武蔵に腕を掴まれそうになったその刹那、太刀影が視界をよぎる。直後、凄まじい斬撃が武蔵を両断した
守ってくれたのは――自分が最初に取り逃がした、侵蝕体
思えば、最初からそうだった。揺るぎない決意が宿る、迷いのない目――
指揮官の目には、いまだに私が侵蝕体に見えているんですね
はい、指揮官。■■にご命令を
ルシア、かなり遠くまで逃走したんじゃなくて?なぜ今ここにいるのかしら?
他の皆と同じです。指揮官を救けにきただけ
……なんで単独行動しているのかって訊いてるのよ!!他の構造体と一緒に行動していれば……
合流してしまえば、最初と同じように侵蝕体として攻撃される可能性がありました
たとえ、指揮官以外は私を識別できるとしても、指揮官その人の認知にエラーがあるんです。攻撃指示が出ていたことでしょう
……こうやって、私と指揮官の関係を壊すことが、あなたの目的ですね
それが全てではないわ……でも、あなたがそんな風に言うってことが、私の計画の一部が実現したということの証明なのでなくて?
いいえ、まったく
大したエイプリルフールジョークね。今し方あなたに庇われた指揮官は、ついさっきまであなたを侵蝕体と認識し、容赦なく攻撃していたのよ
それに、あなたも見ていたでしょう。この指揮官は、最後の問題を前にためらった
こんな人が、本当にあなたの守護と信頼に値するのかしら?
侵蝕体と見なされ、どんな言葉も指揮官に届かなかった時
指揮官が認識エラーを起こしてるなどとは夢にも思わなかった私の意識海には、強烈な揺れが起こりました
それなら……
ですが、徹頭徹尾変わらないことがある
指揮官の目にどう映ろうと構わない。私がやるべきことは最初からひとつしかないんです
それは、指揮官の刃であり続けること
ッ!この……!!
いよいよ、あなた直々にお相手いただけるんですかね?
……どうして。なぜ、あなた方は普通に動いているの?
ここに侵入する前に、周囲に埋め込んであったコネクトシステム関連の制御装置を全て切ったからですよ。……ハッピーエイプリルフール、ヴィラ
チッ……
このケルベロスのクソ野郎、ただで済むと思うなよッ!
いくら優遇される部隊の隊長だとしても、度がすぎましたね……それなりの罰を受けていただきましょう
……退くしかなさそうね
おい!逃げる気かよ!
ええ、逃げる時はしっかり逃げさせていただくわ。なにせ、ひとりでは「ケルベロス」と言えませんものね
この揺れ……こいつまさか、ここをまるごと爆破する気か!?
エイプリルフールのお楽しみは、これでおしまい。次に会った時は決着をつけましょう。グレイレイヴン、それからオマケの皆様方……