Story Reader / Affection / ブリギット·輝炎·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ブリギット·輝炎·その2

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綿あめ、クレープ、チーズブリュレ――

スイーツや軽食、なんでもありますよ。いかがですか――

会場に入ると、教育区全体がお祭り仕様になっていた。黄金時代のオープンキャンパスを模した祭りの装飾がいたるところに施され、とても賑やかだ

通りには学生たちの手による屋台がところ狭しと並んでいる。このためにわざわざ休暇を取って訪れた保護者も多くいるようだ

よく見ると、中には普段の仕事で顔を合わせる知り合いもたくさんいる。この祭りの人気ぶりが窺える

綿あめ、ふわふわの美味しい綿あめ――おひとついかがですか――

数歩も歩かぬ内に、呼び込みの生徒に声をかけられた

綿あめよ!

懐かしいなあ、もう何年も食べてないわ

ブリギットは郷愁に満ちた声でそう言いながら、こちらに視線を向けた

[player name]、綿あめを食べたことある?

せっかくだし、食べてみましょうよ。甘い物は人を幸せにするし、楽しいことには笑顔がつきものよ!

ぜひ食べてみてほしいわ

ひとつお願い

はい、ありがとうございます~

だって私は構造体だし……食べる必要は……ないから

とってつけたような下手な言い訳だった。ましてや、ブリギットの不自然な口調ではなおさらだ

はい!

[player name]……

じゃあ、遠慮なく!

ほどなくして、屋台の学生が綿あめをふたつ差し出してきた

普段見ることのない、雲のような外見の食べ物。甘い香りが鼻先をくすぐる。手に持つと確かに「お祭りに来た」というワクワク感が湧いてきた

ブリギットは手に持った綿あめをひと口齧った

記憶の通りの味だわ

小さい頃に綿あめを食べた時は食べ終わるのがもったいなくて、ちょっとずつちびちび食べてたなあ。結局、午後になって街を歩き終わる頃には……

いつの間にか溶けてなくなってたけど

その時、「ああ、こんなことならもっと早く食べればよかった」って、後悔したのよね

ブリギットが穏やかに幼少期の失敗談を語るのを聞きながら、自分の手に持っている白い綿あめの端を少し齧った

砂糖の糸が口の中でほどけ、強烈な甘さが口いっぱいに広がる

混ざり物のない砂糖のみで作られたカロリーの塊は、飾り気がなく素朴で純粋な味がした

すごく?

ハハハ、やっぱり指揮官はこういう甘ったるい食べ物に慣れてないのね

ハハ、指揮官の味覚って意外と子供っぽいのね

でも、綿あめをたくさん食べると喉が乾くの

ちょっとここで待ってて、あそこで水を買ってくるわ……

――あ!

振り返ったところで、彼女の笑顔が瞬時に固まった

彼女は体を硬直させたままゆっくりと自分の隣に戻ってくると、誰にも聞こえないような小さな声でコソッと短く告げてきた

前方に立ってる3人、うちの隊員

アイスクリームの屋台の前。「高壁」「コルサック」、それから「トカゲ」よ

綿あめを食べてるフリを維持しつつ顔を隠し、8時方向に撤退

作戦開始!

ちょっとだけ我慢!安全な場所に着いたら、いくらでも買ってあげるから!

……

私の指示に従って。右足を上げて、噴水の方へ前進

しかし、人生とは思い通りにならないことが多いものだ。ふたりはすぐに、一番見つかりたくない相手に見つかってしまった

ああっ!グレイレイヴン指揮官じゃありませんか。あなたも教育区のお祭りにいらしてたんですね

「高壁」はその名の通り、非常に背が高く、声も大きかった

これで聞こえないフリをするのは無理がある

「高壁」は片手にアイスクリーム、もう片方の手にはアイスに刺さっていたであろう「甘」と書かれた小さな旗を持ち――すたすたと近寄ってきた

視界の端で周囲を確認すると、ブリギットはサッと自分の背後に身を隠し、こちらに背を向けた

その手に持ってるのは……綿あめ!?

どこで買ったんですか、教えていただけますか?

ありがとうございます。まさか、グレイレイヴン指揮官も甘党だったとは……

「高壁」が話し終わる前に、「コルサック」がすぐに話を遮った

おい、勝手に決めつけるなんて失礼じゃないか。[player name]さんは塩党かもしれないだろう?

「高壁」の隣にいた「コルサック」は、片手に塩をまぶしたフライドポテトを持っていた。もう片方の手にある小さな旗には――「塩」という文字が書かれている

お前も人のこといえないぞ。普通の人は甘いものも塩辛いものも両方食べるんだ。お前たちみたいに極端じゃない

そう言って「トカゲ」は右手に持ったフランクフルトに、左手のアイスクリームをつけてひと口齧った

それを見た「高壁」と「コルサック」は、あからさまに半歩後退し、怪訝な顔をした

そんな食べ方こそ普通じゃないだろ!

いいえ、別に!

確かに仲はいい

あれっ?

振り返らなくとも、ブリギットの体が一瞬硬直したのを感じた

[player name]さんの後ろにいるのって……

!!!

だが、それよりも「コルサック」が素早く動き、瞬時に「高壁」の口を塞いだ

「コルサック」の顔に冷却液が見えたような気がした

気のせいだ![player name]さんの後ろには誰もいないぞ!

「高壁」、綿あめが食べたいんだったよな?行くぞ

そう言いながらふたりは「高壁」の腕を引っぱり、立ち去っていった

3人が完全に人混みに消えてから、ようやくブリギットが隠れていたこちらの後ろから身を出した

サイアク、私だって絶対にバレてたわね

あなたと一緒だからよ

多少なりとも、あなたに関するデマもあるから……

もし私と一緒にいるところを見られて、誰かに変な噂を流されでもしたら……

これ以上あなたに変な噂が立ってほしくないもの。私のせいで指揮官の評判に傷がついたら、申し訳ないわ

よし、決めた。明日は1日、私がじきじきに「高壁」たちを特訓するわ!