Story Reader / Affection / ノクティス·撃砕·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ノクティス·撃砕·その6

β20エキスを2杯と……

そうか、お玉2杯だとグラス満タンになっちまうな

まだ何も入れてないからセーフだったぜ。戻してやり直しだ

早朝、自分とノクティスはラタトゥイユに来ていた

マスターの到着を待つ間、ノクティスはもう一度、開発した料理を作ろうと提案してきた。それで自分も、改良したレシピに従ってドリンクを作り始めた

ただ、調整段階でノクティスが味見をしたいと言い出して……

おう……

あっ!俺の土豆餅!

ノクティスが風のようにカーテンの向こうへ消えると、厨房の中からガチャンガチャンという激しい音が聞こえてきた

すぐに、傑作を持ったノクティスがカウンターへとやってきた

芳ばしい香りが鼻をくすぐる。先ほど適当に済ませた朝食が、帳消しになった

指揮官、食べてみてくれよ

こちらも最終段階に入る

規定のエキスを加えてしっかり混ぜると、改良ドリンク――ベジタブルストームの完成だ

乾杯

小さな乾杯の音頭とともに、グラスをカチンと鳴らす

朝っぱらから、お前らなにしてんだ

マスターは目をこすりながら、ラタトゥイユの扉を開けた。普段、この時間の店には誰もいない

マスターはテーブルの表面をスッとなでて、天井を見上げた

数日前の大乱闘で割れたランプは、新しいランプシェードに一新されていた

昨日、指揮官と街で買ってきておいた。悪ぃけど同じ色のがなくてな……似た色のを買ってきたんだ

前のやつ、まだ使えたんじゃないのか?

シークスの野郎が、気分悪いってよ。乱闘ん時の破片が落ちてきて、豪勢な晩メシに入っちまいそうだからって

マスターは軽く返事をして、それ以上は訊かなかった。そしてカウンターへやってきて、超ド級土豆餅とベジタブルストームをまじまじと見つめた

マスターは頷くと、ノクティスの意見を待たずに、まるで火の中から栗を拾うような素早さで土豆餅を口に放り込んだ。続いてドリンクをひったくろうとしたところで……

おい、これは指揮官が俺に作ったんだ。そこにあるから、飲みたいんなら自分で注げよ

マスターは珍しく、ノクティスと口喧嘩することなく、素直に自分でグラスに半分ほどドリンクを注いだ

ふん、どっちもよくできてる

この俺様が2週間以上かけたんだからな、ったりめえだろ

そうだ。指揮官にα40エキスを教えたバカを探すつもりだったが……

命拾いしやがったぜ

ノクティスは荒々しく土豆餅をかじり、ドリンクをグビリと飲んだ

ふむ……レシピを残しておいてくれるか?

マスターのその言葉を聞き、ノクティスと自分は目を見合わせた。きっと自分の目も彼と同じで、驚きで丸くなっていただろう

俺もだ。でも、あんたは料理に関しては一番厳しいのに……

ついに、俺様が最高レベルのシェフになっちまったか?

馬鹿言え、機会があればもっと修行しとけ。だが、この料理は面白い

メニュー名はなんていうんだ?

超ド級土豆餅だ!!

俺の店のメニュー一覧には並べたくない名だな……

「[player name]とノクティス」はどうだ?組み合わせもいいし、記念にもなるだろ

そっちが本当の目的じゃねえのか……

レシピの詳細を確認し、調理法を記録したあと、マスターは立ち上がってあのノートと一緒に戸棚に入れ、鍵をかけた

店の外から声が聞こえてきた。食材を運ぶスタッフが来たようだ

「後はお前らに任せた」。マスターはそう言い残して、店を出ていった

朝の陽差しが窓から差し込み、テーブルを照らしている

草の香りを乗せたそよ風が店内に吹き込み、風鈴をチリリと鳴らす。紙が飛ばないよう、そっとペンを載せた

ノクティスと店内を見回してみると、ふたりで初めてここへ来た時から、変わった物がたくさんある

扉の蝶番は新しい部品に交換した。色が合わなかったので、ノクティスが思い切って大きく落書きした

九龍商店で買ってきた招き猫は、店の雰囲気にマッチしないとしてノクティスにサメに魔改造されたが、今も堂々と入口に立っている……

自分がエプロンを脱ぐのを見て、扉に向かおうとしていたノクティスも同じようにエプロンを脱いだ

そして、名残惜しそうにそれを見つめている。初めてここへ来た時、仕事が終わるとすぐにエプロンを放り投げていた彼とはまるで別人だった

ラタトゥイユのロゴをなで、ノクティスは少し不器用にエプロンを畳むと、テーブルに置いた

この数週間、夢みてえだったな

任務も、敵も、緊急連絡もない。装備のメンテナンスも、武器を持つことすらなかった

毎日指揮官と一緒にオーダーを聞いて、メシを作って、意味のねえことをしゃべって……

ノクティスは少し黙り込んで、適切な言葉を探しているようだった。そして、いつもの笑顔を見せた

だな、最高に楽しかったぜ!

マジで、帰りたくねえくらいにな

指揮官、パニシングが全部なくなったらよ、俺たち一生こんな感じでのんびり暮らせんのか?

だったら「[player name]とノクティス」で大儲けしようぜ。店をチェーン展開して、指揮官がマスターになりゃいい。カウンターはオッサンにやらせよう

で、各保全エリアに店舗を拡大する。空中庭園の商業エリアにもな

ノクティスは活き活きと未来を思い描いた。それは何かに怯えることのない世界……

その頃にはもう、指揮官も軍服を着ることもねえだろうな……

ノクティスは鼻をこすりながら、こちらの視線から顔を背けた

ここにいる間、指揮官マジで楽しそうだったぜ。危険なことに気を揉んだり、責任を感じることもねえしな

なぁ、ニコラのジジイに提案してみるってのは……

ノクティスは頭をポリポリと掻いた。彼自身も、最後のひと言が妄想なのをよくわかっているようだ

ケッ、シークスにだけ言えばよかったんだ。あの野郎は約束を破ったんだし、たまには仕返しもいるだろ

清浄地の出現は今後の戦闘を楽にするものでは決してないことを、ノクティスもわかっている

ああ、わかってる……

おうよ!この俺様に任せとけ!

すでに綺麗なカウンターをもう一度、羽箒で掃き、九龍の商人から買った贈り物を棚に置いた

エプロンをきちんと畳み、思い出と寂しさと一緒に棚にしまった

最後に、朝陽を浴びるラタトゥイユを見て、ノクティスとともにその扉を開け放つ

運送スタッフが行き交い、人通りも徐々に増えてきた

清浄地が深い眠りから覚め、人々はまた新しい一日を始める

今日は平和な日になるだろうか?どんな騒ぎがあるだろうか?どこで、誰が、食卓の話題を作るのだろうか?

行くのか?元気でやれよ

おい、オッサン、言い忘れてたが、あの洗い物、任せたぜ

ラタトゥイユはあんたをいつでも歓迎する、[player name]。ノクティスはその時による

ケケッ、んなこと言うけど、カウンターはあんたの場所だろ

??

深く訊かない方がよさそうだな

言っておく……何があろうと、どんな結末になろうと、ラタトゥイユがある限り、お前らのエプロンもおいておく

グレイレイヴン指揮官にこんなことを言うのは無礼なのかもしれんが、ともかく、お前らが無事でいてくれりゃ、それでいいさ……

ビビんな、指揮官のことは俺様に任せとけ

全部終わったら、ふたりして戻ってくる

うん、必ず

その時はもう、グレイレイヴン指揮官とケルベロス隊員ではなくなっているだろう

ただの[player name]とノクティスだ

こちら司令部より、グレイレイヴン指揮官とケルベロス隊員ノクティスへ定時連絡。予定通り、3時間以内に14番駐機場にて待機せよ