お願いしますよぉぉぉぉ
お前の機能回復には一切役立たないし、そもそも私にそんな暇はない
そんなぁ!だって観たいんだもん!!
そんなに暇なら、ゲームでもやったらどうだ。パーツの修理が終わり次第、新たな訓練計画を始動させるからな。遊ぶなら今のうちだぞ
それに……[player name]だって、賛同するとは思えない
これは指揮官
指揮官!しーきーかーんーーーー!
頼むから加勢してくれよぉ……
えー、指揮官ヒドイ!俺に会いに来てくれんじゃないの!?
何かご用ですか?
うわぁ!指揮官最高!やっぱり世界は優しさでできてるんだな~!
カムイは観劇したいそうなんです
みんな毎日任務に出かけてるのに、俺だけ何十時間も閉じ込められてるんだぜ!
退屈で死にそうなんだよ~!助けてくれるよな?な??
なぁ~~指~~揮~~官~~
そう!怪我してるからなんにもできないわけ!超退屈なの!
このままじゃ、口喧嘩しかやることがないなぁ……?
隊長もいるじゃん!
ふたりいれば、いけるっしょ!
……[player name]がそう仰るのなら……
よっこらせ。ナナミカートが通りますよ~、っと
ナナミは大きなカートを器用に押しながら滑ってくる。カートにはナナミの身長の倍近い高さまで、物が積んであった
おい、気をつけろよ。あれはオレが用意した発煙弾だぞ!
舞台、持ってきたよ
それはルシアがやった
指揮官、私は衣装を用意してるんですよ。まだ完成はしていませんが……
ナナミカートが戻りますよ~、っと
次々と運び込まれる道具や賑やかな笑い声が、広々とした空間をあっという間に満たしていく
カムイ、人さまの邪魔をするんじゃない
そうですね
ここのところ多忙で、隊員のフォローをする時間が取れなかったんです
[player name]のお陰で、助かりました
君……とストライクホークは、私に新鮮な驚きを与えてくれます
自覚されていないとは……
まあ、悪いことではありませんよ
いえ、不満なのではありません
というより……君は、私に望外の喜びをもたらしてくれる
指揮官、指揮官!
コソコソ何やってんだよ!こっちは準備オッケーだぞ!
指揮官、台詞は全部覚えましたか?
……
では、台本を持ったままやりましょう。私がリードします
どちらの役にしますか?
第2幕第2場·クロム家の裏庭、アクション!
クロムはバルコニーに寄りかかると、頬杖をついて物憂げな表情を浮かべた
ロミオ、ロミオ。あなたはなぜ、ロミオなの?
どうか、その家名をお捨てになって!何の意味があるというのです。たとえバラがどのような名前であっても、その香りに変わりはありませんもの
たとえ、あなたがモンタギュー家のロミオでなくなっても、この愛は変わりません……
もし、あなたが……わたくしを愛すると誓ってくださるなら、わたくしもキャピュレットの名を捨ててみせましょう
舞台袖から[player name]が登場した
そこにいるのはどなた?夜闇に忍んで人の話を盗み聞くなんて……
その甘いワインのようなお声……ええ、わからないはずがないわ。ロミオ、ロミオなのね
どうやってここへいらしたの?なぜ、ここにいらしたの?庭園の壁はあんなにも高い。簡単に越えられるはずがないわ
家の者に見られたら、殺されてしまうかもしれないのよ
何者かが、あなたを導いたのね
わたくしを愛してくださる?あなたは「はい」とお応えになるでしょう。わたくしもその言葉を信じます。でも……あなたの誓いは偽りかもしれない
ロミオ、本当にわたくしを愛してくださるのなら、どうか教えて
わたくしを軽薄だとお思いなら、あなたを拒み、怒りをもって謝罪を求めましょう。ですが、わたくしにあなたの愛を拒むことなど、もとよりできはしないのです
駄目よ、月は気まぐれですもの。月に誓ってしまったら、あなたの愛も月のように目まぐるしく形を変えてしまう
お嬢様、そろそろお休みになるお時間ですよ
ええ、すぐに行く。――もしあなたが誠実な方でないのなら、心から求めます
お嬢様?
待って、もう行くから。――愛を囁くのをやめて。どうか、わたくしをひとりで悲しませて。わたくしを惑わさないで
わたくしを裏切らないで、ロミオ
別れとは、なんと甘美で物寂しいことか……本当はあなたにおやすみなさいと言って、夜明けまでともにいたい
クロムはバルコニーの遥か下にいる[player name]へ、手を伸ばした……
同時に、舞台の下からピンク色の煙がもくもくと上がり、火薬のにおいが広がる。続いて、奈落でバチバチと爆発が起こった
待っ、ちょっと——
…………!
……指揮官!
……
ク、クロムさんが……指揮官を……
……おい、わざとじゃねぇからな!いい演出だっただろ!
ブラボ~ブラボ~!指揮官!クロム!最高~~~~!!!
ナナミが絶妙なタイミングで舞台の幕を下ろし、両端のスピーカーが盛大な音を鳴らした。色とりどりのリボンが宙に舞い、カムイは興奮覚めやらぬ様子で手を叩き続けている
指揮官、大丈夫ですか?
……ご無事で何よりです
そんな、改まる必要はありませんよ
水くさいですね
これからも、いつだって声をおかけください
私は……君の役に立てることが嬉しい
劇、ですか?
いえ、特には何も
ですが、指揮官と一緒に何かをする、というのは……悪くありませんね
さて。それでは、後片づけの時間です
行きましょうか
……君も、いずれこうなりますよ
行きましょうか
第2幕第2場·指揮官の家の裏庭、アクション!
[player name]がバルコニーに寄りかかり、顔を覗かせた
クロムはバルコニーの真下にあるセットの茂みから、愛おしそうな表情で指揮官を見上げる
痛みを知らない者ほど、他者の傷跡を嘲笑う
ああ、僕の愛しい人。どうか、この愛をわかってほしい。君が言葉を呑み込んでも、その瞳が全てを物語っている
君の瞳はまるで、星のようだ。いや、君の瞳の美しい煌めきは、黎明の光が星を覆い隠すように、あらゆる光を凌駕するだろう
その愛らしい唇からこぼれ落ちる言葉は、甘露のようであるに違いない――どうか続けておくれ、光の天使よ
このまま聞き耳を立てようか、それとも声をかけようか……
僕の名は告げられぬ。僕は君の敵たる名を憎んでいる。この名が紙に書かれていたなら、必ずその紙を引き裂くだろう
ジュリエット、君がその名を厭うなら、僕はロミオではない
愛の翼で、屋敷の壁を越えたのさ。冷たい石の壁ごときに、この愛を隔てられるものか。愛の力でできることなら、どんな危険でも冒してみせる
君の瞳は、20振りの剣よりも強いのだ。君がその優しい瞳で僕を見つめてくれる限り、誰も僕を傷つけることはできぬ
僕を愛してくれるなら、何だってしてみせる。君に愛されぬまま平凡に生きるより……敵の剣で死ぬ方を選ぶ
お嬢様、そろそろお休みになるお時間ですよ
行ってしまうのかい?ジュリエット、僕は君を初めて目にしたその瞬間から、ずっと……愛している
お嬢様?
魂にかけて愛を誓おう
君なき夜は、僕のこころを悲痛で押しつぶすばかり
君が僕の名を呼んでいる……夜に揺蕩う恋人の声の、なんと美しいことか。まるで天の旋律だ
クロムはバルコニーの[player name]へ向けて、手を伸ばした……