Story Reader / Affection / セレーナ·希声·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

セレーナ·希声·その1

>

セレーナ

記録しておくべき5つのこと――5本の指が、彼方の記憶への道標となる

彼女//<セレーナ>はとても長い間、眠っていた

セレーナ

1つ目――あなたがいなくなるとこの世界は消滅し、他の世界も消えてなくなる

孤独なアヤメ//<セレーナ>が地面に咲く

セレーナ

2つ目――私が何を探していようとも、真に探し求めているのはあなた

遠い星、特異点から熱的死、星をまたぎ、太陽と銀河を超え、宇宙の時間と空間を超えて、彼女らの光は互いに照らし合い、ついには対面する

セレーナ

あなたですか……

セレーナ

3つ目――……なぜ3まで数えることを学ぶ必要があるのでしょう?

虚ろな歌声が、彼女//<セレーナ>の宇宙に響き渡る

セレーナ

4つ目――麦畑が燃えている

彷徨うクジラ//<セレーナ>が星の海に漂う

セレーナ

5つ目――この指は……あなた

あなた//<コンダクター>の象徴であり、私//<セレーナ>の象徴でもある

彼女//<セレーナ>は深い眠りから突然目を覚ました

星々の下で、山のように巨大な躯体が水面から飛び出し、空中で三日月のような弧を描いた――

??

――▃――▅▁――▂

彼女//<セレーナ>は、星空の下でクジラの歌声を聞いた

ガハッ……

セレーナは倒れた石柱に寄りかかりながら、微かな朝の光の中で目を覚ました

意識海……

目覚めたあと、セレーナはいつものように意識海の状態を確認した。だが、相変わらず今日もあまりいい状態とはいえなかった

……

彼女は思わず小さなため息を漏らした

褐色の地で、慈悲者と名乗る代行者が、彼女の損傷した機体に残ったパニシング異重合物や異重合コアの破片を取り除き、赤潮を利用して機体を再構築してくれた

彼女にとって、それらの施しはすでに「奇跡」に値することだったが……あの代行者でも、彼女の全ての苦難を取り除くことはできなかった

長い時間、異重合コアと接触したせいで、彼女の意識海は崩壊寸前だった。慈悲者が彼女の意識海をある程度安定させたが、バラバラになった記憶を取り戻すことはできなかった

意識海を安定させるため、そして失われた記憶を取り戻すため、セレーナはひとりで地上を旅しながら過去の詩をたどっていた

短い回想が終わる頃、ようやく意識海が少し安定した。セレーナは再び目を開けて、再構築された自分の機体を見つめた

あなたの意識海の損傷はあまりにも深刻で……私ができるのはここまでです

赤潮で構築された機体……「授格者」も悪くないでしょう?

フードを被ったピンク髪の女性は意味深な微笑を浮かべた

感謝いたします……

雪原をひとりで旅していた少女は、偶然にもあの慈悲深い代行者と再会した

礼など不要です。私は新たな可能性を検証しているだけですから

それなら……私は一体……

……その時が来ればわかります

全てが終われば、私はあなたを探し出し、あなたの側にいますから

……

覚えておいてください。あなたの意識海とあなたのコアは連動しています。あなたのコアの輝きが曇れば、あなたの意識海はより危険な状態になります

私ができるのはここまでです。ここから先のことは……あなた自身で対処するしかありません

……ふぅ。

今日も、青色のコアの輝きはまだ弱いままだった

まだまだ長い道のりのようですね……

彼女は少し落ち込んだ口調でそう言ったが、決して絶望したわけではなかった

こんな朝を何度も迎えた彼女は、すでにこの困難を受け入れていた。失われた記憶を探し求めて、孤独なクジラが深い海で鳴いている

セレーナは荒れ果てた小さな町を歩いて抜けた。その時、前方でパニシングが活動する「音」を「聞いた」

この先で何か見つかるかも……そんな期待を抱きながら、彼女はマントをしっかりと引き寄せ、降りしきる雪の中を懸命に歩いた

しかし……また空振りに終わった

つい先ほどまで強い反応があった場所には何もなく、ただ真っ白な雪に覆われていた

また同じ……

目を覚まして以来、同じ「光景」を何度も繰り返している

時間の流れが混沌としている。まるで過去と現在が入り乱れているように、彼女には時々、ここにはないはずの音が聞こえてくる

この音も、恐らく別の時間の物語のものですね……

彼女は雪に触れながら、寂しそうに呟いた

真上に昇った太陽が雪原に陽光を注ぎ、枯れ枝の間から黄金の光が降りてくる。滅多にない陽だまりの中で、疲れ果てた旅人の心が少し癒された

流浪の旅人は束の間の休息を楽しむことにした。今だけは、探求の旅から解放される

あ、そうだ、手紙……

突然思い出したように、セレーナは慎重に服の中から黄ばんだ手紙を取り出した

何回も読み返したせいで、古びた手紙の折れ目は脆くなり、少しでも引っ張ると破れてしまいそうだ。それでも彼女はこの手紙を大切に保管していた

「アイリス……」

「初めまして、手紙をもらって嬉しかった。私の名前は……」

そこに書かれている言葉を一字一句、完璧に覚えている。しかし、セレーナはそれを丁寧に読み上げた

意識海が不安定なせいで、この手紙をいつ「受け取った」のか、そして、いつ記憶から一字一句写し取ったのかもわからなかった

このアイリスに宛てた手紙は誰が書いたものなのだろうか?アイリスとは……自分のことなのだろうか?

彼女は微かにこの手紙と自身との繋がりと感じていた。温かい言葉を読む度に、焼かれて粉々になった意識海が落ち着きを取り戻すのだ

文章の中に描かれる景色は、彼女に記憶の断片を思い出させる。その光景はおぼろげでも、そこにある幸せははっきりと感じ取ることができた

手紙を送った人は……「返事」を待っているのでしょうか

黄ばんだ手紙をそっと胸に押し当て、アヤメ色の瞳の少女は澄んだ空を見上げた

じゃあ……

あまりにも暖かい陽光のせいか、それともこの瞬間があまりにも穏やかなせいか、少女の意識海は久しぶりに安らぎを得た

放浪の旅人は懐から傷だらけの万年筆を取り出し、1冊の手帳を開いた。そして、届くことのないであろう返信を書き始めた

親愛なる[player name]……

この返信があなたの手に届くことは永遠にないかもしれません。それでも、私は敢えてこれを書き残すことにしました。

どのような場所にいるのか、どこに向かえばいいのかもわかりません。

ただ前へと進み、詩に刻まれた時を追っています。

いつか……いつかきっと、私たちが再会する日は訪れます……

でも、今はまだ……少し時間をください。私は必ず……

柔らかな期待を胸に、彼女は地平線を見つめた

雪原から山の頂へ、そして川に沿って進み続けた

私は冬を越え、春へ夏へと歩み続けます。

風の音に耳を傾けると、私の進むべき道を示してくれるのです。

千の薔薇園を越え、千の河を越えてきました。

再会の時は、優雅に空を舞う白い鳩のように、あなたの肩にそっと舞い降りましょう。

今日もまた知らない場所へたどり着きました。

緑の丘からは川のせせらぎが聞こえ、深い谷にはバイオリンの音がよく響きそうです。

低く響く滝の流れを聞けば、私も一曲奏でたくなってしまって。

観客も、舞台も、カーテンコールも、拍手もありませんでしたが……

ただ、自分が満足するまで弾きました。

楽器を片付けていると、雀が青い琥珀を運んできたのです。

樹脂に包まれていたそれは、見たこともない花でした。

しばらく眺めてから、その小さな宝石を地面へと置きました。

語らずとも伝わることを願って。

誰かが拾ってくれることを期待しています。

そして願わくば……私のような旅人に、

私が見た景色と同じ景色が映らんことを。

最後の文字を書き終えると、彼女は丁寧に締めくくりの丸を打った

昔の彼女ならペンを置いたあと、言葉遣いが適切かどうか、何気なく書いた言葉が誤解を招かないかどうか悩んだだろう

しかし、今の彼女にはそんな悩みは浮かばなかった

……[player name]

少女は丁寧に手帳を胸に抱き、手紙の差出人の名前を何度も呟いて、この感情を再び心の中にしまい込んだ

意識海は相変わらず不安定で、青色のコアは濁ったままだった

時の流れは依然として無秩序で混乱し、パニシングが織りなす旋律も同じように交錯していた

しかし、これらの手紙がある限り、彼女は意識海が焼かれて灰になる前に、自分の存在を取り戻すことができると確信している

この旅路がどれだけ長くても……

白い鳩はいつかあなたの肩に舞い降ります

深呼吸をし、彼女は新たに決意を固めて、太陽の昇る方角へ向かって再び旅を始めた

82号都市は……ここでしょうか?

長い旅路の果てに、彼女は風の音に導かれて、すでに崩壊した都市にたどり着いた

旅の途中で出会った旅人や通りすがりの人々は皆、彼女に忠告した。パニシング爆発初期に滅びたとされる小さな町を探すのはやめるべきだと

ここには何も残されておらず、一見して懐かしむものはないように見えた

しかし、それはあくまで「一般の人」の目から見た場合のこと

……赤潮の声が聞こえる

長い髪の少女は膝をつき、地面に手を触れた。残っていた赤潮が小さく波打ちながら引いていった

赤潮で「構築」された機体は、当然のように赤潮の声を「聞く」ことができる

彼らが最後に残した言葉を誰も聞くことができないのなら、この全てを後世に残すのは彼女しかいない

記録:82号都市

彼女は廃墟の中に足を踏み入れ、再び手帳を広げた

パニシングに吞み込まれた砂漠の中の都市。ここは赤潮に囲まれている

赤潮の声を聞く前に、目の前の光景を記録する。それが彼女の習慣だ。断片的な文章が記憶に繋がり、より確かな過去へと導いてくれる

簡単に記録したあと、彼女は手帳を閉じて身を屈めた

あなたたちの声を聞かせて……

セレーナが手の平を地面に近付けると、青色のコアから微かな光が放たれた。廃墟の中で、糸が絡み合うような格子状の映像がゆっくりと現れる

遥か昔の幻影の中、この街は活気に溢れていた

どうやらパニシング爆発初期、少なくとも赤潮が襲ってくるまでは、ここには大きな被害はなかったようだ

広場のような場所に人が集まっていた

皆、聞いてくれ。全員が生き残るためには協力しなければならない

世界政府はアルカディア·グレート·エスケープを始めると言っている。全員を空中庭園に連れていくと……だが、全員が行けるはずなんかない!

誰がいつ不測の事態に遭遇するかわからない。残された仲間は皆で面倒を見るべきだ

全員のため、そして俺ら自身のために提案がある。我々がこれまでに集めてきた物資を平等に分け、老人や子供たち全員が食事を摂れるようにしよう

我々は絶対に負けない。この「戦争」を全員で生き残るんだ!

よく言った!賛成!

赤潮の記憶はここで途切れた。幻影が消えるとともに、騒がしい人々の声も消え去っていった

彼女の気持ちは少し楽になった。この町は災難に滅ぼされたわけではなかったのだ。このあと、何かしらの問題が起きて、やむを得ず撤退せざるを得なかったのだろう

楽観的な推測を胸にセレーナは歩み続けた。周辺の景色が猛スピードで移り変わり、幻影の中の時間も変化した

小さな町は少し寂しげで、時間は数カ月先に進んだようだった

協定から抜けたいんだ……

これは皆で決めたことだし、俺が勝手なことを言っているのもわかってる

でも、もし……万が一、グレート·エスケープに間に合うのなら……

男性は言葉に詰まった。すると、ずっと黙り込んでいたもうひとりの住人は感情を抑えきれず、ついに声を荒げた

グレート·エスケープなんて大嘘に決まってるだろ!

でも、俺は空中庭園への招待状を手に入れたんだ!

群衆は一斉に口を閉じ、周囲に響くのはうなだれた住人たちのため息だけだった

俺のために、兄さんが命と引き換えにこの招待状を手に入れたんだ……俺は……

俺はただ自分が生きられたら、それでいい!大義名分を掲げて全員で生き延びようなんて、そんな偽善はもうたくさんだ!皆だって、そうだろ?……俺は悪くないよな!?

許してくれ……頼む、俺を行かせてくれ……

泣きながら叫ぶ声が、砕け散る幻影とともに浮かび上がり、消えていった。冷たい風が廃墟の間を通りすぎていく

……アルカディア·グレート·エスケープ

知らないはずなのに、どこか馴染みのある言葉が舌の上を滑ると、何かの記憶が蘇る感じがした

いいか、死の運命を押しつけられ見捨てられた者が、故郷から逃げ出す臆病者たちを祝福?なんだそりゃ、新しい時代の喜劇か何かか?これ以上の侮辱がこの世にあると思うか?

空中庭園で生まれ、無菌室で甘やかされてきたからこそ、あんな「喜劇」が書けるんだよ

よく聞いておけ、君のオペラは滑稽で、この世には存在しない事柄を書いた珍妙な喜劇だ。君が描いた全ては絵空事だ……

俺のために、兄さんが命と引き換えにこの招待状を手に入れたんだ……俺は……

次々と押し寄せる記憶の断片が、彼女の意識海を焼き尽くそうとする。しかし「記録者」として、彼女は最後まで見届けなければならない

少女は急いで前に進んだ。荒廃した広場には、もはや元の図柄もわからないほどに色褪せた旗が掲げられていた

幻影の時間は、更に先へと進んでいった

グレート·エスケープなんて……ははは……大嘘だったな!

確かにあの時、ここを離れた者もいたが……

そうさ。抽選、くじ引き、更にコネ!結局どうなった?この町から出ていったやつは、10人もいないじゃないか!

広場は静まり返り、まるで全員がこの結末を予期していたかのようだった

率直に言うぞ。この町はこれ以上、重荷に耐えられない

全員の生活を保障する?聞こえはいいが、現実はどうだ?平等で公平な分配協定は、結局全員が満足に食べられない状況を生んでいるだけだ

ここに留まっていたって、この悲惨な戦いがいつ終わるか誰にもわからないんだ!

もうこんなに長い時間が経ったんだ……こんなに長い時間がな!

男性の目は血走り、飢えが頬を深く窪ませていた

よく考えてみろ。もしある日、侵蝕体の群れが襲ってきた時に、戦えるやつが皆空腹で動けなかったら……

幻影の中で人々の声が入り混じっていた。演壇の上の男性は、広場の群衆に向かって大きく腕を広げ、扇動するように語りかけていた

この狂気じみた熱狂は尋常ではなかった。セレーナは本能的に、小さな町が崩壊する直前の危険な狂宴だと悟った

危機はもう目の前に迫ってるんだ!俺らは真剣に考えるべきだ。この町にとって本当に有益な決断とは何なのかを!

男性の演説は続き、群衆はますます熱狂の渦に巻き込まれていった。誰もが、この熱狂を最高潮に押し上げる次の言葉を待ち望んでいた

強者しか価値を生み出せないのなら、強者だけに生き残る権利がある!

違います……

彼女の理性がこの演説の結末を告げていた。この状況を止める術はないとわかっていても、口にせずにはいられなかった

当然、時空を超えた声が裁きの槌を止めることはできなかった。幻影の中の男性は腕を振り下ろし、町の運命を決める宣言を叫んだ

今から、子供と老人を町から追放する!

戦力となり、この町を守れる者だけが、ここに留まる資格がある!