信です

これで最後です。特殊任務等で通信を録画できなかった人もいるんでしょう

またすぐ本人たちに会えますよ、指揮官

では、最後の通信です……

ゴホン、えー、私たちのメッセージがトリを飾るように、あの手この手でねじ込みました

我々がトリというのは、荷が勝ちすぎるのではないかね?

何を仰います!議長に技術部のボスに、それに可愛くて有能な皆のセリカさんもいるんですよ?

ふふ、やめてください、照れるじゃないですか。それで、誰が最初に話すんですか?

俺だな……

セリカの問いかけに背中を押されるようにして、アシモフがモニターの真正面に立った

グレイレイヴン指揮官、それからグレイレイヴンの諸君。君らは実に素晴らしいデータを、実にたくさん提供してくれた。これからも励んでくれよ

アシモフはカメラの前から消えた

え、待ってくださいよ!それだけ!?

行っちゃった……

まあアシモフらしいな。では続いて、私から話そう

いいえ、次は私の番です。ハセン議長は私たちの分まで話してしまいそうだもの!

え……そ、そうかな?

ふふ、セリカさん大勝利です!

グレイレイヴンの皆さんは今ここにいないけど、私たち、あなたたちのためにクスマスツリーを用意したのよ!

皆で手作業で飾りつけしたの

なるほど、道理でおかしな物ばかりぶら下がっているわけだ……グレイレイヴン専用のツリーだったからなんですね

おかしな物なんかひとつもないじゃない!

ゴホン、あー、君たち……ふたりで話してないで、カメラに向かって話しかけては?

そうでした……クリスマスツリーはあなたたちの部屋に置いておきましたから。戻ったら見に行ってくださいね

じゃあ最後にふたりでキメましょうか、セリカ!

メリークリスマス、グレイレイヴン!!!

…………私は?

以上でおしまいです

やや哀れでしたが、議長はそんなことを気にする方でもないでしょう

まさか……まさか、リーがこんなプレゼントを用意していたなんて……

グレイレヴンの一員として、皆さんに何かしたかったんです

それに、リーフがずっとクリスマスを祝いたいと思っていたのと同じで、僕もずっとこれをやってみたかった

リーの夢、だったんですか?

夢というほどではありませんが……ささやかな願い、ですかね

書名は失念してしまいましたが、科学の勉強中に読んだ本にこんなフレーズがありました

「あらゆる魂は天上に集められるもの。ゆえに、恐れる必要はない。我々はつながっているのだ」

僕はその言葉をかみ砕いて解釈し、実践したんです

メールを送って、一堂に集えない仲間たちに通信を録画してもらって――

そして、皆の想いと祝福が人工衛星に集まり、空間と時間を超えて今日、僕たちと再会したんです

それって……とてもロマンチックなことでしょう?

あの本なら指揮官も気に入ってくださると思います。今度お貸ししますよ

……そう面と向かって言われると照れくさいですね

4人は空を見上げた。瞬く星々の中に、「皆」の想いを内に抱えた衛星もあるのだ

皆思い思いに、衛星だと思う光を指さす

それが衛星なのか、ただの星なのか、そんなことはどうでもいい。皆は手を伸ばしたまま、自分が指さした光をずっと眺めていた

……雪です

見上げている空から、何の前触れもなく、粉雪は舞い降りてきた

皆、誰ともなしに口を開く

メリークリスマス、指揮官!