指揮官の具合はいかがでしょう?
まったくもって良好だな。2人前のファストフードもペロリだ。だがな、体内のパニシングは、いまだかつてお目にかかったことのないような状態だ
え、それでは指揮官は……
心配いらん。免疫血清でパニシングの活性を抑制してるからな、身体の健康に影響はない
しかしだな、パニシングは信号ユニットを放出し続けていて、だな……
そう言いながらアシモフは、ルシアの顔を横目に眺める。指揮官のことで頭がいっぱいのルシアは、視線にまったく気づかない
……体内のパニシングが信号ユニットを放出して、構造体とのリンクチャンネルを生成してやがる。昇格者は、これを使って指揮官の意識との疑似リンクを成立させてるようだ
リンクを遮断する方法はないんですか?
……認めたくはないが、目下のところ、これといった有効手段はない
ひとまずは安全なようですが、あなた方は僕たちの指揮官をどうする気なんです?
モルモットにでもするんじゃないでしょうね?
!
おいおい、お前ら兵隊はどうしてそう物騒なんだ……
落ち着いてくれよ。サンプルデータはもう十分にあるんだ、今更人体実験なんて必要ない
だが、一時的な収容は必須だ。お前らの指揮官の安全をきっちり確保するためにも、それから、万が一の事態が起こった際に適切な対応をとるためにも
本人の了解は取ってある
……
じゃあ、俺は引き続き解決方法を探すから……どいてくれ
アシモフはグレイレイヴンの面々の脇を通りすぎ、数歩進んで足を止めた
隔離とはいえ、なにも一切会えなくなるわけじゃあない。……まったく、ここまで言わなきゃわかんないのかよ……世話が焼けるな
お任せください、指揮官
指揮官、どうかお大事になさってくださいね
人の気配は去り、青白い隔離室は再び静寂に包まれた。電子機器の規則的な音だけが四角い部屋に反射している
ピッ……ピッ……。聞き慣れた音が脳裏に響く。誰かが近づいてきて、そして誰かが去っていく
猛然と目を見開いたものの、依然として青白い壁と機械があるだけで、誰ひとりいなかった
ドアの上のデジタル時計は、午前1時28分を表示している
リンク信号を検知、構造体がリンクしました――
……
やるべきことをしているだけ
いいえ
想定内よ。何の問題もない
今後は、こんな風にこまめにリンクさせてもらうから
あるかもしれないし、ないかもしれないわね
じゃあそういうことで、また次回会いしましょう