Story Reader / Affection / 21号·森息·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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21号·森息·その4

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21号と肩を並べて森の中を歩いた。地面を埋め尽くす落ち葉には、絨毯とは違った柔らかさがある

自由に生い茂る植物が、この森を「静けさ」というベールで覆っている

湿気がひどい。指先で空気をつまめば、水が滴りそうだった

プリア森林公園跡の息苦しく殺気に満ちた空気と違って、この名もない森の空気は、思わず口を開けて深呼吸したくなるほどに澄みきっている

清浄地がなかったら、こんな光景を目にすることはなかっただろう

もしかしたらセリカの言う通り、この任務はリフレッシュに最適なのかもしれない

責任者はかなり詳細な資料をくれていたが、生い茂る植物の海から特定の1本を探すなんて、植物学の基礎知識しかない自分にとってはかなりハードルが高い

今の目標は、川を見つけて、川辺にのみ生息する植物を探すこと

途中で他のサンプルを見つけられるかどうかは、運に任せるとしよう

目標、発見

どうにもグダグダの自分より、21号の方がずっと順調だった

彼女は慎重に植物の根っこを掘り出し、持ってきた容器に入れている

それからその容器を手に持って、小走りでこちらにやってきた

任務進捗度、プラス1

[player name]、進捗度は?

多分、21号の4分の1くらい?

雑魚……

21号には忖度というものがなかった……

仕方ない、21号が尻ぬぐい、お世話する

[player name]、拭かなくていい

オフィスでも、21号は同じことを言った。その時、自分と責任者がリアクションをしなかったことを、不満に思っているのかもしれない

21号、森に詳しい。あなたたち、21号を見くびった

21号、正しかった

どう考えても、それ見たことかと喜んでいるような口ぶりだった

全て、21号に任せる。[player name]はお飾り

視界を遮る低木をかき分けると、一気に目の前が開けた

数十年、何にも邪魔されずに成長してきたのだろう。このエリアの地図はもう信用できないものになってしまっている

幸い、地形にダメージを与えるような災害はなかったらしく、地形自体はほぼ変わっていない

木々の間から漏れる陽差しが、波打つ「鏡」に振り注ぎ、透明だった川の水に色を与えた

それはまるでエメラルドのように美しく輝き、ゆらゆらと遠へ流れている

透き通った「宝石」が岩にぶつかって白く輝き、すぐに川の流れに吸い込まれる。いたるところで、それが無限に繰り返されている

イライラ、暑さ、疲労、それら全てが川の水に流され、心が浄化されていく

記憶と、ちょっと違う

危険、触っちゃだめ。触ったら、飲み込まれる

最前線で活躍する執行部隊は、赤潮に汚染された水源を処理することも多々ある。だから、21号は川とはそういうものだと記憶しているのだろう

その言葉を聞くと、21号はゆっくりと川の流れに近づいた

彼女はまず匂いを嗅ぎ、初めて嗅ぐ匂いを確かめている

匂い、違う

21号を横目に、自分は靴を脱いで服の裾を巻き上げると、そのまま川に入った

危ない!

川の冷たさを感じる前に、柔らかい感触に腕を掴まれ、そのまま岸に引っ張り上げられた

21号は自分の腕から尻尾を放すと、素早く血清を取り出して、こちらにそれを注射しようとしてきた

両足を指さした。足には澄んだ水滴がたくさんついている

本当に、大丈夫?

21号は、警戒しながら自分の足の裏に触れてみている

21号は次に手に力を込めた

やっぱり、怪我!

21号は再び血清を取りだし、またこちらに注射しようとした

21号、痛くない

21号の金属の足を見て、それ以上は言葉を続けられなかった

しかし、21号は自分の考えを読んだように、ぱっと手を放した

わかった。これが[player name]と違うところ

足の裏を押すと、痛い。21号、覚えた

21号は端末に何かを書き留めた。覗き見ると、タイトルに「グレイレイヴン指揮官の弱点一覧」と書いてあり、行の先頭に振られた数字がすでに2桁になっていた

他にも、記録たくさん

こちらの次の言葉を待たずに、21号はさっさと端末をしまった

だから、ここも違う?

21号は川を指さした

じゃ、中に落ちたら、死ぬ?

それを聞いて、21号は再び透き通った水面を見た。彼女の横にしゃがんで、川の中に手を入れてみせる

自分の動きを見て、彼女も慎重に指を伸ばし、揺れる水面に触れた。冷たかったのか、21号は慌てて手を引っ込めた

水面が彼女に応えたかのように、指が触れたところからふわりと波紋が広がった

21号は、記憶とはまったく異なる川を見つめた。それは鉄臭くなく、触れても痛くない川だ

初めての体験に、21号は戸惑っているようだ

裸足で裾を巻き上げ、川の中に入って、膝まで川の流れに浸かった

石は川の流れで滑らかに磨かれ、ひんやりと足の裏を刺激する。軽い痛みとくすぐったさで、思わず身震いした

ガチガチ……

この歯がガチガチ当たるような音は何だろう?

さっと振り返ると、後方で21号も川に入っていた。ピンと伸びた尻尾の毛がぶわあっと激しく膨らんでいる

彼女はぎゅっと目をつむり、少し震えていた。そのいかつい表情だけを見ると、まるで今まさに姿の見えない敵と戦っているようだ

21号は……何も……怖れない!

確かアシモフが、彼女の新機体は環境への感知能力が大幅に強化されていると言っていた。まさか、その影響だろうか?

しばらくして、21号の体の緊張がほぐれていった

適応完了……

体の震えが止まり、彼女は目を開いた。バランサーである尻尾の力も抜け、左右に小さく揺れている。どうやら機嫌もいいようだ

そんな21号を見て、思わずいたずら心が湧いた

手で水をすくい、21号にパシャっとかけた。しかし、21号が水に濡れる光景は見られなかった。彼女は軽やかに体をくねらせ、水をかわしたのだ

今のは何?

21号は困惑した視線をこちらに向けた。自分はといえば、水をすくった姿勢のまま固まってしまった

ふたりの間に気まずい雰囲気が漂い始める。自分の行動はちょっと幼稚すぎたかもしれない

21号が知らない、行事?

幸い、21号が気まずい空気を破ってくれた

少し考えて、やっぱりやめた。あまりにも幼稚な行為だ

[player name]、今、何か企んだ

21号の耳はレーダーのように、自分をロックオンしていた

何を企んだ?

水?

遊び?祭り?わかった

21号は巨大な爪を出し、体勢を整えた

21号、全力で挑む

21号、回避、できる

祭り、回避禁止?

そう……

[player name]、自然は残酷、わかってない

木漏れ陽の下、ひとりの人間が襲いかかってくる水を避けようと必死になっている

立場や責任は関係ない。単に、最も純粋な楽しさを感じていた

一方、少女は、まるで川の中で踊るかのように、軽やかに全ての「攻撃」をかわした。少女の周りには、水しぶきで七色の虹が輝いている

黒と白にかかる鮮やかな虹。それはまるで、キャンバスに描かれた絵のようだった。それぞれの色が交わり、1枚の絵を作り上げている