Story Reader / Affection / ドールベア·解源·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ドールベア·解源·その5

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2体の機械体は正面堂々、大きな扉を蹴り開けた。すると、騒がしい音が響いてきた

レイジウェーブ

ここに来るたぁいい度胸だな、サンダースパーク!

今日は、お前たちを倒すために戻ってきたんだ!アビスレイジウェーブ!

レイジウェーブ

おい、まさかそいつはグレイレイヴン指揮官!?な、なんてヤツを連れてきやがった!クソッ!

あら、知らなかった?この前の楽園祭で、あなたはコンステリアの有名人に仲間入りしたのよ

ドールベアはこちらに向かってウィンクし、口を出すなとジェスチャーしてくると、慣れた手つきで争い合う機械体たちを離れさせた

レイジウェーブ

……そっちは練習場も失くしてる、今さら何を賭けてバトルしようってんだよ!?

そうね……今回はグレイレイヴン指揮官を賭けるのはどう?

担保は効果絶大な宣伝費……どう?こちらはあの有名なグレイレイヴン指揮官よ!

レイジウェーブ

悪くねぇ……

よし!話に乗ってやる!ただし、テーマはこっちが決めるぜ。今回のバトルも「MIX」だ!

レイジウェーブと呼ばれる機械体は、ガハハハハと大きく笑った

――望むところ!

キスクが口を挟む間もなく、ドールベアが代わりに応じた

決まりでは、双方に一定の準備時間がある

観客をよそに、「アビスレイジウェーブ」は自信満々で録音室に入っていった。キスクも自分とドールベアを連れて「サンダースパーク」の部屋に入る

うっ――今回はドラマーどころか、ちゃんとした編成のバンドすら組めない……

やはり無茶だった……リズム画家になるしかないのか……

あなたの自信って、灰よりも脆いのね……

彼女は落ち着いた様子で座ると、ちょっとぎこちない様子で楽器のキーボードのボタンをいくつか押していった

よし。じゃあ邪魔しないで、あっちへ行っておいて

彼女は魔法陣を展開するようにして同時に3つの端末のバーチャルモニターを開くと、両手を素早くモニターに叩きつけ、変わった和音を奏でた

こ、これは……

いえ、何も。ただただ凄いなと感心してしまいまして

作業モードに入ったドールベアは怖いほどに集中している。彼女は完全にモニターのコードの波に没頭しており、外界の音は何も聞こえないようだ

あのう……彼女にガソリンカクテルを1杯奢ると言ったら、喜んでくれるでしょうか?

どう考えても、ドールベアはそんなヘンテコな味のものを好んで飲むタイプではない

狭い録音室で、あっという間に時間がすぎていった

しばらくすると、レイジウェーブが「ガンガン」と乱暴にドアを叩いてきた

レイジウェーブ

おい――サンダースパーク!準備はいいか?

バッチリよ

彼女は端末からストレージを取り外し、こちらに向かってまたもやウィンクすると、機械体に続いて外に出た

レイジウェーブ

ここは俺たちのフィールドだ。決まり通り、俺たちが先攻だぜ

そう言って、彼は自信満々に手に持っているストレージをプレイヤーに差し込んだ

すぐに騒々しい音がプレイヤーから流れ出す。ドラムの速いビートと弦の響きが、地下のライブハウスの雰囲気を一気に高揚させた

アビスレイジウェーブはますます強くなっている……こんなにも長いMIX、そして広い音域、なんてことだ……

もうダメだ、もう私たちは終わりだ……

待ってってば、あなたの自信ってホントに灰より脆いのね

全て私に任せてって言ってるでしょ

再生が終わった。レイジウェーブは得意満面といった顔でキスクを見ている

レイジウェーブ

おい、これでもまだ演奏する気か?今すぐグレイレイヴン指揮官に、アビスレイジウェーブの次のライブの宣伝をしてもらった方が時間の節約だぜ?

クッ!

慌てないで、私……あっ、私たちサンダースパークの作品はこれからよ

ピンクの髪の構造体は怪しげな笑みを見せ、プレイヤーに近付いた

この言葉はすでに手遅れだった。ドールベアは怪しい笑みを浮かべながら、ストレージをプレイヤーに差し込んだ

指揮官渾身の――名曲MIXよ!

スピーカーから流れてきたのは――当然というべきか、聞き慣れた自分の声だった

え?違うわ。これは仕事じゃなくて、単なる小さな合成プログラム

分解、合成、再構築

音を分解し、合成し、新しい曲として組み合わせる!?

誰が予想できただろうか。こんな短時間で、ドールベアは指揮官が「歌った」曲を完成させてしまったのだ

うわあ――!

なんてことだ、さすがグレイレイヴン指揮官!今度は、ぜひ私たちのボーカルに!

結局のところ、その曲は満場の歓声の中で終わりを迎えた

レイジウェーブ

くっ、グレイレイヴン指揮官が自ら歌った曲を持ってくるとはな!

で、でも、アビスレイジウェーブの方がグレイトだ!お前らの曲は長さも音域も、俺たちの足下にも及ばな……

この曲だけだって、誰が言ったの?

レイジウェーブ

な、何ィ!?

お次はこれ!

勝利を確信したように、ドールベアは別の曲を再生した

高らかな歌声が空へと昇り、重く低い音が足下を包む。これほど滑らかで調和の取れた曲は聴いたことがない

ありとあらゆるジャンルの音楽を取り入れ、完全に異なる曲を完璧に乗りこなしていく。そのハーモニーに、全ての機械体が夢中になって耳を傾けた

その曲の再生が終わった時、勝敗が決していた

レイジウェーブ

バカな、サンダースパークに、こんな芸当が……

チート行為だ!これは絶対にチートだ!

はい?その証拠は?

レイジウェーブ

この高音の部分、そしてここ……どれも演奏は不可能なリズムのはずだ!

絶対、何かの加工技術を使ってやがる!

あら?あなたたちは一切、そういった技術を使わなかったの?

レイジウェーブ

お、俺たちは……

機械体は噓をつけない

ドールベアは次々と、彼らがアルゴリズムを用いて演奏した部分を指摘していった。やがて、レイジウェーブはがっくりとうなだれた

レイジウェーブ

確かに、俺たちは……アルゴリズムを使ってた

構造体のガキ……いや、お嬢さん、できるならそのプログラムを売っちゃくれないだろうか?

ごめんね、それは無理な相談なの

彼女はモニターを数回タップして、先ほど書いたその「小さなプログラム」を素早くゴミ箱に入れてしまった

とにかく――あなたたちの負け

はい、サンダースパークのコレクションはどこ?返してあげて

しぶしぶアビスレイジウェーブは負けを認め、サンダースパークのコレクションを返して練習場を明け渡すと、トボトボと練習場を後にした

あなた、怒ってないの?

指揮官の声で合成したあの曲、いいの?

怒るもんか、怒るほどのことじゃない

さすがは天才技術者だ。こんな短時間でここまで精密なアルゴリズムを作れるなんて

もっとすごいこともできるんだけど?

ピンクの髪の構造体は気怠げに、でも笑顔を浮かべていた

――あった!これです!よかったぁ、まだ売られてなくて!

キスクは物置からワイヤレスヘッドホンを慎重に取り出し、恭しく運んできた

約束した金額をそのまま、そちらの口座に振り込んでおくわ

彼女は慎重にヘッドホンを受け取ると、状態をチェックした

うわ……本当に美品ね。こんなのは、ここでしか見つけられない

こちらはさっき約束した、追加の「報酬」です。サムズちゃんに頼んだら交換してくれました

機械体は謎のボックスを取り出してドールベアに手渡した。そして、更にカチカチと音を立てながら別の物を取り出してきた

それと……こちらは、あなたに受け取っていただきたいお礼です。私が提供できるものは、あなたの労力と交換できるほど価値があるとは思えないので……

別のコレクションからこれを見つけました。優しい構造体のお嬢さん、あなたならたぶん興味がおありかと

これは……

黄金時代よりも更に以前の品で、セルバンテスと一緒に地上を旅した時に私が見つけたものです

頑張って修復しました。あと、それに合った箱も見つけておきました

プレゼントします、優しい構造体のお嬢さん

サンダースパークを助けたお礼として、どうか受け取ってください。今日がもっと素敵な一日になりますように